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セリエA 21/22シーズン制覇のルーベ かつてない困難な道のりの先で手にしたV7

VOLLEY PALLAVOLO. Finali Play Off SuperLega Credem Banca, Gara 4. Cucine Lube Civitanova- Sir Safety Conad Perugia.

 “ビアンコロッソ(白と赤)”で埋め尽くされたアリーナ「ユーロスオーレフォーラム」のコートに設置された表彰台に、ルーベの選手たちが並ぶ。その列からキャプテンのオスマニー・ユアントレーナ(イタリア)がチーム最年長43歳のダニエレ・ソッティーレ(イタリア)をそばに引き連れながら一歩前に出て、スクデット(リーグタイトル)のトロフィーを受け取る。ユアントレーナがトロフィーを高く掲げると、金色のテープが降り注がれる。ルーベが通算7度目の頂点に輝いた。

 

<セレモニーで喜びを爆発させるユアントレーナ>

 

今季は、どの大会もファイナルにたどり着けていなかった

 

 2017/18シーズンから続くペルージャとの4季連続(19/20シーズンはコロナ禍のためレギュラーシーズンで打ち切り)のファイナル。ルーベは開幕から2連勝をあげると、第3戦はアウェーで落としたものの、ホームの第4戦でストレート勝ちを収めて戴冠。見事に連覇を果たしたわけだが、その道のりは例年以上に厳しいものだった。

 

 コッパ・イタリア(カップ戦)との二冠に沸いた昨季からの変化としては、アウトサイドヒッターのリカルド・ソウザ(ルカレリ/ブラジル)の移籍加入とオポジットのイバン・ザイツェフ(イタリア)の8シーズンぶりの復帰があった。だが、イタリアバレーボール界きってのスター選手であるザイツェフは、昨年夏の東京2020オリンピックを終えた直後にヒザの手術を行い、復帰まで時間を要することはシーズンが始まる前から明白だった。

 

 そうして始まった今季は、開幕直後のスーペルコッパ(前年度の上位4チームで争われるスーパーカップ)で初戦敗退。昨季4位のモンツァに被ブロック11本、被サービスエース11本と、完敗に近い内容だった。その後、レギュラーシーズンでは着実に白星を重ねて常に1、2位につけてはいたものの、年明けのコッパ・イタリアではホームで臨んだ準々決勝でミラノに1-3で敗れる。

 

 タイトルを争う土俵にすら上がれない。セリエAではスクデット、コッパ・イタリア、スーペルコッパで計17度の優勝に輝き、今やリーグの盟主に君臨するチームとして、その事実は選手たちもファンも到底満足のいかないものだった。

 

<ミラノとのコッパ・イタリア準々決勝。⑨ザイツェフは両チーム通して最多23得点と気を吐いたが…>

 

一線級の選手たちがあらがえぬ現実の波

 

 もちろん名実ともに世界トップクラスの顔ぶれが並び、そのパフォーマンスの高さは言うまでもない。だが、逆風の一つの要因としてメンバーの高齢化があったことは否めない。主力を見れば、ユアントレーナは36歳、ロベルランディ・シモン(キューバ)は34歳、セッターのルチアノ・デセッコ(アルゼンチン)とザイツェフは33歳。この世界で長らく第一線に立ち、円熟期真っ只中の彼らだが、常にジャンプすることを求められ、選手生命が比較的短いと言われるバレーボールでは高齢の部類に入ると言っても差し支えないだろう。

 

 そこに輪をかけるように、リーグ開幕直前のヨーロッパ選手権ではザイツェフや代表を引退したユアントレーナのいない若きアッズーリ(イタリア代表の愛称)が優勝を果たす。また、U21(ジュニア)イタリア代表が母国で開催されたU21世界選手権でMVPに輝いたアレッサンドロ・ミケレットや、同世代のダニエレ・ラビアらは所属するトレンティーノで今季のスーペルコッパ制覇を成し遂げた。次世代の大きな波は確かに到来していた。

 

 やがてリーグの中盤で、ユアントレーナがコンディション不良のため、チームを離脱。プレーオフに臨むころには復帰したものの、そのパフォーマンスは万全ではなかった。

 

 そうして迎えたプレーオフ準決勝ラウンドで、ルーベはトレンティーノに開幕から2戦連続ストレート負けを喫する。17/18シーズン以来の、国内リーグ無冠が目の前に迫った。

 

<身長208㎝、最高到達点は380㎝に到達する“カリブ海の巨人”シモン>

 

>>><次ページ>窮地から頂点へ。トップ選手たちの矜持が爆発

<プレーオフ準決勝ラウンドで、トレンティーノ(コート左)と激闘を繰り広げた>

 

「最も厳しい準決勝だった」(ユアントレーナ)

 

 0勝2敗の窮地に立たされたルーベは、準々決勝ラウンド第3戦を戦うためにホームアリーナに戻ってきた。シモンは振り返る。

 

 「ロッカールームに行き、お互いに話し合い、そして、自分たちに言い聞かせました。今、オレたちにできることはバレーボールだけだ、と」

 

 第3戦ではデセッコのトスワークもさえわたり、第1セットではチーム全体で驚異のアタック決定率83%をマーク。終わってみれば、いずれのセットも相手に20点台に到達させず、ストレート勝ちを収めてみせる。逆襲が始まった。

 

 続く第4戦を勝ち切り、ついに勝敗をタイに戻すと、最終第5戦は互いにセットを取り合うシーソーゲームを制す。そのチームの姿を見て、準決勝ラウンドでは一度もコートに立つことのなかったユアントレーナはこう語った。

 

 「私自身は100%の状態にありません。ですが、ピッチ上でできるサポートをしたいと考えています。

 おそらく、これまでで最も厳しい準決勝でした。ですが、2敗してもなお戦い抜いた仲間たちの姿を、私は誇らしく感じます。さぁ、ファイナルへ行きましょう!!」

 

 ファイナルに進出したルーベとペルージャは、ともに準決勝ラウンドで5試合を戦ったものどうし。ルーベのジャンロレンツォ・ブレンジーニ監督は敬意を払い、意気込んだ。

 

 「準決勝ラウンドの戦いぶりは、まさに両チームの意思と粘りの強さを表しています。厳しい戦いが予想されますが、私たちは持ちうるすべてのリソース(=力)を注いで、一つ一つの試合に臨みたいと思います」

 

<昨年の東京2020オリンピックまではイタリア代表を指揮していたブレンジーニ監督>

 

総力戦で臨んだファイナル。最後は完成形に

 

 その指揮官の言葉どおり、ルーベは巧みな選手起用を繰り出した。ペルージャといえば、“地上最強アタッカー”ウィルフレド・レオン(ポーランド)を筆頭とするサーブが武器のチーム。それに対し、ルカレリや20歳の新鋭マーロン・ヤント(キューバ)のサーブレシーブにほころびが生じるとみるや、すぐさま32歳のベテランでレシーブ力に定評あるジリ・コバル(イタリア)にスイッチ。ユアントレーナもレシーブ力を補う役目を託され、コートに立つ。

 

 また、シリーズを通してザイツェフはアタックにサーブに、と高い集中力を見せたが、ペルージャの堅固なブロックが立ちはだかると、控えのオポジット、ガビ・ガルシア(アメリカ/元・プエルトリコ)がしっかりと代役を務めた。

 

 総力戦で勝ち星を重ねた一方で、スクデットに王手をかけた第4戦はそれまでとは異なる展開になった。リリーフブロッカーとしてエンリコ・ディアマンティーニ(イタリア)が第1セットに送り出されただけで、それ以外の選手交代はなし。シーズンの完成形ともいえる戦いぶりでペルージャを圧倒した中、時折アップゾーンから飛び出し、ブレンジーニ監督のすぐ隣で声を張り上げ、“自分にできるサポート”に励むユアントレーナの姿がそこにはあった。

 

<自分がプレーせずとも、⑤ユアントレーナはチームを鼓舞し続けた>

 

 現地5月11日、ユーロスオーレフォーラム。世界最高峰と称されるリーグの頂点に再び舞い戻ったルーベの面々は、記念Tシャツを着用し、表彰式に臨んだ。いつも優勝記念Tシャツには凝ったキャッチコピーがつづられるが、今回はトロフィーの取っ手の片方が数字の“7”で彩られたデザインが採用された。それは言うまでもなく、7度目のスクデットを表現したものだった。

 

 堂々のMVPに選出されたシモンは記念Tシャツを着て、喜びの言葉をこう述べている。

 

 「自分たちは懸命に戦い、ペルージャのようなとても強力なチームを打ち負かすことができました。ケガを含む多くの困難を、ファンの皆さんもともに味わってきましたが、最後にこうして優勝を成し遂げられた。この勝利を心から楽しむべきでしょう」

 

 かつてないほどの困難に直面し続けた。けれども、ただひたすら自分たちを信じて戦いぬいた。それがルーベのチャンピオンロードだった。

 

<次世代の波が押し寄せる。それでも、ザイツェフやユアントレーナたちの輝きが色あせることはない>

 

(文/坂口功将〔編集部〕 Photo/legavolley.it)

 

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