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豪華な顔ぶれなのに勝てなかったピアチェンツァ。ボッティ監督がコッパイタリア制覇後に語った優勝の鍵とは

 イタリア・セリエAの2022/23シーズンはプレーオフに突入し、石川祐希のミラノを含め、レギュラーシーズンの上位8チームがスクデット(リーグタイトル)を懸けて、敗退すれば終わりのトーナメントを争っている。中でも今年2月にコッパイタリア(カップ戦)で初優勝を遂げたピアチェンツァは、今季2冠を目指す。

 

<チーム発足5季目でコッパイタリアを制したピアチェンツァ>

 

〔写真50点〕ピアチェンツァ、歓喜の初タイトル!! 月バレ編集部が現地で近接激写

 

ケガ人続出や指揮官の交代も

 

 英語の「healthy」(ヘルシー)。肉体的に健康で、精神的に健全な、といった具合に“良好”であることを指す単語だ。アスリートにとって、心身ともにヘルシーであることは、パフォーマンスを発揮するうえで必要不可欠といえるだろう。もちろん、それはチームとしても同じだ。

 

 振り返れば、今季のピアチェンツァは十分な戦力がそろったにも関わらず、「unhealthy」(アンヘルシー)だった。始まりは昨年8月の世界選手権だったか。今季チームに加わったアウトサイドヒッター、リカルド・ソウザ(ルカレリ/ブラジル)がそこで負傷し、リーグ開幕に間に合わず。チームは連敗でシーズンをスタートさせている。また、2022年内のレギュラーシーズンを終えた時点で7勝6敗と勝ち越したものの、ロレンツォ・ベルナルディ監督が退任。リリースでは「両者合意のもと」と表記されたものの、シーズン中に監督が交代する事実は健全とは言えまい。

 

 拍車をかけたのが選手たちのケガで、12月中旬にはルカレリが右手中指を負傷。対角のイオアンディ・レアル(ブラジル)も肩の状態が芳しくなく、年末から1月中旬にかけては欠場を余儀なくされた。スクデット獲得の重要ピースでもあった、ブラジル代表の両エースが離脱したことは痛手だった。

 

<(左から)レアル、ルカレリ、ロベルランディ・シモン(キューバ)、ユーリ・ロマノ(イタリア)ら今季チームに加わった面々>

 

チーム発足時から携わる“新”指揮官

 

 そんなチームの采配を年明けから託されたのが、マッシモ・ボッティ氏だ。ピアチェンツァが発足した18/19シーズン初年度に監督を務め、その年にセリエA2(2部)のコッパイタリア制覇。チームに初タイトルをもたらすと同時に、プレーオフを制してスーペルリーガ(1部)昇格に導く。以降も、アシスタントコーチとしてチームを支え、ベルナルディ監督退任に伴い、今回お鉢が回ってきた。監督として初采配を振った第14節(後半第3節)ではトレンティーノに勝利し、「困難な状況でも力を出しきってみせた、この並外れたメンバーたちのおかげです」と喜んでいる。

 

 言うならば、ボッティ監督はピアチェンツァの浮き沈みをコートサイドという最も近い場所から見つめてきた人間だ。だからこそ、栄冠の祝杯は格別だったことだろう。

 

 今年2月25日と26日にローマで行われたコッパイタリアのファイナル4。古代円形闘技場コロッセオさながらのアリーナ「パラロットマティカ」で、ピアチェンツァは完璧な戦いを演じてみせた。準決勝では、それまで無敗だったペルージャをストレートで撃破。続くトレンティーノとの決勝は圧巻だった。

 

<ピアチェンツァを長年ベンチで支えてきたボッティ監督>

 

<次ページ>コッパイタリア決勝で披露したパーフェクトな試合運び

<現・イタリア代表の両エースを携えるトレンティーノ(コート右)を圧倒。なお、豪快なアタックを繰り出しているのはセッター⓺ブリザール>

 

準決勝、決勝でいずれもストレート勝ち

 

 セッターのアントワーヌ・ブリザール(フランス)を中心にサーブで、相手のアレッサンドロ・ミキエレットとダニエレ・ラビア(ともにイタリア)の両エースへストレスを与え続けると、今季新加入のミドルブロッカー、ロベルランディ・シモン(キューバ)が要所でブロックシャット。攻撃に転じては、レアルがアタック決定率67%(27本中)のパフォーマンスで勝機を手繰り寄せる。セットを奪われないどころか、完勝とも言える内容で、セリエAの1部ではチーム史上初となるタイトルを獲得した。

 

 やがて表彰式を終えて、関係者や報道陣がコートの中に入り乱れ、いたるところで祝福の輪ができた。選手たちはもちろんだが、ボッティ監督の元にもひっきりなしに人が詰めかけ、興奮と感動を分かちあう。指揮官はこのように喜んだ。

 

「私とチームにとって2つ目のトロフィーですから、満足せずにはいられません!! 最善の準備をして臨み、望んでいたものを持ち帰ることができました。携わったスタッフ、選手、そしてクラブの関係者全員に感謝したい。この2日間、選手たちは一生懸命にプレーしました。ピアチェンツァという町にとって、この勝利はとても価値があるものです」

 

<スタンドの一角を真っ赤で陣取った応援団をバックに>

 

タイトル獲得に必要なこと、とは

 

 ファイナル4に臨むにあたり、決して不安要素がなかったわけではない。1週間前のレギュラーシーズン第20節(後半第9節/vs.ルーベ)の試合途中でレアルが負傷に見舞われたのだ。「回復できる見込みはあった」とボッティ監督は明かすが、「2日前までは自分がプレーできるかどうかわかっていなかった」とレアル本人。無事に戦列に復帰すると、決勝ではチーム最多20得点の活躍で、堂々のMVPに輝く。「医師と理学療法士の彼らが奇跡を起こしてくれた」とレアルは感謝した。

 

 シモン、レアル、ルカレリ、ブリザールといった世界トップレベルの選手が並び、今回のコッパイタリア制覇で、リーグの頂点に立つだけの力があることを証明してみせたピアチェンツァ。決勝を戦い終えたあと、優勝の余韻に浸るボッティ監督に聞いてみた。

 

 次なるタイトル獲得に必要なことは何ですか?

 

「Stay Healthy!!」

 

 健康、健全であること。答えは、シンプルだった。

 

<心配されたレアルの復帰は、優勝への追い風となった>

 

(文・写真/坂口功将〔編集部〕)

 

【コッパイタリア2023】

優 勝:ピアチェンツァ(初)

準優勝:トレンティーノ

第3位:ミラノ、ペルージャ

 

=決勝=

ピアチェンツァ 3(25-22,25-17,25-23)0 トレンティーノ

=準決勝=

ピアチェンツァ 3(30-28,25-20,25-22)0 ペルージャ

トレンティーノ 3(33-35,22-25,25-19,25-16,15-9)2 ミラノ

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