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スロベニアの37歳ペアに要警戒。同志の思いを胸に戦う司令塔と、パイエンクが語る日本への警戒「アメリカよりも速さがある」

 バレーボールの「パリ五輪予選/ワールドカップバレー2023」は大詰め。大会第6日目となる10月7日、日本はスロベニアと1敗どうしの直接対決を迎える。他チームの結果および勝ち方しだいでは今日、日本にパリ行きの切符が渡る。が、相手のスロベニアはまぎれもなく強敵だ。

 

<初のオリンピック出場を目指すスロベニア>

 

ヨーロッパ選手権でピンチを救ったベテランセッター

 

 VリーグのジェイテクトSTINGSでプレーするティネ・ウルナウトを筆頭に、タレントぞろいのスロベニア。2019年のヨーロッパ選手権で準優勝に輝いて以降、国際大会では表彰台争いに加わる実力を見せてきた。昨年の世界選手権で四強入りを果たすと、今年のヨーロッパ選手権では3位決定戦で東京2020オリンピック金メダルのフランスをフルセットの末に下し、銅メダルを手にしている。

 

 そのヨーロッパ選手権では準決勝で正セッターのグレゴル・ロプレトが負傷するアクシデントに見舞われた。そのピンチを救ったのが、現在37歳のベテランセッターであるデヤン・ビンシッチだった。

 

 急きょ、大会最後の3位決定戦で登録されることになったが、エースのロク・モジッチがアタック決定率61%(38本中)、ウルナウトが同63%(27本中)とそのトスワークで攻撃を演出。自身もチーム最多3本のブロックポイントをマークするなど、銅メダル獲得の立役者に。キャプテンのウルナウトは感謝した。

 

「この20年間近く、デヤンと一緒にプレーしてきましたから。代表チームは彼の居場所であり、彼のチーム。今日、彼はスロベニア代表にとって不可欠な存在であることを証明してくれました」

 

<デヤン・ビンシッチ(Dejan Vincic/1986年9月15日生まれ/身長200㎝/最高到達点344㎝/セッター/スロベニア>

 

「国を代表することを誇りに思っている」とビンシッチ

 

 緊急登板にも関わらず、役目を果たしたビンシッチ。今回のオリンピック予選をやむなく欠場したロプレトへの思いを胸に来日した。

 

 「グレゴルは回復に向かっていますし、いずれは私たちを救ってくれる存在になるでしょう。でも、今はしっかりと治すことが大事。その分、私たちは彼がいなくてもベストを尽くして、勝利しなければなりません。

 この予選に向けて、彼からは『幸運を祈っている』とメッセージをもらいました。彼の存在にほんとうに感謝しています」

 

 同志の思いを胸に、そしてオリンピックへ導くべく、トスを上げるベテランセッターは代表の誇りをこのように語った。

 

 「もう18年ですかね、代表のメンバーたちと一緒に過ごしてきました。おそらく家族以上に(笑) こうして一緒に戦えることがうれしいです。スロベニアはとても小さな国ですが、とても大きなハートを持っていいます。私たちはみな、国を代表することを誇りに思っています」

 

<豊富な経験を武器に変える⑨ビンシッチ>

 

<次ページ>アメリカ戦でインパクトを残したパイエンクのサーブ

<アレン・パイエンク(Alen Pajenk/1986年4月23日生まれ/身長203㎝/最高到達点366㎝/ミドルブロッカー/スロベニア>

 

アメリカ戦でインパクトを残したパイエンクのサーブ

 

 そのビンシッチと一緒に過ごしてきたメンバーの一人が、現在37歳のミドルブロッカー、アレン・パイエンク。クイック、ブロック、サーブとどれも高い水準にあり、スロベニアを支える。

 

 今大会では尻上がりに調子を上げ、エジプトとの第4戦、アメリカとの第5戦ではいずれもチーム最多3本のブロックポイントをマーク。また、アメリカ戦では相手リベロのエリック・ショージやエースのトリー・デファルコからサービスエースを奪った。

 

 「いつもどおりです。バリエーションに微々たる差があるだけで、今ではどのチームも強いサーブを備えていますから。やはりブロックしやすくするためには、ネットから3メートル以上遠ざけるように、相手のサーブレシーブを崩さなければ。今日はそれがよくできていたと感じます」

 

 ウルナウトのコンディション不良による欠場やモジッチの不調も重なり、スロベニアは1-3でアメリカに敗れたものの、パイエンクのサーブはその弾道と同様に強烈なインパクトを残した。

 

<アメリカのデファルコ(奥⑧)のバックアタックを仕留めた場面>

 

取材中、自ら口にした日本への警戒心

 

 それと同時に光ったのは、バックアタックに対するパイエンクのブロックだ。アメリカはセッターのマイカ・クリステンソンが多彩な攻撃を組み立て、なかでもデファルコやトーマス・ジェスキーらアウトサイドヒッターのバックアタックは大きな武器。パイエンクはそのバックアタックを2度、シャットしてみせた。

 

 「まず戦術的な観点からすると、アメリカは多くのパイプ攻撃(センターエリアからのバックアタック)を使ってきます。なので、こちらとしては常に頭の片隅に置いておかなければいけません。特にサーブレシーブがきちんと返ったときこそ、ブロックするのは難しくなりますね。ですが、今日はなるべく多くのタッチを取ることを心がけて、うまくできました」

 

 こちらが日本のメディアであることもあってか、パイエンクは自ら、このように語ってくれた。

 

 「アメリカは速さのあるパイプ攻撃を繰り出してきますし、それは日本も同じですよね。明日(7日)の試合も同じようなゲームになると思います。もしかしたら、今日(6日)のアメリカよりも速いかもしれませんね」

 

 “大きなハート”を宿し、初のオリンピック出場を目指すスロベニア。37歳の熟練ペアの闘志と技が、日本の前に立ちはだかる。

 

<同い年のベテランペアがチームをリードする>

 

(取材・文/坂口功将〔編集部〕 写真/石塚康隆〔NBP〕)

 

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