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春高2024

月バレ!ザ・ワールド/vol.12-セルビア-

  • 編集部取材
  • 2020.07.08

 ハロー!! 月バレ編集部のGUCII(グッチー)です。本来であれば東京2020オリンピックが迫り、お祭りムード一色だったはず…。ですが、またバレーボールの日々が戻ってくることを願うばかりです。さて、今回はその大舞台で、頂点をつかまんとする強豪国についてお届けします。

 それではご一緒に。月バレ!ザ・ワールド!

GUCIIの 月バレ! ザ・ワールド】vol.12

■オリンピックで金を。セルビアの育成事情と、代表チームの存在価値

2018年世界選手権で喜びをわかつ女子代表のエース、ティヤナ・ボシュコビッチ(写真左)とブランキツァ・ミハイロビッチ(写真右)

 2018年世界選手権。決戦の地、横浜で刻まれた色褪せることのない激闘の記憶と、手にした女王の座。その翌年にはヨーロッパ選手権で男女代表がアベック優勝を果たした。

 

 FIVB(国際バレーボール連盟)ランキングの最新時点(2020年7月7日)では女子は6位、男子が11位につけるセルビア代表。レギュラーメンバーの多くは海外のトップレベルのリーグ、例えば女子はトルコ、男子はイタリアやロシアでプレーしており、代表チームとしての力はまぎれもなく世界上位にあると言っていい。延期となった東京2020オリンピックにおいても女子は金メダル候補の一角である。(男子は大陸別最終予選で敗退し、出場ならず)

 

 そのセルビアについて、話を聞く機会があった。今年2月の全日本中学生選抜男子のオーストラシア遠征の際に筆者が出会ったのが、現地でU16選抜チームコーチを務めていたムラディン・スタンコビッチ氏。現在はオーストラリアのノースサウスウェールズ州のバレーボール協会で、インドア・ビーチ両方の競技発展や選手の育成に携わっている人物だ。

 

 セルビア出身のムラディン氏はセッターとしてかつては、V.LEAGUEの東レアローズでもプレーしたデヤン・ボヨビッチにトスを上げていたという。また、若かりし頃には現・女子代表のゾラン・テルジッチ監督に指導を受けたこともあったそうだ。

オーストラリアU16選抜チームを指揮したムラディン氏(写真中央)

かわいい子には旅をさせよ。有望選手は若くして強豪リーグへ

 

 ムラディン氏によれば、セルビアにおいてバレーボールは3番目に人気のスポーツで、1番はサッカーで、その次はバスケットボールになる。

 

 多くの場合、およそ8歳のころからで各地域のクラブチームでバレーボールを始める。最初は週に2日ほどの遊びからスタートし、そこから10歳あたりで週3日、12歳あたりで4日ほど、15歳あたりになれば毎日練習をするようになる。併行して、選手のポテンシャルが見極められ、有望な選手に対しては17〜18歳ごろに資金面のサポートも厚くなり、その時点からヨーロッパの強豪リーグであるイタリアやポーランドなどでのプレーを経験させている。

 

 実際に、現・男子代表のエースであるオポジットのアレクサンダル・アタナシエビッチはポーランド・プラスリーガのベウハトゥフで、ベテランミドルブロッカーのマルコ・ポドラスチャニンはイタリア・セリエAのコリリアーノで1シーズンを戦ったのちにルーベで、2人とも20歳のころには強豪クラブでプレーした。

 

 ユース、ジュニアに相当する17歳〜20歳に時点で、「そうした有望選手たちにとってバレーボールは楽しむためではなく、国が勝つため、つまりオリンピックでベストリザルト(最高の結果)を出すために取り組んでいるものになります」とムラディン氏は言う。

男子代表の大エース、アレクサンダル・アタナシエビッチ(コート奥)。背番号は、英雄がつけた14番

国内のバレーボール事情を変える、オリンピックの金メダル 

 

 セルビアのバレーボール事情において、最も大きなトピックスといえば、2000年のシドニーオリンピック。セルビアの前身、ユーゴスラビア(当時)のバレーボール代表男子はニコラとウラジミルの“グルビッチ兄弟”やスロボタン・コバチ(昨年は男子代表の監督に就任)、そして、“英雄”イバン・ミリュコビッチを擁し、金メダルを獲得する。

 

 「今でも国民はミリュコビッチがメダルをとった時の話をするんだよ」とは以前、アタナシエビッチが口にした言葉だ。

 

 その栄光が、国内のバレーボール界に変化をもたらした。「それまで若い年代の子供たちはほとんどバレーボールをしていませんでしたが、一気に広まったわけです」とムラディン氏。

 

 そのとき8歳〜9歳だったのが、アウトサイドヒッターのブランキツァ・ミハイロビッチやミドルブロッカーのミレーナ・ラシッチらで、現・女子代表の中心選手たちなのである。2002年からはテルジッチ監督がユーゴスラビア女子代表を率い、男子と同じような強化に取り組んだ。

 

 その後、ユーゴスラビアはセルビア・モンテネグロへ国名変更、モンテネグロやコソボの独立といった平穏ではない国内情勢もありながら、バレーボールの代表チームは着実に成長していく。そうして女子代表は2015年ワールドカップと2016年のリオデジャネイロオリンピックで銀メダルを手にすると、2018年にはついに世界の頂点に立ったのである。

 

 2018年の世界選手権を戦い終えた後、首都ベオグラードには約1万人のファンが集い、帰国した女子代表チームをたたえ、歓喜した。その一方で、テルジッチ監督はバレーボールの、国内における環境を憂いてもいた。代表を強化するための施設、例えばトレーニングセンターや体育館がセルビア国内には整っていないのだと。その実状についてムラディン氏もうなずき、このように語った。

 

 「決して十分ではないですね。クラブチームも潤沢な資金があるわけではありません。だからこそセルビアのバレーボール選手たちは、ハングリーなのです」

 

 代表が勝てば、歴史も環境も変わる。そのことを知るセルビアのバレーボール界。2018年以降には、ようやく代表のための施設が一つ誕生したのだという。

 

 きたるオリンピックで、女子代表が目標に掲げるは金メダルの獲得。それは新たな希望を国にもたらすという偉大なミッションでもあるのだ。

2018年世界選手権から帰国し、国民を前に笑顔を浮かべる女子代表。さぁ、次はオリンピックだ(写真:FIVB)

『月刊バレーボール』8月号は7月15日(水)発売予定!

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<画:大嶽あおき>

著者紹介:GUCII(グッチー/坂口功将)。2016年春入社。月バレ編集部に配属後、本誌で『WORLD VOLLEYBALL NEWSPAPER』、「月バレ.com」では『WEEKLY SERIE A』を担当。2018年は世界選手権の男女両ファイナルを取材した唯一の日本人記者という称号を獲得し、昨年はネーションズリーグ男子ファイナルラウンドの取材のため単身でシカゴへ。だが、英語が特に話せるわけではない。

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