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全国大会で“三度目の正直”ならずも大東中の監督が部員たちへかけた労いの言葉「このチームでもっと…」

 バレーボールの中学生世代の全国大会「第53回全日本中学校選手権大会」(以下、全中)は今年、愛媛県松山市を舞台に8月23日まで行われた。3年生たちにとって集大成となるこの舞台で、実に3年連続の対戦カードが実現した。大東中(大分)vs.駿台学園中(東京)である。

 

 

今年は九州ブロック2位通過。3年連続3度目の全中出場を果たした大東中

 

日本一7度の名門へ募らせた思い

 

「駿台学園に勝ちたい」

 1年前の夏、代替わりを果たした大東中の部員たち、特に最上級生たちの思いは一つだった。

 

 当時2年生たちの面々は、入学してから2年連続で全中の舞台を味わってきた。そして不思議なことに、そこでは全国制覇7度の実績を持つ駿台学園中と対戦。いずれも敗れる結果に終わっていた。そんな先輩たちの姿を見てきたからこそ、自分たちのチームをスタートさせるにあたって、名門撃破をターゲットに据えた。

 

 そうして迎えた今年の夏。両者は導かれるかのように、愛媛全中の決勝トーナメントで再び相まみえた。これまでと違ったのは、部員たちの心持ちだ。荒巻良輔監督は言う。

「今までは全国大会に出場する、が目標だった部分もありました。ですが、『駿台学園に勝ちたい』が目標でしたので。いざ試合では、関東のトップレベルのバレーボールに面食らう様子も見られましたが、それも想定して臨んでいた分、ハートの部分では対等に戦えたのではないかと」

 

 

決勝トーナメント2回戦で駿台学園中(手前)と対戦。果敢に戦った

 

フルセットに持ち込み、最後まで食らいついた

 

 第1セットを奪われたものの、大東中は小名川暁誠キャプテンが「自分たちは仲のよさが武器」と話すように、明るいムードを保ちながらプレーし、やがて第2セットを取り返す。3年連続、3度目の対戦にして初めて奪ったセットだった。

 

 そうして最終第3セットは、21-24と先にマッチポイントを握られる。崖っぷちの場面で「僕がこのローテ―ションを回さないと、3年連続で負けてしまう。ここは絶対に回すんだ」と小名川キャプテンがレフトから得点。サイドアウトを奪うと、そこからブレイクに成功し、1点差に詰め寄った。

 

「1セット目はふわふわしていましたが、2セット目あたりからしっかと強豪相手に食らいついていました。その姿を見て、ほんとうに『このチームでもっともっと試合がしたいな』という気持ちでいっぱいでした」

 そんな思いで部員たちの戦いを見守っていた荒巻監督。最後、小名川キャプテンの放った力強いサーブはネットにかかり、自チームのコートに落ちる。「勝負しにいった結果だったので。誇らしく思って見ていました」と語る、その表情は温かった。

 

 

窮地に立たされても、小名川キャプテンは持ち前の闘志を貫いた

 

【次ページ】「全員で戦えば、全国の強豪が相手でも勝負できる」と実感

 

最後はサーブミスで試合終了の笛が鳴った

 

「全員で戦えば、全国の強豪が相手でも勝負できる」と実感

 

 試合後の整列が終わり、コートから引き上げる際、荒巻監督は涙する小名川キャプテンの肩に腕を回した。人一倍、責任感が強く、重責と向き合ってきたリーダーをねぎらう。

「お前のせいじゃないよ」

「お前のおかげで、ここまでやれた。ありがとう」

 

 願っていた相手と、最高の舞台で最後に戦うことができた。“三度目の正直”とはならなかったが、「今までよりも、いい試合はできたと思います」と小名川キャプテンは言葉に力を込める。そんなチームと過ごしたシーズンの終わりを、荒巻監督は惜しんだ。

「3年生たちは元から試合経験が多いメンバーでした。とはいえ、ジュニア(小学生)時代に目立った成績を残したわけではなくて。サイズも大きくありませんし、どこか自信がなかった。ですが、たとえトップレベルの選手が一人もいなくても、全員で戦えば全国の強豪が相手でも勝負できるのだ、というのを見せてくれました。

 いくらでも練習して、一緒の時間を過ごしていたかった…。そんな子どもたちでしたね」

 

荒巻監督自身も目に涙を浮かべ、選手たちをねぎらった

 

(文・写真/坂口功将〔編集部〕)

 

【大東中vs.駿台学園中 3年連続の戦績】

=第51回大会@埼玉=

(21年8月19日)

予選グループ戦/8組

(20-25,23-25)

 

=第52回大会@秋田=

(22年8月20日)

予選グループ戦/4組

(11-25,7-25)

 

=第53回大会@愛媛=

(23年8月22日)

決勝トーナメント/2回戦

(21-25,25-21,23-25)

 

第53回大会の模様

 

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