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「この合宿で自分を変えたかった」福岡女学院中 甲斐千尋の覚悟と全国中学生選抜合宿で起こした行動

  • コラム
  • 2022.11.09

 

 

 

 中学生世代の育成強化事業として毎年設けられている全国中学選抜の第一次合宿が10月中旬にオガール(岩手)で行われた。全国各地から集まった男女計60名は、それぞれの思いを胸に合宿に臨んだ。その中で、覚悟と決意を持って臨んだ一人が、女子の甲斐千尋(福岡女学院中〔福岡〕3年)である

 

 

甲斐千尋(かい・ちひろ/福岡女学院中〔福岡〕3年/身長175.2㎝/最高到達点284㎝/ミドルブロッカー)

 

大浴場前のシューズをそろえた、その理由

 

 10月14日、全国中学選抜の第一次合宿は2日目のメニューを終えて、あとは就寝時間を前に入浴の時間が設けられているだけだった。大浴場の入り口には、男女それぞれのシューズがまばらに並ぶ。すると、女子浴場から出てきた甲斐は一人、シューズを整え始めた。

 そうそうできるものではないだろう。男女問わず、まだ出会ったばかりで、中には接したこともない参加者の分まで、きっちりとそろえたのだから。

 

 「ぐしゃっとなっているのが苦手、という性格もあるかもしれません。でも、そういうところがそろっていないと、チーム全体もきちんとできないと思うんです。

 男子だから女子だから、話したことがあるない、とかではなく、やるべきことはやっていかないと、と思うので。そこはメリハリをつけて。乱れていたら自分が直す、そうやって自分から動く意識を行動につなげたかった。それは、この合宿で自分を変えたかったからです」

 

 強いまなざしで、その行動に至った思いを明かしてくれた甲斐。彼女には、変わりたい理由があったのだ。

 

 

スタッフに質問をぶつける甲斐

 

全国大会で味わった悔しさがきっかけに

 

 さかのぼること2ヵ月前。甲斐の所属する福岡女学院中は第52回全日本中学校選手権大会に出場し、最終日に駒を進めた。その準決勝で大阪国際中(大阪)に0-2(20-25,22-25)で敗れて、ベスト4の結果に。チームとしては第48回大会(2018年)に並ぶ好成績だったが、コートに立っていた甲斐の胸の内は違った。

 

 「先輩たちと同じ場所までたどりつけたんだという安心感が、みんな口に出さなくても、チームの中で広がってしまったと感じています。

 相手のマッチポイントになっても、まだ自分たちはいける、と思い込んでいました。実際は厳しい展開になるまでに、『1点を取れたら2点取る』くらいの気持ちでいないといけなかったのに、そこで相手に負けていた。自分たちの力、自分たちらしさをまったく出せずに終わってしまいました」

 

 

大阪国際中との準決勝。奮闘を見せたが…

 

「意外と試合中は、相手に点を取られても何とも思わない、ドライな自分がいたんです。この試合で負けたら引退、というのは1年前の先輩たちの姿を見ていたのに。試合が終わった直後も、終わったんだ…、という実感が持てなくて」

 けれども、まもなくして引退を実感すると、甲斐はとてつもない悔しさに襲われた。

 もう一回やり直したい、でも、それはかなうはずもない。甲斐が自分自身と向き合った瞬間だった。

 

 「結果的に全国3位で終わって、このままではそれより上にいくことができない、とめちゃくちゃ思ったんです。高校に進学するけれど、そこでの自分は今までと全然違う自分になりたい、って。そうすればプレースタイルもバレーボールに対する気持ちも変わってくると思いました」

 

 やがて全国中学選抜第一次合宿に招集された。自分を変えたい。そう覚悟して、岩手県へ向かった。

 

 

試合を終えて、悔しさに打ちひしがれた

 

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