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インターハイ直前! 昨年の女子大会を振り返る【月バレ2021年9月号・プレイバック】

下北沢成徳

  

 

 いよいよ令和4年度全国高等学校総合体育大会(四国インターハイ)が始まる。女子大会が徳島県で7月28日(木)~8月1日(月)に、男子大会が香川県で8月3日(水)~7日(日)に行われる。

 今大会は昨年女王の下北沢成徳、今年の春高優勝校の就実や近畿大会8連覇を達成した金蘭会ら猛者が徳島に集結。大会の前に、月刊バレーボール2021年9月号のインターハイ報道号で昨年の夏の激戦を振り返ってみよう。

 

----以下、月刊バレーボール2021年9月号より----

 

女子優勝 下北沢成徳(東京)

 

 

2019年のインターハイ以降、全国大会の舞台から遠ざかっていた下北沢成徳(東京)。攻守で安定感を発揮し、3年ぶり4回目の優勝を飾った

 

6月の関東大会から3大会連続V

 名門復活を告げるスパイクがコートに突き刺さった。試合後のあいさつを終えると、選手たちの涙は止まらない。何度も抱き合い、優勝の味をかみしめた。2019年のインターハイを最後に、全国大会の切符をつかめずにいた。小川良樹監督は驚きの表情を浮かべ、「久しぶりに出て優勝できるとは思いませんでした。こういう舞台に慣れていないなか、格上を相手によくやったと思います」と選手たちをたたえた。

 

 伝統のパワーバレーで、昨年度春高女王の就実に逆転勝ちした。第1セットを落とし、第2セットも中盤までリードを許したが、エース#5濱村ゆいの連続得点で逆転。その後も攻撃の手を緩めず、ジュースを制すと、そこから主導権を握った。対角を組む#1谷島里咲のスパイクや#10佐藤彩夏のライト攻撃も得点源に。さらに、身長184㎝の#6古川愛梨がオープントスを豪快に決めるなど、威力あるスパイクが次々と決まった。

 

 

 

 その攻撃につなげたのが、ブロックとレシーブを軸にした堅い守りだ。歴代のような絶対的なスパイカーが不在という事情から、3月から取り組んだのが「1ヵ月で1万本のサーブレシーブ」。当初は一日におよそ250本受け、「つらい」と感じていたという谷島は「やらされる練習ではなく、どうしたら捕れるのかを考えるようになりました」と試行錯誤した。

 

 さらに、伊藤崇博コーチの球出しでは、実戦を想定してさまざまなコースに飛んでくるボールを受けることで、対応力を磨いた。その成果が現れ、決勝では安定したサーブレシーブに加え、相手エースの深澤めぐみの角度あるスパイクにも抜群の反応を見せた。

 

 5月の関東大会都予選で3位に終わったが、6月の関東大会、インターハイ予選に続いて頂点に立った。「いいものを持っている選手たちで、大会ごとに課題を修正し、階段を上るように成長しています。でも、こんなに力強くなるとは思わなかったです」(小川監督)。高いポテンシャルを秘めた選手たちは、これからも名将を驚かすことになりそうだ。

 

#6古川(奥中央)を中心としたブロックは、相手に威圧感を与えた

 

大会で光ったのが高いレシーブ力。1年生の#12内澤明未もチームを救った

 

 

〝成徳のエース〞として真っ向勝負

 


濱村ゆい

はまむら・ゆい/3年/身長171cm/最高到達点283cm/アウトサイドヒッター/緒方中(大分)

 

 昨年度は出場を逃し、テレビ画面を通して見た春高。濱村の目標だった舞台で活躍していたのが、就実の深澤姉妹だった。「もちろん悔しさもありましたが、手が届かないところにいて、一種の憧れもあった」と言う。しかし、今大会の決勝ではその2人を上回る大活躍。初の5セットマッチでも、バックアタックも含め、最後まで豪快にスパイクを打ちまくった。「毎日『死ぬ』って言いながらやっています(笑)」という日々の厳しい走り込みが生きた。「小細工なしにしっかりと踏み込んで打つ。そういうバレーに憧れました」と、緒方中(大分)から名門の扉をたたいた。力強いスパイクを打つ一方で、浮き沈みの激しさも認める。「感情に合わせてプレーをしてしまうので、それは今後も課題になります」。それでも、対角を組む谷島が「これが3年生だな、と思いました」とたたえた決勝でのプレーが常にできると、濱村はますます手が負えない存在になりそうだ。

 

 

 優勝後、「みんなに助けられて(点を)決めることができました。みんなで獲った日本一です」とかみしめるように言った。久しぶりの出場となった今大会とは違い、今後は周囲のマークは厳しくなる。それでも名門のエースとして、真っ向から壁を打ち破ることだろう。

 

ベスト6にも満足せず頼れる2年生エース

 

谷島里咲

やじま・りさ/2年/身長172cm/最高到達点297cm/アウトサイドヒッター/八郷中(茨城)

 

 チャンピオンシップポイントを決め、大会ベスト6に選ばれても「今大会はあまりよくなかった。周りの人たちに助けられました」と表情は晴れない。それでも、初の全国大会を経て、理想像が見えてきた。「みんなに頼られる存在になりたいと考えていましたが、それに加えて引っ張れるように。2年生ですが、先輩に頼ってばかりではダメなので」。日本一をつかんでも、若きエースはブレない。

 

世代を代表する逸材が堂々の全国デビュー

 

古川愛梨

ふるかわ・あいり/2年/身長184cm/最高到達点300cm/ミドルブロッカー/加治木中(鹿児島)

 

 小川監督が「一皮、いや二皮向けたんじゃないですか」と絶賛したのが古川だ。中学時代から世代を代表する選手として注目され、迎えた高校初の全国大会。ブロックに加え、決勝で見せたセンターからのオープン攻撃では、身体能力を最大限に発揮した。それでも古川は「継続して日本一になるのは難しい。スパイクもブロックも技術を上げたいです」とさらなる高みを目指す。

 

 

重圧と戦った夏 挑戦者として再出発

 

女子準優勝 就実(岡山)

 

深澤つぐみ#1

ふかざわ・つぐみ/3年/身長176cm/最高到達点302cm/ミドルブロッカー、オポジット/就実中(岡山)

深澤めぐみ#4

ふかざわ・めぐみ/3年/身長176cm/最高到達点302cm/アウトサイドヒッター/就実中(岡山)

 

 最強ツインズが決勝で涙をのんだ。準決勝までは圧巻だったエース#4深澤めぐみのスパイクは、徹底マークにあい、得意のクロスコースに決まらない。キャプテンの#1つぐみもライト側からを中心に得点を重ねたが、相手エースの猛攻には及ばず、逆転負けを喫した。つぐみは「日本一への思いが強かったので、銀メダルはすごく悔しいです」と声を振り絞った。

 

 

 昨年度の春高では2年生で優勝に貢献。だがその後は、力みが生まれ、思うようにプレーできない時期もあった。しかし、「優勝は昨年度のことで、今年は違う」(めぐみ)と心機一転。今大会では重圧と闘いながらも、「喜ぶのは1、2年生がしてくれる」(つぐみ)と、鬼気迫る表情でコートに立ち続けた。その堂々としたふるまいは、仲間に安心感を、相手に威圧感を与えた。

 

 願っていたメダルの色ではなかったが、ライバルたちにあらためてその実力の高さを証明。敗れたことで、さらなる成長の糧も得た。

 

「いろんな打ち方を磨いて、日本一のエースになりたい」(めぐみ)

「もう悔し涙を流さないように。就実らしく『基本に忠実に』、一つ一つの試合に挑んでいきたい」(つぐみ)

 

 肩の荷を下ろし、今度は挑戦者として歩み出す。

 

若きチームを引っ張ったダブルエース

 

女子3位 金蘭会(大阪)

 

吉武美佳

よしたけ・みか/3年/身長181cm/最高到達点300cm/アウトサイドヒッター/大木中(福岡)

 

上村杏菜

うえむら・あんな/1年/身長168cm/最高到達点301cm/アウトサイドヒッター/金蘭会中(大阪)

 

 金蘭会のエースコンビが強烈なインパクトを残した。#2吉武美佳は身長181㎝の高い打点から、#5上村杏菜はバックアタックも含めた豪快なスパイクで、チームを牽引(けんいん)し続けた。学年は違えど「勢いとパワーがほんとうにすごい」(吉武)、「ミスをしたときに背中をたたいてくれて、すごく優しい」(上村)と、互いに信頼し合う。

 

 失セット数0で勝ち上がった準決勝の就実戦では、第1セットを奪われ、第2セット途中から吉武の左足がつるアクシデント。上村の活躍もあり同セットを奪ったが、第3セットは相手にマークされた上村が、3度のブロックを許した。上村は「打ちきる本数が少なかった。やりきれずに終わってしまった」と試合後に大粒の涙を流した。

 

 

 上村以外にも、#6井上未唯奈、#7中川さつき、#8佐藤彩音の1年生が高校初の全国大会で力を発揮。吉武は「ほんとうによくやってくれた」とねぎらった。だが、結果は3位。涙をぬぐった2人の目は、次の日本一へ向いていた。

 

多彩な攻撃を繰り出す左手でベスト4の先へ

 

女子3位 都城商(宮崎)

 

 

甲斐理香菜

かい・りかな/3年/身長171cm/最高到達点294cm/アウトサイドヒッター/土々呂中(宮崎)

 

 

 2年前、姉の由美夏(PFU)とともにインターハイの舞台を戦い、1年生ながら優秀選手に選出された#4甲斐理香菜。今大会では、3回戦でシードの大阪国際滝井(大阪)を破るなど、強豪校に次々と勝利し、目標としていた県勢初の3位まで上り詰めた。 相手を苦しめたのは、緩急をつけた攻撃。大型選手がいない分、日々行うゲーム練習でプッシュやフェイントなどを磨き上げた。サウスポーの甲斐は得点源となったが、「使い分けられていなかった」と厳しい自己評価。「速いバレーは通用した」とチームとしての手応えを感じた試合もあったものの、準決勝で対戦した下北沢成徳など、高いブロック相手には「身長では負けてしまうから、もっと速さでブロックを割らないと」と課題も見つかった。

 

 ベスト6に選出された今大会を経て、「相手ブロックを見て打てるようになった」と振り返る。残り少ない高校バレーで、「3位を超えて成長したところを見せたい」と誓った。

 

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 以上、昨年の月バレ9月号を振り返った。今年はどんな戦いが繰り広げられるだろうか。

 

 四国インターハイ(女子大会)は、徳島県のとくぎんトモニアリーナ(徳島市)、鳴門・大塚スポーツパーク アミノバリューホール(鳴門市)、YGKドーム(板野郡北島町)で2022年7月29日(金)に予選グループ戦の初戦が行われる。

 今大会は男女ともに新型コロナウイルス感染拡大に伴い、保護者などの関係者のみが入場でき(人数制限あり)、一般観客は入場することができない。

 

月バレ.com特設サイト(https://www.getsuvolley.com/interhigh-2022)では四国インターハイ結果速報配信予定

 

 

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