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雄新中男子 小山千「あと一分一秒でも多く練習していれば」と後悔も胸を張る 地元開催の全国大会で

小山 千(雄新中)

 バレーボールの中学生世代の全国大会「第53回全日本中学校選手権大会」(以下、全中)は今年、愛媛県松山市を舞台に823日まで行われた。地元開催での全国制覇を目指した雄新中(愛媛)は夢破れる。あふれる涙とともに、一人の主力選手が戦いを振り返った。

 

小山 千(こやま・せん/雄新中〔愛媛〕3年/身長180㎝/ミドルブロッカー)

 

 

決勝トーナメント2回戦で昇陽中に敗れる

 

 822日、全中は負ければ終わりの決勝トーナメントに突入した。その二回戦で、“地元の雄”雄新中は全国優勝2度の昇陽中(大阪)に挑み、0-223-25,19-25)で敗れた。大勢の観客に見守られるなか、目標だった日本一への夢が潰え、試合後には多くの部員たちが涙を抑えられなかった。

 

 けれども、試合中の彼らは常にムードよく、一点一点を喜んでいた。思いきりコートを駆け回り、お互いに声をかけあい、ときには観客席にむかって笑顔を向けた。伊藤匠太朗キャプテンは言う。

 

「自分たちはみんなで声を出し合ってプレーするチームなので。それは、この舞台でもできました」

 

 そのメンバーの中でも、ひときわ熱さ全開だったのが3年生ミドルブロッカーの小山千である。同期のオポジット、笠松來は「いつもどおり。見慣れています」と笑ったが、とにかく感情を爆発させるのが持ち味だ。

 

 その情熱は、試合に敗れた直後に振り絞った言葉に表れていた。

 

「相手は同じ中学3年生で。自分たちが一分でも一秒でも多く練習していたら!! あと一歩進むことができていたら、試合は変わっていたと思うんです」

 

 悔しさに比例するかのように、大粒の涙が目からこぼれた。

 

雄たけびをあげてコートに入る雄新中のメンバーたち

 

小山が自身に課していた役割

 

 中学生活において、自分たちのチームで臨む最後の全国大会。そこに向けて、「もう勝つ気しかなくて。僕らの目標はてっぺん、日本一でしたから」と小山。

 

 だが、予選グループ戦では初戦を落とし、敗者復活戦をクリアしたものの、決勝トーナメントは全国制覇の実績を持つチームが並んだ“死の山”に。頂点への道のりは険しかった。それでも、だ。

 

「日本一を目指す以上、組み合わせは言い訳にできないじゃないですか。いくら強いチームと最初に当たったとしても」

 

 結果として、たどり着くことはできなかった。“ほんの少しの”努力が足りなかったことを痛感するからこそ、後悔の念は募る。ただ、小山自身は、こうも語った。

 

「自分たち自身、やりきることはできました。そのやりきった全力が足りなかったのですが…、すごくいい試合になったと感じています」

 

 小山自身は相手にリードを許し、苦しい場面であろうと、明るい表情を絶やすことはなかった。その理由は――

 

「もう、どんなに点差が開いても勝つ、という気持ちでいました。自分の役割は、どれだけチームの雰囲気が沈んだとしても、盛り上げることだと思っているので。そこは出せたのではないかと」

 

大会を終えて、チーム関係者からねぎらいの言葉をかけられる①笠松と⑤小山

 

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この先の人生で立てる誓い

 

 中学1、2年生時はレギュラーになれなかった。「どうしてもメンバーに入りたい」という一心で励み、最後の年にかなえることができた。そこでは自分の役割を胸に留め、チームに貢献することを考えていた。戦いを終えて、仲間たちへの感謝があふれる。

 

「同級生たちはほんとうに3年間、俺のことを見捨てずにいてくれました。最後には全国大会にも出られて、いい戦いができたと思うので。これからもそれぞれの道があると思いますが、頑張りたいです」

 

 負けた悔しさはあっても、いい試合ができたことに胸を張る。小山なりの、スポーツマンシップだ。

 

「高校でもバレーボールは続けるし、その先でも。あきらめないことは、バレーボール以外でも生きてくると思うので。次の戦いでは、足りない部分や欠点、課題なんてないくらいの状態で挑みたいです」

 

 勝利に手が届くまでに“足りなかった”全力は、この先の人生で更新していく。

 

情熱のままに、次の一歩を踏み出す

 

 

(文・写真/坂口功将〔編集部〕)

 

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