バレーボールの小学生世代の全国大会「スミセイVitalityカップ JVA第45回全日本小学生大会」(以下、全小)は8月7日に閉幕した。過去に大会制覇の実績を持つ比叡平(滋賀)は混合の部に参加。ベスト4の結果に終わったが、その最後の試合ではメンバーたちの信頼関係が光る場面があった。
崖っぷちの場面で送り出された加登
「チームを救いたい。少しでもチームのためにできることをやれたらな」
アップゾーンに控える比叡平の加登結奈(6年)は思いを強くしていた。全小最終日、南部スポーツ少年団(和歌山)との準決勝は第1セットを20-22で落とし、第2セットも13-19とピンチに立たされる。そこからサイドアウトを奪うと、小野由美子監督から加登は名前を呼ばれた。リリーフサーバーとしての投入である。加登と代わってベンチに下がったキャプテンの秋尾斗麻(6年)は思いを託した。
「(加登)結奈はみんながピンチのときにチームを救ってくれるサーブを打つので」
そうしてエンドラインに立った加登へ、エースの森虎貴(6年)もそっと声をかける。
「ここ大事にしよな」
1本でもミスすれば相手にマッチポイントに到達される。まさに崖っぷちであり、その言葉は重たいものに聞こえるかもしれない。けれども、森は言葉に温かい熱を乗せていた。
「あまりプレッシャーを与えないように、優しい声かけをしようと考えていました」
エースからの言葉にむしろ加登の闘志はさらに火がついた。「もっと頑張ろう」と。
そこから加登は3度のブレイクに成功した。中にはサービスエースを奪った1本もある。その姿にチームメートは感嘆の声を漏らした。
「ヒーローみたいだな、と。最後にあんなサーブを打てるのはすごいなと感じました」(森)
「さすがは結奈。ピンチサーバーだな、って。頼もしかったです」(秋尾キャプテン)
秋尾キャプテンが口にしたとおり、リリーフサーバーはかつて“ピンチサーバー”と呼ばれていた。まさに、このときの加登にぴったりな表現だった。
「本人たちにとってもいい思い出になるはず」と小野監督
結果として17-21で敗れたものの、最後まであきらめない姿勢を全国の舞台で披露した比叡平。試合後、小野監督は目を細める。
「あの子(加登)はドーンと思いきりのいいサーブが打てるし、何より笑顔がいいんですよ。6年生はこの大会が最後ですし、やっぱり最後に活躍させてあげたいじゃないですか。そうしたらハマってくれたのでよかったです。
ああやって送り出すときはいつも『ひっくり返さへんかな』とは思っています。まぁ、『自分たちは絶対に優勝するんだ!!』とコツコツやってきたチームなら、あそこでひっくり返しているんですけどね。でも今年のチームは、なんぼ言うても響かなかった(笑) その幼さがかわいくもありました。負けはしましたが、私は満足しています。それにああやって最後に決めてくれたことが、本人たちにとってもいい思い出になるはず。卒団して大きくなってまた集まってくれたときに、思い出話に花を咲かせてくれたらうれしいものですよ」
「君がヒーロー 君がヒロイン」。ポスターにそう記された今回の全小を戦った比叡平のメンバーたちは将来きっと、この場面を振り返っては盛り上がるに違いない。その主役の一人、加登はこのように締めくくった。
「いちばん思い出に残ると思います。悔しいと言えばもちろんですが、今までやってきたことは全部出せた、そんないい大会になりました」
大会の模様と出場チームの選手名鑑は
9月12日(金)発売の月刊バレーボール2025年10月号に掲載予定!
(文・ポートレート写真/坂口功将 写真/青山義幸、石塚康隆(NBP))
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