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石井優希×就実高 いつまでも基本に忠実に  リモトーーク!【月バレ2021年3月号】

 第74回全日本バレーボール高等学校選手権大会(春高バレー)はいよいよ2022年1月5日(水)に開幕を迎える。前回大会では就実高(岡山)がノーシードから25年ぶりの選手権優勝を手にした。月刊バレーボール2021年3月号では、コロナ禍でプレーする現役部員にOBやOGからリモート上でエールを送ってもらう『リモトーーク!』特別編で、就実高OGで日本代表でも活躍する石井優希選手(久光スプリングス)から選手たちへエールを送ってもらった。石井選手が高校で学んだ大切な教えを母校の選手に伝えた企画を再掲載する。※過去誌面の文中の所属・チーム名・学年は当時のまま

 

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――選手の皆さん、優勝おめでとうございます。石井選手も祝福のツイートをされていましたね

 

 

 

石井 決勝は録画していて、練習終わりに通しで見ました。ツイートに「ツインズ」って書いちゃったけど、ちゃんと名前を書いたほうがよかったですよね。ファンからご指摘いただいて(笑) おふたりのプレーはめっちゃよかったです。レベルが高いなと思いました。

 

深澤めぐみ(以下めぐ) すごい方なのに自分たちのことを知ってくれていて、すごくうれしかったです。

 

深澤つぐみ(以下つぐ) こんなすごい方のTwitterに自分たちの名前が挙がっていいのか、という気持ちでした。

 

――周田選手のことは「お気に入り」と書いていました

 

石井 雰囲気ですね。性格はわからないけど、ほんわかしてそうな感じでかわいいな、と思っていました(笑) もちろんプレーも何でもこなせてうまいです。

 

周田夏紀(以下周田) ツイートを見たときはうれしすぎて、手汗とかやばかったです(笑)

 

石井 かわいい(笑)

 

Q1 高校生のときに、いちばんきつかった練習メニューは何ですか?(周田)

 

石井 「タイム」という練習です。今もそう言う?

 

周田 言います。

 

石井 タイムがほんとうに大嫌いで。(学校の近くにある)岡山後楽園の周囲2㎞を8分以内で走って、制限時間を切れなかった人はもう一本という練習メニュー。まぁ、バレーじゃないんだけど(笑) それが嫌いで、一本で終わらせるために猛ダッシュで頑張っていました。

 

周田 私もダントツでその2㎞アップがきついと思います(笑)

 

石井 そうだよね(笑) 最初はわからなかったので、先輩についていくのにがむしゃらでした。でも、3年生のときはキャプテンをやらせてもらったし、自分は切らなきゃという意志だけ固めていました(笑)

 

周田 スタート地点についたら、おなかが痛くなっちゃうぐらい緊張して(笑) ほんとうにきつかったんですけど、8分を切れなかったら追加になってしまうので、死に物狂いで走りました。

 

めぐ 最初のころは、2㎞がどれくらいの長さかわからなくて、1本目は緊張していたんですけど、今は「いくよ」って言われたら、もう心を〝無〞にするっていうか。何も考えずに走っています。

 

全員 (笑)

 

石井 私も走っていたときは〝無〞じゃないかな…(笑) マネジャーがタイムを計ってくれるんですけど、「もうちょっと待って」ってスタートを遅らせてもらったこともありました。でも、結局やらないといけないので。誰かが「もういいから、やるよ!」と言って走っていました。しかも後楽園だから、周りの景色が全部一緒なんですよ。ゴールが見えない、先が読めない感じが余計しんどかったです。

 

周田 ダッシュじゃないとほんとうに8分を切れないくらいで、ちょっと気を抜いたらすぐにタイムが落ちてしまいます。試合がないときは結構走るんですけど、この(取材の)あともランニングでみんなドキドキしています(笑) 

 

石井 ええっ! 多く走っていた時期もあったけど、聞いている感じでは今の子たちの方が走ってそうだね(笑) タイムは自分との闘いなので、あきらめようと思ったらいつでもあきらめられます。でもそれをやり抜くことが、勝負どころの大事な場面や相手に試合でリードされたときの精神面にもつながるので、嫌でしたけどいい練習メニューだったと思います。

 

周田 苦しい場面になったときに、あのキツいランニングも乗り越えられたから大丈夫だと思えるくらいのメニューなので、乗り越えた達成感が精神面にもプラスになります。体力がついて走れるようになって、ラリーでのしんどさが変わってきたり、ブロード攻撃で走ってジャンプするのが何回やっても疲れなくなったり。バレーにも直接生かされていると思います。

 

2㎞走に取り組む周田(写真中央)。歴代の卒業生もこのメニューを乗り越え、力をつけてきた(写真は2019年のもの)

 

 

Q2 高校時代、きついことがあったと思いますが、今にどう役立っていますか?(つぐみ)

 

石井 私のときは6時50分から朝練が始まって、サーブレシーブ30分、サーブ30分のメニューをやっていたけど、そこで固めた基本は今でも変わらず大事。私の場合はサーブレシーブだけど、うまくいかなくなったときに、ああしよう、こうしようとするんじゃなくて、何か一つこれだけっていうのを決めて、集中して取り組むことがすごく大切だと思っています。

 高校時代は同じメニューを30分やるのが、長いな、と思っていたこともありましたが、そういう時間や練習が大事だったと今になって感じます。今の練習内容はわからないけど、「基本に忠実に」というテーマは変わっていないと思います。これは今後も絶対生きるので、今の気持ちのまま頑張ってもらいたいです。

 

つぐ 自分の目の前のことで精いっぱいで、将来にどうつながっていくかがわからず、今のままでいいのかという疑問がありました。やはりどのレベルでも基本は大事なので、これからも基本を大切にやっていきたいと思います。

 朝練のメニューは今も変わっていないです。サーブだったら狙っているところにちゃんと打てるか、サーブレシーブだったら10本中何本きっちり返せるかを意識しています。

 

めぐ つぐみが言ったように確率が大事になるので、10本受けるときの8割は絶対に返せるように意識しています。

 

石井 すごい、8割だって。たぶん私はそこまでイメージしていなかった(笑)

 

周田 私は前衛がメインなので、ショートサーブをよく受けています。普通のサーブに比べて少し勢いが緩かったり、捕りやすかったりするので、後衛でサーブを受けるときよりも、もっとていねいに、パスを出してから速攻やブロード攻撃ができるようにパスを返すことはいつも意識していました。

 

石井 ショートサーブってボールの勢いは緩いけど、とても難しくてパスがネットを越えやすい。でも数少ない機会でしっかり返して、捕ってからもミドルブロッカーが積極的に攻撃参加することでサイドもすごく助かります。相手ブロッカーからしても嫌なので、周田さんはいい意識でやられていると思います。上から目線みたいになってしまいました(笑)

 

周田 ありがとうございます。

 

石井 引退するまでずっと「基本に忠実に」は意識してやってもらいたいと思います。

 

高校3年生時の石井。胸の「就実」のデザインは今と変わらない

 

 

Q3 あまり守備が得意ではありません。守備では何をどう意識していますか?(めぐみ)

 

石井 スパイクレシーブに関しては、相手のクセだったりフォーム、それに加えてブロッカーのつき方でポジションを変えています。どちらかというとボールに反応するというよりは先に読むタイプなので、なるべく早い段階でポジショニングをとるように意識しています。

 

めぐ やっぱり読むことが大事かな、と思いました。自分はボールが出されたところにいって、反応が少し遅れて上げられないことがあるので、クセなどを見てからいいポジショニングをとっていきたいです。

 

石井 高校生と違って私たちはデータを出してもらったり、リーグ中も同じチームと何回も試合をするので、ある程度クセは頭に入っています。就実はたぶんデータを取らないよね? 学生は学生で難しさはあります。だけど、そのポジショニングを決める相手との駆け引きを楽しめたらいいと思います。

 

めぐ 春高では決勝(大阪国際滝井戦)で相手のレフトがすごくストレートに打ってくるので、ライトの選手がストレートを止めてから、(切り替えてきたら)クロスを拾う作戦は、当たったと思います。

 

――サーブレシーブではポイントはありますか?

 

石井 私に聞きますか…(笑) 私は体の右側で捕るほうが苦手なので、なるべく体の左側、ちょっとズラした左で捕るように意識しています。ただ私はレフト側で捕ることが多く、サーブをゾーン1からまっすぐラインぎわに打たれるとき、それを左で捕ってしまうと外(左側)にはじきやすくなります。そのときは打たれた瞬間にライン側に寄って、中(この場合は右側)で捕ったりとか、工夫をします。左側で捕るとボールがちょっと伸びたときも、(サーブに)差し込まれずに体を抜いて、そのまま攻撃に移りやすくなるので、そういう意識でやっています。

 あとは構えているヒザの位置と、腕との空間をなるべく作ること。(空間がなく、捕る位置が体に)近くなると、自分で手を動かしたり、セッターにパスするボールがきつくなって、セッターからしてもどんなボールがくるのか読みにくくなります。なので、なるべく面を早めにつくって、それをセッターに見せてあげることもすごく大事だと思います。

 

めぐ 自分はあまり捕る位置を考えたことがなかったので、これからは得意な位置を探していこうと思いました。サーブで狙われることが多いので、捕ってからしっかり攻撃できるように、サーブレシーブの練習のときに自分の捕り方を研究していきたいと思います。

 

 

Q4 ストレス発散方法は何ですか?(周田)

 

石井 オンとオフをしっかり分けることが大事です。休みの日は運転が好きなので一人でぶらっとドライブに行ったり、コーヒーショップなどでゆっくりリラックスしています(笑)

 

周田 私はK.POPや洋楽を聴いたりすることしかできなくて。あまりいい方法がなかったので、ドライブがかっこいいな、と思いました。

 

石井 学生はダメだもんね(笑) 高校生のときにストレス発散方法という考え方をしたことがなかったですが、携帯電話や外出が禁止だったので、同級生で寮の部屋で集まって雑誌を見ながら話したり、人と時間を共有してリラックスしていました。ふだんから楽しいことを見つけて、明るくいることが何よりの発散方法だと思います。

 

周田 ほんとうに石井さんがおっしゃっているとおりで。みんなで部屋に集まっておしゃべりしたり、そういうコミュニケーションでストレスをちょっと発散していると思います。

 

めぐ 自分も寮生なんですけど、あまりすることがないので、暇になったら人の部屋に行って、ふざけたりしています。

石井 どうやってふざけるんだろう(笑)

 

めぐ 同級生に一人、とても明るい子がいるんですけど、その人が騒ぎだしたらみんなで一緒に乗っかって、騒いだり踊ったりしています(笑)

 

石井 高校時代にワイワイしたのはいちばん楽しかった時間かもしれない(笑)

 

つぐ めぐみが言ったこともあるんですけど、自分はK.POPがとても好きなので、友達からもらった写真を見たり(笑) 防弾少年団の曲を聴いたりしてリラックスしています。

 

石井 そんなにないですよ、家族よりも長く仲間と一緒に過ごせる時間は。制限がある中でも、今この時間というか、寮生活を楽しんでもらいたいと思います。

 

Q5 高校生のうちにやっておけばよかったことがあれば教えてください(めぐみ)

 

石井 ダントツに言えるのが勉強です(笑) 特に英語は絶対できたほうがいいです。周田さんもトヨタ車体に入るし、深澤姉妹も絶対この先Vリーグへいくと思います。外国籍選手とかかわることもあるし、アンダーエイジカテゴリー代表で海外を回ることもあります。やはり英語がしゃべれるとすごく便利だし、バレーをやめたあとでも仕事の幅は絶対に広がると思うので。私は勉強ができなかったですけど、その中でもほんとうに英語が苦手で、今でも単語すらわからない(笑) そこはほんとうにちゃんとやっとけばよかった、という後悔はあります。なので、勉強は頑張ってください!(笑)

 

めぐ 得意な教科はありますが、英語の点数がいつも悪くて。頑張ってみようと思いました。

 

周田 日本だから英語はあまり使わないだろうと思ってしまって。後回しにしてしまうことが多いんですけど、もうちょっとやっておけばよかったって今思います…。

 

つぐ 授業では英語がどうしても子守唄に聞こえてしまって(笑) 理解ができないんですけど、まだあと1年あるのでしっかり頑張りたいと思います。

 

石井 間に合うと思います。私も頑張りたいと思います!(笑)

 

――最後に石井選手からメッセージをお願いします

 

石井 やっぱり母校の選手が活躍しているのはとてもうれしいです。周田さんに関してはこれからライバルになるので、就実の先輩後輩としても、戦い合っていきたいです。深澤選手は2年生でチームを引っ張っていてすごいなと思っていて、それがもう1年できるっていうのは、これからの就実もとても楽しみ。2人の今後の活躍も楽しみなので、ケガしないように、バレー界を一緒に引っ張っていけるように頑張りましょう。応援しています。

 

3人 ありがとうございます!

 

周田 最初は社会人としてまず新人としての役割、仕事がきちんと果たせるようになってから、その次がバレーだと思います。どのチームにもたくさん偉大な先輩方がおられるので、その方々をお手本にして、まずは社会人として立派な人間になれるようにこれから頑張っていきたいです。

 

めぐ 次はチームのキャプテンをやらせてもらうのですが、みんなが納得してついてきてくれるような選手になって、いちばん強いと思う一丸となったチームを目指して、また日本一になれるように頑張っていきたいと思います。

 

つぐ 去年もおととしも3年生にすごくいい思いをさせてもらったので、次は自分たちが後輩たちにいい思いをさせてあげられるように頑張っていきたいです。

 

石井 楽しみです。久光に入ってくる万代(真奈美)選手は就実出身なんですけど、ぜひ深澤姉妹にも久光にきてほしいと思うので(笑) これはスカウトです(笑) このあとのタイム、頑張ってください!

 

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(左上から時計回りに)

石井優希

いしい・ゆき/1991年5月8日生/180cm/アウトサイドヒッター

就実高では1年生時からエースとして全国大会を経験。主将として臨んだ春高(当時は選抜優勝大会)は2回戦敗退、インターハイはチームが新型インフルエンザ感染の疑いとなり、大会を辞退した。卒業後は久光製薬スプリングス(当時)に入団し、ルーキーイヤーから活躍。2011年に日本代表デビューを果たし、16年のリオデジャネイロオリンピックや、今年行われた東京2020オリンピックに出場した。今や日本代表に欠かせない選手の一人

 

周田夏紀

すだ・なつき/トヨタ車体クインシーズ/177cm/ミドルブロッカー

機動力を生かしたブロード攻撃が武器。Vリーグでは今季ここまで全試合に出場している

 

深澤めぐみ

ふかざわ・めぐみ/3年/176㎝/アウトサイドヒッター

エースとしてチームを牽引し、昨年度の春高では最優秀選手賞を受賞

 

深澤つぐみ

ふかざわ・つぐみ/3年/176cm/ミドルブロッカー

ブロックでも存在感。双子の姉のめぐみとともに新チームも引っ張る

 

 深澤めぐみ選手は東レへ、つぐみ選手は久光への入団が各チームから発表された。石井選手、周田選手を追いかけて、同じ舞台に上がる。また双子の姉妹が初めて違うチームでプレーすることになる。高校でともに戦う最後の大会となる春高で、2人はどんなプレーを見せてくれるのだろうか。

 

 春高バレーは、2022年1月5日(水)に東京体育館(東京都渋谷区)で開幕。シード校の就実高は1月6日(木)Aコート第1試合(9:30〜)、高松南高(香川)と細田学園高(埼玉)の勝者と初戦を戦う。※時間は変更となる場合がある

 

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