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頂点へのストロングポイント インターハイ王者鎮西高が優勝を振り返る【月バレ2021年10月号】

鎮西高

第74回全日本バレーボール高等学校選手権大会(春高バレー)が1月5日(水)に開幕する。男子は駿台学園高(東京)、東福岡高(福岡)、日本航空高(山梨)など強豪校が優勝を目指してしのぎを削る中、優勝候補の一つにあげられるのは鎮西高(熊本)だ。夏のインターハイを制した選手たちはどのように大会を戦ったのか。月刊バレーボール2021年10月号に掲載されたインターハイ後の座談会で、レギュラーメンバーが大会を振り返った企画を再掲載する。

 

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大会3日前の決断 ツーセッターに対応した抜群の結束力

 

大会3日前にツーセッターを導入し、見事優勝した鎮西(熊本)。個々の対応力の高さはもちろん、学年を超えたチームワークも持ち味の一つだ。レギュラーメンバーが、優勝への歩みを振り返る

 

 

リモート取材に応じてくれた写真下の(前列左から)髙木、九冨、舛本、(後列左から)平嶋、荒谷、平川。

写真上の平田は別会場から参加

 

エース舛本の大活躍は「いつもどおり」

 

――優勝おめでとうございます

 

九冨 うれしいです! 最後まであきらめずにみんなで頑張ったことが、結果につながったと思います。

 

――予選グループ戦で駿台学園(東京)に負けてスタートしました

 

九冨 コロナ禍で全然公式戦がない中、このチームでの初めての試合(全国大会)でした。結局自分たちのミスで負けましたが、第1セット終盤まではリードしていて、ちゃんと戦えばいけるんじゃないか、という自信がつきました。初戦で対戦できてよかったです。

 

舛本 負けても次に勝てばいいと言われていたので、そこで戦えたのはいちばん大きかったと思います。自分たちのプレーができていなかったので、最高の形で挑めば勝てると思いました。

 

――準決勝の東福岡(福岡)戦では平嶋選手が負傷しました

 

平嶋 第1セット終盤にブロックした際、左手の小指を脱臼しました。交代になり、コートの外で試合を見ていました。自分が抜けて空気が重くなったと感じましたが、九冨くんが頑張ってくれました。声にしても、プレーにしても、いちばんチームを引っ張っていたと思います。

 

九冨 そのとおりです!(笑)でも、ほかのみんなも頑張っていました。真ん中からの攻撃がなくなったことでサイドにブロックがつきやすい中、エース2人が決めてくれました。

 

平田 決められた部分はありましたが、舛本選手がすごかったので、ちょっと悔しいですね(笑)

 

舛本 そんなに決めてないです! みんなのフォローがあったので、思い切り打つことができました。

 

九冨 2人ともすごかったです!

 

 

舛本颯真

ますもと・そうま/2年/アウトサイドヒッター/身長182cm/最高到達点330cm/龍田中(熊本)

★決勝では49得点をマークした絶対的エース。ベスト6に選出

 

――決勝は駿台学園とのフルセットの激闘でした。先に2セットを取られ、4度マッチポイントを握られましたが、どんな心境でしたか?

 

平川 正直、第5セットで12-14になったときに、ヤバいな、と思いました。

 

舛本 自分は2セットを取られて、ヤバい、負けると思いました。でも、(宮迫竜司)コーチが「第3セットを取ったら流れが変わる」と言ってくれて、そこからほんとうに自分たちのペースになったと思います。

 

平田 正直、ずっと負けると思っていました。でも、1点1点集中してガンガン攻めようと思いました。

 

荒谷 負けるかなと思いましたが、みんな1点1点しっかりプレーできていたので、やっぱりすごいと思いました。

 

 

平田悠真

ひらた・ゆうま/2年/アウトサイドヒッター/身長192cm/最高到達点330cm/合志中(熊本)

★舛本の対角としてチームを牽引。先輩にもものおじしないムードメーカ―

 

――下級生は不安を感じながらプレーしていたそうですが、3年生はいかがでしたか?

 

平嶋 正直、決勝ではケガのことは気にしていなくて、自分がやるべきことを常にしようと考えていました。最後はやるしかないという気持ちでした。

 

髙木 自分も一つずつできる仕事をやっていこうと思っていました。

 

九冨 「勝ち負けは気にせず、目の前のプレーに集中しよう」という声かけを全員でしていたので、みんなの前向きな姿勢が優勝につながったと思います。

 

平嶋 晃

ひらしま・あきら/3年/ミドルブロッカー/身長195cm/最高到達点335cm/梅林中(福岡)

★梅林中3年生時には全中選抜、鎮西高1年生時にはU18日本代表候補メンバー入り

 

 

――決勝は何といっても舛本劇場。49得点と大活躍でした

 

舛本 序盤は会場の雰囲気に慣れず、自分のプレーができないこともありましたが、自分がブロックされても周りがつないでくれたので、とてもうれしかったです。

 

九冨 全国大会でも通用していて、安定して点を決めてくれました。(舛本)颯真までつなげば点が入る状況をつくってくれたので、自分たちはノビノビとプレーすることができました。

 

平嶋 自分たちからするといつもどおりの光景というか。エースにボールをつないで決めるのがチームの形なので、決勝でもいつもどおりのプレーができたと思います。

 

平川 颯真なら決めてくれるという信頼があったので、大事な部分は任せていました。

 

舛本 みんなに支えてもらいましたが、特に(小手川吟之介)マネジャーの支えが勝利につながったと思います。足がつらないように薬を用意してくれたり、言葉をかけてくれていちばん支えになりました。

 

(左)九冨鴻三

くとみ・こうざん/3年/セッター、アウトサイドヒッター/身長181cm/最高到達点320cm/第三亀戸中(東京)

★ベスト6に選ばれた頼れるキャプテン。決勝ではブロックで7得点

(右)平川天翔

ひらかわ・てんしょう/2年/セッター、アウトサイドヒッター/身長175cm/最高到達点320cm/長嶺中(熊本)

★九冨とともにツーセッターの一角を担う。小柄だが、スパイク力は抜群

 

――優勝したとき、疲れはありましたか?

 

舛本 試合が終わって体力的に限界でしたが、寝たら治りました!

 

全員 (笑)

 

――髙木選手は試合後、車いすに乗っていましたが…

 

髙木 恥ずかしかったですね(笑) 第3セットの途中で足がつって、そこからはよかったんですけど…。試合後はずっとつっていて、熊本に帰って整体に行くまで治らなかったです。

 

Bチームから一躍優勝メンバーに

 

――今大会はツーセッターで臨みました。大会直前の変更でしたが、初めて聞いたときはどう感じましたか?

 

九冨 驚きました。大会3日前に畑野(久雄)監督に言われて、まず(平川)天翔のメンタルが大丈夫かなと思って。それでも、あの大きな舞台で、みんなが自分のやるべきことをできていて、ほんとうにすごいと思いました。

 

平川 自分は試合の3日前まではBチームでした。新チームになって、Bチームではツーセッターをしていましたが、まさか試合に出ると思っていなかったので、ただただびっくりしました。とりあえず迷惑をかけないことだけを考えていましたね。

 

九冨 しっかりトスが上がっていました。よく跳んでスパイクも決めてくれていたので、信頼してライトにトスを振ることができました。

 

荒谷柊馬

あらたに・とうま/1年/ミドルブロッカー/身長189cm/最高到達点318cm/日出中(大分)

★決勝では唯一1年生でスタメン出場。ブロックでチームに貢献

 

――平川選手は長嶺中(熊本)3年生時にJOC杯で舛本選手の対角としてプレーし、準優勝に導いています。舛本選手には活躍はどう映っていましたか?

 

舛本 相手の指先を狙うスパイクや、相手がいないところにプッシュするところを尊敬しています。

 

平川 うれしいです!(笑)

 

 

――試合ごとに連係を強めたそうですが、これからもツーセッターを続けたいですか?

 

平田 もっとやっていきたいですね。前衛が3枚だと、相手からすると嫌だと思います。

 

平嶋 理にかなっていて、なんで今まで1枚のセッターでやっていたのかなと思うくらいです。ツーセッターをできるならしたほうがいいと思うし、常にスパイカーが3枚いれば、ブロックも分散します。これからもやっていきたいです。

 

平川 エースやミドルブロッカーが打ちやすいトスを上げるのはもちろんですが、自分もスパイクで貢献できるように頑張っていきたいです。

 

――学年を超えて仲がよさそうですが、ふだんはどんな関係ですか?

 

九冨 あまり上下関係はなく、どのチームよりも仲がいいと思います。先輩を敬っているうえで、後輩もいじってきたり(笑) ほんとうにかわいい後輩たちです。特にいじってくるのは平田ですね(笑)

 

平田 いちばんいじるのは九冨さんです。笑顔とか、はしゃいでいるところがかわいいですね(笑)

 

九冨 2年生がちょっかいばかり出してきて、それを追いかけています(笑) 「チンパンジー」って言われたり…(笑) 鎮西は先輩に「さん」付けで呼ばないといけないのですが、髙木くんは「たいちゃん」って言われています(笑) 

 

平田 (先輩は)かわいいですが、尊敬しています。調子が悪いときに声をかけて盛り上げてくれるので、頼りになります。たいちゃんもよく言ってくれます(笑)

 

髙木 (笑)

 

髙木大我

たかき・たいが/3年/リベロ/身長172cm/最高到達点305cm/合志中(熊本)

★抜群の反応で、チームの窮地を救った守護神。リベロ優秀選手に選出

 

――インターハイを制し、今後の目標を教えてください

 

髙木 課題はたくさんあります。優勝したことはもう忘れて、自分の仕事をして、少しでもチームに貢献できるように頑張っていきたいです。

 

九冨 これからは追われる側になるので、個々のレベルアップをして、自信を持って大会に臨めるように。またみんなで一から仲よく頑張っていきたいです。

 

平嶋 畑野監督、宮迫コーチも言っていましたが、優勝したといっても、トーナメントの上位は紙一重の試合が多かったです。絶対的な王者というわけではなく、油断すればすぐに負けると思うので、気を引き締め直して頑張っていきたいです。

 

舛本 優勝しましたが、自分たちのプレーは思うようにできていません。練習から一つ一つのプレーを意識して、また優勝できるようにやっていきたいです。

 

平川 決勝では颯真だけにトスが偏っていたので、これからはトスを散らして全員バレーで勝っていきたいです。

 

荒谷 自分のブロックはまだ高さがないので、ブロックを練習して、通用できるように頑張っていきたいです。

 

平田 日々の練習で努力して、三冠を目指して頑張っていきたいです。(3年生へ)三冠、目指しましょう!

 

九冨 間違いないな!

 

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 大会直前の戦術変更にもばつぐんの結束力で対応し、決勝では4度マッチポイントを握られながらも耐えきって優勝の栄冠をつかんだ鎮西高。夏からの成長とさらに強くなった結束力が春高でどう披露されるのか。注目が集まる。

 

 

 春高バレーは、2022年1月5日(水)から東京体育館(東京都渋谷区)で開幕する。シード校の鎮西高校は1月6日(木)Cコート第4試合(12:40〜)、埼玉栄高(埼玉)と大阪産大附高(大阪)の勝者と初戦を戦う。※時間は変更となる場合がある

 

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