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野瀬将平インタビュー【中編】イスラエルで「試合がうまくなっていく」

 前編(イスラエルで求められる自己管理能力)ではイスラエルでの生活やコロナ禍の状況、リーグやチームについて野瀬選手に話をうかがった。今回はイスラエルで試合に出場する中で自身が感じていることについて。

 

情報がないイスラエルリーグからのオファー

 

――なぜ今季海外に出ようと思ったのですか?

 

 僕は今27歳です。Vリーグに入って5年が過ぎました。やっぱり試合に出ないと意味がないと思っているんです。下積みっていう年齢でもないし、なんなら引退の方が近いですよね。キャリアを考えると真ん中より後に来ているんです。もちろん日本にいたら練習環境はいいですし、素晴らしい選手もいっぱいいるので、学ぶこともあるのですが、それはもう4年間やりました。昨季のVリーグで半分ほどの試合をスタメンで出させてもらって、試合じゃないと気づけない感覚や学びが多かったんです。今、自分に必要なのは、コーチに台上からボールを打ってもらってサーブレシーブを練習するとか、6対6の紅白戦で上手くなることではないんです。それももちろん必要なことなんですが、ユニフォームを着て出せるパフォーマンスが今の自分には足りていないと痛感しました。

 

 そう考えて、真保(綱一郎・FC東京監督)さんに、海外に行きたいと相談しました。エージェントに連絡してチームを探してもらい、オファーをいただいたのが8月26日です。2日くらい考えてサインして9月10日に日本を発ったので、結構バタバタでしたね。

 

――オファーをもらってシーズンまでの時間がない中での判断は難しかったと思いますが、迷いはなかったですか?

 

 迷いましたね。いや、迷ったというよりは、他のオファーを待つという選択肢がありました。僕の選択肢に最初はイスラエルが入っていなかったんです。ヨーロッパのドイツやフランスをイメージしていたので、イスラエルからのオファーと聞いて「ん?」となったんですけど、そこから情報を集めました。最初はどのくらいのレベルか分からないですし、ナショナルチームはランキングでいうとぜんぜん下の方ですし(2021年2月10日現在FIVBランキング56位)。

 

リーグ戦での様子(写真:本人提供)

 

 イスラエルに行ったとして、試合は出られるけど、フローターサーブを打つ選手しかいないとか、スパイクは全然大したことがないとかだと、行っても意味がないと思ったので、情報はすごく集めました。周りの人にも聞いて、今村(駿/トヨタ車体コーチ)さんにもたくさん聞いて、チームに映像をもらって、それも見た上で、そんなに悪くはないのかなと思いました。悩みはそこだけでしたね。レベルが問題ないって分かった時点からは迷いはなかったです。

 

 

「試合がうまくなる」ということ

 

――いま、どのような経験を積めていますか?

 

 試合に出る経験を積めることが一番よかったことですね。手応えとしては、バレーボールの技術がめちゃくちゃ上がったということはそんなにないです。でも練習で出せていたパフォーマンスを試合でより出せるようになった感覚はすごくあります。簡単にいうと、試合がうまくなりました。

 

 僕がずっと抱えていた課題は、試合でちゃんと自分の力が出せるかどうか、ということでした。試合って緊張するじゃないですか。相手の情報もないし。例えばチーム内の紅白戦とかだと、迫田(郭志・FC東京)がどこにサーブを打つかとか、優磨さん(長友・FC東京)がどこに打つかだいたい感覚で分かってくるんですよ。毎日受けているから。でも試合ではそういうことはないし、瞬間、瞬間で状況が変わってくる。

 

 そんな中で、クラブの命運がかかったセットポイントで自分の力がちゃんと出せるのかってなると、練習で出せる力とのギャップが大きかったんです。「今のは練習でできてるじゃん!」「俺、こんなプレーできるのに」って思うけど、試合だとできない場合があります。そのギャップが、今は埋まってきた感じはあります。僕の持っているバレーボールの技術がめちゃくちゃ上がっている印象ではないです。いや、もしかしたら、上がっているかもしれないですけど、僕としては、試合で出せる実力が練習で出せる実力に近づいている、という印象です。試合で出せる実力が上がっているのはバレーボール選手としてすごく成長しているのかなと思いますね。

 

ヨーロッパ選手権にも出場している(写真:CEV)

 

すべては結果がものを言う

 

――海外の選手を見ていると、試合だと一段ギアが上がる感じがありますよね

 

 評価基準がすべて試合の結果だからなんですよ。これはヨーロッパ方面の感覚でもあると思うんですけど、僕がいるイスラエルでは練習でうまくいっても試合で結果が出なかったら意味がないっていう感覚ですね。みんな練習は結構適当です。でも試合になったら、ちゃんとやる。すごい実力を出すんです。

 

 彼らはバレーボール選手の評価としては、『試合の結果が大事』と分かっています。その結果で、次の年のサラリーが決まるし、もっと稼ぎのいいチームに行けるかもしれないと分かっているから、試合を頑張ります。日本では練習での態度も評価されるんです。それは、いいところでもあるんですけど。「あいつ、頑張ってるな、うまくなったな」って。でも試合では、台上から「ほらいくぞ」とは打ってこないから捕れない。

 

 僕、練習は結構上手なんですよ。こっちに来てからも監督が打つ場所がわかるし、肘の角度見てフェイントしてくるなとか分かるし。でもこっちの選手はそれぜんぜんできないんですよ。フェイントめっちゃ落とすし、対人とかもそんなに上手じゃないです。でも試合になると、ディグ上げるんですよ。フェイントも拾います。だから、『試合が上手』ってすごく感じますね。

 

――試合の中で技術も上がっていると感じますか?

 

 僕はあくまでも練習で出せる実力が高くないと、試合でそれ以上の高い力が出せることはないと思います。練習で捕れていないサーブは試合で捕れません。僕の理論としては、普段の実力が試合で出せる実力を超えることはないと思います。特にリベロは。

 

――でも練習と試合で出せる差はあると

 

 例えば練習で100まで出せるなら試合でも100まではいけると思います。でも試合で110になることは多分ないと思います。アタッカーがアドレナリン出まくっていつもより跳んで点を決めることはあるかもしれないですが、リベロが普段捕れていない強いサーブをその日だけ全部Aパスにできましたということは、1試合ならあっても、シーズン通してはないと思いますね。

 

 

試合に出て、気づいたことを練習して上達

 

――それも試合に出る経験によって感じたことなんですね

 

 そうですね。それと、試合に出ることで練習に生かせる気づきがあります。練習でフローターサーブに対するサーブレシーブをしていて、試合に出ていると、「あ、練習と感覚が違うな」って気がつけるんです。そうして試合で気づいたことはすぐに上達しますよ。試合に出て、気づいて、その上で対策して練習することはやっぱり違うのかなって思います。

 

――試合を想定して練習することは大切だと言われていますが、実際に試合を経験するとまた違うんですね

 

 そうですね。もちろん前提として、練習は試合を想定してすべきです。僕は2年くらい前までは試合に出ていないから、想定しかできなかったんですよ。「橘(裕也・FC東京)さんはああしてサーブを受けているな」とか「清水(邦広・パナソニック)さんはこんなサーブ打ってくるんだ」とか。実際試合に出ると、そのギャップに気づくんです。そしてそのギャップを埋められるのが、試合に出たことでの気づきを生かす練習です。

 

――そうした経験はこの先も力になりそうですか?

 

 僕はなぜ海外に来ているかというと、Vリーグで試合に出て活躍したいからなんですね。そのためなんです。なので、この経験がどういうものになっているのかは、日本に帰ってみないと分からないです。日本で試合に出てみて、イスラエルで試合に出ていた時と一緒の感覚だからいけると思うのか、Vリーグは違ったってなるのか。今はどうか分からないですね。でも評価基準を作ることができました。今までは比べるものがなかったんですが、今はイスラエルで試合に出ていた時はこうだったなと比べる基準を持つことができたのは大きいです。

 

野瀬将平インタビュー【前編】イスラエルで求められる自己管理能力

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野瀬将平

1993年7月20日生まれ/福岡県大刀洗町出身/リベロ

東福岡高ではインターハイ、国体、春高に出場。慶應義塾大へ進み、U21日本代表として世界ジュニア選手権大会に出場。卒業後、2016年にFC東京入団。今シーズンはイスラエルリーグのハポエル・クファルサバへと移籍した。

 

 

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