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V3降格を転機に。長野GaRonsは、あきらめない

 ホームタウンである長野県須坂市が誇る桜の名所「臥竜公園」が、チーム名の由来である長野GaRons。2016/17シーズンにVリーグに参戦後、少しずつステップアップを遂げてはいたが、現在戦うステージはVリーグの中で最も下位のカテゴリーであるDIVISION3(V3男子)。再起を誓うチームの姿が、ここにある。

 

<臥(Ga)竜(Ron)の文字から命名された長野GaRons。チームロゴには竜が仕立てられている>

 

20-21シーズンに過去最高成績も、ライセンスダウン(降格)

 

 Vリーグに参戦し、6シーズン目を迎える長野GRだが、その歴史は長く、1974年に創部された富士通長野工場のバレーボール部をルーツに持つ。参戦初年度はV・チャレンジリーグⅡ(現・V3男子)で8チーム中4位の好スタートを切ると、リーグの改編もあった18-19シーズンからは一つ上のステージであるV2男子へ。そこから2シーズンは大きく負け越したが、20-21シーズンは11チーム中6位と前進した。

 

 もっとも2019年にはチーム内における不祥事もあり、支援者たちの“チーム離れ”が生じた。そうして「ほんとうにゼロからのスタートで立て直しました」(篠崎寛監督)と再出発を図り、20-21シーズンの躍進につなげた。

 

<昨季からメンバーも変わり、フレッシュな顔ぶれが並ぶ>

 

 だが、チーム運営にヒビが生じていたことも事実で、21-22シーズンに向けたライセンス審査では「競技力、財務力、運営力がS2条件に到達していない」(チームのHPより/2020年10月17日)ことから、結果は“S3”。それはV2男子への参戦権を有しないものであり、V3男子への降格を意味していた。

 

 「(21-22シーズンへの)審査の前から、まさにチームの立て直しを図っている段階で、その矢先のライセンスダウンでしたから。チームの再建に賛同し、力を尽くしてくれた在籍年数の長い選手たちにとってショックは大きかったです」と篠崎監督。昨季から大幅にメンバーが変わった背景には少なからず、そういった事情があった。

 

 ただ同時に、それが一つのターニングポイントともなった。

 

 「メンバーが昨季とまったく異なる分、意識の部分でもしっかりと変わることができました。今では(ライセンスダウンが)いい転機だったのかなと思えます」(篠崎監督)

 

<長野県出身の⑲奥原蓮(山梨学院大在学中/写真コート奥)は高い得点力で貢献する>

 

>>><次ページ>チーム内の変化と、再起の誓い

<試合中も笑顔で、ムードよく戦う選手たち>

 

選手たちが主体となってチームを高める、意識の変革

 

 意識の変化が形に現れたのが、まず練習量の差。以前は週3日だったのが、週6日に増えた。それも、選手たちが自発的に起こしたアクションだ。

 

 また、「強化方針も含めて、選手たちが決めて実行に移す体制にしています。監督・コーチ陣からの“トップダウン”ではなく、選手たちが主体となる“ボトムアップ”を重視する。それは彼らに自覚を生んだと思います」と篠崎監督は成長を実感する。

 

 今季はコロナ禍を受けて、入団してまもない選手たちがコートに立たざるをえない場面も多い。けれども、年齢差がさほど大きくないことがチーム内のコミュニケーションの活性化につながっている。

 

 入団1年目ながら現在、ゲームキャプテンを託されている福池凌太は、2月13日(日)のトヨタモビリティ東京スパークル戦を引き合いに、このように話す。

 

 「(セットカウント2-1からの)第4セット序盤で相手にリードを許してしまったのですが、自分たちの雰囲気がとても悪かった。それは個々の意識の高さゆえ、でした。『もっともっとこうしないといけない』という発言ばかりで、視野が狭くなっていたんです。なので、『ふつうに自分たちのバレーボールをしよう』と。点が決まったら喜ぶ、楽しんでプレーしよう。そうすることで次第に雰囲気も明るくなって、勝ちにつなげることができました」

 

<入団1年目の④福池は「リーグ得点王を目指しています」と頼もしい>

 

 今、チームが目指すは入れ替え戦に進み、V2昇格を果たすこと。昨季は内定選手としてV2のコートに立った福池も言葉に力を込める。

 

 「V3に落ちたことは悲しかったです。ですが、昨年の春先からは“どうすれば昇格できるか”だけを意識して、練習に励んできました。出だしはつまずいた部分もありましたが、ここからしっかりと駆け上がってみせます」

 

 機運の高まりも、その裏返しの失望も味わった。それでも、

 

 「たとえ見ているお客さん全員があきらめたとしても、コートに立つ選手は最後までボールを追い続けるのが、バレーボールなので。選手たちには『あきらめないこと』を常に伝えていますし、その姿を常にお見せしたいです」

 

 と篠崎監督。

 

 ここから再び、竜は立ち昇る。長野GaRonsは、あきらめない。

 

(文・写真/坂口功将〔編集部〕)

<22-23シーズンへは、S2ライセンスが交付されている。ホームタウンでの試合が続く後半戦で勝ち星を重ねたい>

 

>>><次ページ>【ギャラリー】長野GaRons 21/22シーズン

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