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今季はまだ終わらない。もう一度、アジアの頂点へ 女子日本代表・薩摩川内合宿 2026年晩夏

円陣を組む日本代表メンバー。中央は佐藤

 9月16日(水)に開幕する第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)を前に、バレーボール女子日本代表が94日(金)から鹿児島県薩摩川内市のサンアリーナせんだいで強化合宿を行った。

 

 今大会に臨むのは、関菜々巳をキャプテンとし、和田由紀子、佐藤淑乃、鴫原ひなた、北窓絢音、秋本美空、山田二千華、山口真季のアジア選手権組に、塩出仁美、西崎愛菜、廣田あい、井上未唯奈を加えた12人。今季最後の代表戦となるアジア競技大会へ向け、限られた時間の中で、フェルハト・アクバシュ監督らコーチ陣と選手はどんなチームになろうとしているのか。96日(日)と12日(土)に行われた公開練習の様子をリポートする。

 

 

円陣を組む日本代表メンバー。中央は佐藤

 

 

大勢のファンを魅了

 8月末のアジア選手権は3位に終わった女子日本代表。今季最大の目標としていた、この大会でのロサンゼルス2028オリンピックの出場権獲得には届かなかった。

 このままでは終われない――。アジア選手権を戦った選手にはその悔しさがあり、今季、代表チームで思うようなプレーができなかった選手や、出場機会を得られなかった選手にも、それぞれの思いがある。シーズン最後の大会は、そんな12人がもう一度集まり、新しいかたちで挑む「延長戦」のようにも映る。

 

 9月6日の公開練習には、トッププレーヤーの姿をひと目見ようと、県内外から多くの観客が詰めかけた。午後の練習では、ブロックディフェンスからのトランジション(切り返し)を想定したシーンが繰り返されていた。約束事を確認する、ドリル色の強い内容だった。

「急がないで。まずはしっかりブロックを跳んで」。“フェロー”こと、フェルハト・アクバシュ監督は気になるところがあればプレーを止めて、細やかに指導する。2人のブロッカーがしっかり跳ぶ。ブロック、ディフェンスから攻撃へ移る際にも、目の前の役割をおろそかにしない。1本目は意識してAパスを返す。今季の大会で出たチームの課題に、一つずつ手当てをしているように見えた。

 

 

男性コーチも入ってのゲーム練習

 

 

 セッションが終わるたび、選手どうしで話し合う時間も設けられた。それぞれの動きや組み合わせを確認するなかで「コンビ、ポジションを変えてもいいですよ」と監督が促すと、北窓が自ら申し出て変更する場面もあった。合宿開始からまだ日が浅く、代表活動が久しぶりとなる選手たちもいる。慣らし運転のような部分がありつつも、徐々に順応していく。塩出はアタッカー陣とていねいに合わせ、廣田が快音を響かせる。西崎もいい守備を見せていた。

 全体練習を終えると、関とミドルブロッカー陣がタイミングを合わせた。佐藤も「体がバキバキ…」とつぶやきながら、関のトスでバックアタックを打ち込む。塩出は和田へのバックトス、山口とのクイックなどを確認。隣のコートでは、秋本、鴫原らがサーブ練習を行い、西崎と北窓がレセプション、ディグに取り組んだ。それぞれが自分の課題に向き合う姿があった。

 

悔しさを前に進む力に

 2025-26シーズンのSVリーグを制したSAGA久光スプリングスからこのチームに参加するのは、北窓と井上の2人である。北窓は逆転勝利を飾ったセミファイナル2戦目で、キャリア初となる3連続サービスエースを記録するなど、攻守両面で勝利に貢献。井上もセミファイナルで出場機会を得ると、得意のブロード攻撃などで存在感を示した。クラブで頂点に立ち、勢いを持って代表活動へ入った2人だったが、その口から出たのは、ともに悔しさがにじむ言葉だった。

 北窓は「手応えとしては正直あまりないというか、去年のほうがチームに貢献できていたなという気持ちがある」と率直に振り返る。今季は、何を重点的に取り組み、何を出していけばいいのか。その部分に迷いがあったという。

 

 アジア選手権後、北窓は自分の思いを監督に直接伝えた。

「思っていることを伝えたら、フェローもそれに寄り添ってくれたので。もっと自分の意見を積極的に言って、自分がやりたいことを悔いなくやって、試合に挑みたい」と、腹を決めた。

「自分から意見を言うことは苦手なんですけど」。今大会は、自分たちの力がこれまで以上に必要になると感じている。もともとディフェンスには定評がある北窓。「コートに私がいたら大丈夫と、みんなに安心感を持たせられるような選手になりたい」。ほほ笑みに、確かな意志を宿らせる。

 

 

ウォームアップの様子

 

 

 一方の井上も、初の日本代表では思うようにいかない時間を過ごしていた。2025年の女子U21世界選手権では銀メダル獲得に貢献した経験もあるだけに、「納得のいく活躍ができておらず、試合にもなかなか絡んでいけなかった。結構、悔しい思いでここまできている」と胸の内を明かす。

 井上には、SAGA久光で培ってきた明確な役割意識がある。「自分が入ることによって流れを変える。とにかくチームをいい方向に変えて、1点を取って帰るぞ、という気持ち」で、相手の流れを切り、ゲームの主導権を手繰り寄せてきた。アジア競技大会では、先輩の山田、山口に続く存在感を示したいところ。「結果にこだわって、プレーで貢献できるように、気合いを入れて頑張りたい」と自らを奮い立たせる。若手として意識するのは「プラスの感情、ポジティブな感情を、そのまま直球で出していこう」という伸びやかなエネルギーだ。持ち前の明るさで周囲に働きかけ、ホームの応援も力に変えていく。

 

新たなかたちを探る

 12日の公開練習で締めくくりに行われた66のゲーム形式では、男性コーチ陣も混じり、熱の入ったラリーを展開した。集中、躍動、粘り。選手たちの動きの変化に目を見張った。選手の連係から生まれるダイナミズムが、コートに満ちていた。ネットを挟んで、選手はポジションごとに頻繁に入れ替わる。どちらが主力で、どちらが控えか。そんな線引きを感じさせず、選手どうしで息を合わせ、いいプレーには互いに声を掛け合っていた。

 長くラリーが続けば、取ったほうも、取られたほうも、ハドルを組んで目を合わせる。監督はゲームの途中にもたびたび「タイムアウト」と声を掛け、選手を集めた。大きな修正点がなくとも、話すこと自体を習慣にするように、短い時間でも確認しあう。6日前にはどこかもどかしく感じられたこの時間も、テンポのよいものへと変わっていた。

 

 

秋本(手前左)はアジア競技大会で勝利のカギとなれるか

 

 

 関も「この数日間で、新しいことにもいろいろとチャレンジしていて、少しずつ自分たちのものになっている」と手応えを感じていた。その一つが、秋本の起用法だ。練習では前衛の両サイドにオポジットとアウトサイドヒッターを置き、中央に秋本が構える布陣が見られた。アクバシュ監督によれば、秋本を「従来型のミドルブロッカー(classic middle blocker)」として置くのではなく、「4人のアタッカー+1人のミドルブロッカー」というシステムの中で、異なる役割を担うことを試しているという。「まずは今大会で見てみたい」と話しているとおり、今はまだ試行の段階にある。66のゲーム練習では、コート後方いっぱいまで下がって助走距離を確保し、力強いサーブを打ち込んでいた秋本。サービスエースを奪うと輪の中心になって、笑顔が弾けた。

 

楽しさに立ち返る

 今大会でキャプテンを務める関は「ほんとうに短い期間のキャプテンなので」と前置きし、「チームの中で、みんながキャプテンのようなつもりでプレーしてもらえたら」と語る。そのうえで「目指す方向だけはブレないように、しっかりとコミュニケーションをとりながら、この12人なりのチームのかたちをつくっていきたい」と力を込める。

 

 アクバシュ監督は、薩摩川内合宿について「とても有意義だった。落ち着いて練習できる環境だった」と振り返り、アリーナと宿舎が近く、選手たちが長い時間をともに過ごせたことを利点に挙げた。関も「オフに街に出ると、ファンの方が温かく声をかけてくださった」と話す。チームで濃い時間を過ごしながら、地域の温かさにも触れる。そんな環境が、短い合宿の中で選手たちが互いを知り、コミュニケーションを深める一助になったかもしれない。

 

 

練習の最後に、アクバシュ監督を中心に

 

 

 このチームが、アジア競技大会でどんなバレーを見せるのか。関は今季ここまでを「結果を追い求めすぎて、自分たちの好きなバレーボールを楽しめていなかった」と振り返る。日の丸を背負い、結果を求められる責任はもちろんある。それでも、もう一度、自分たち自身がバレーボールを楽しみ、その姿を見ている人にも楽しんでもらいたい。「前を向いて進んでいく私たちの応援をよろしくお願いします」。そう関は呼びかけた。

 12日のコートには、その言葉と重なるような明るさがあった。限られた人数、短い期間での連戦となるアジア競技大会。佐藤が「粗さはあるが、みんなで改善しようと努力してやってきた。それがいいかたちに出れば、いいバレーができるのではないか。試合をしながら、成長していきたい」と語ったように、今ここにいる12人でできることを探しながら、今季最後の戦いへと向かっていく。

 

取材・文/泊 亜希子

 

【アジア競技大会 女子日本代表日程】

9月16日(水) 予選ラウンド 日本 vs. ネパール
9
18日(金) 予選ラウンド 日本 vs. インドネシア
9
20日(日) 準々決勝
9
21日(月・祝) 準決勝
9
22日(火・休) 3位決定戦・決勝

※決勝トーナメントは予選ラウンドの結果による

 

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