
トップレベルの若きフィンランド人指導者たち
伝統的にレベルの高いウインタースポーツに限らず、今やバレーボールやバスケットボールにおいても、日本のスポーツ界で活躍するフィンランド人の指導者が増えているという。その背景を探るトークセミナー「フィンランド流コーチ術」が11月17日、フィンランド大使館に現役指導者たちを迎えて開催された。
登壇したのはアイスホッケーのイェスパー・ヤロネン(31歳/日光アイスバックスアシスタントコーチ、父のユッカは元代表監督)、バスケットボールのラッシ・トゥオビ(38歳/横浜ビー・コルセアーズヘッドコーチ)、バレーボールからはカスパー・ヴオリネン(41歳/東京グレートベアーズ監督)、そしてフィンランドを含む海外でのプレー経験が豊富な野瀬将平(32歳/東京グレートベアーズチームスタッフ)という4人。現在に至る足取りの紹介から始まって、日本のスポーツ界の印象、文化や社会の特徴に基づいた選手たちの違いや共通点など多様な観点から議論を交わし、それぞれの経験を踏まえた指導論にまで話は広がっていった。
フィンランド人は総じて関係性がフラットである一方、日本社会は年功序列で上下関係が重視されるなど、文化的な違いは確かに存在するほか、プロセスを重視する、非常に細かい部分にこだわる、といったところも彼らにとっては日本人の特徴として認識されている。逆にフィンランド人と似ている部分としては、ハードワークする、時間に正確、信頼できる、チームファースト、などのポジティブな要素が上がっていた。
じゃんけんで物事を決める場面を挙げたのはカスパー監督。「フィンランドでは勝った人を選ぶ。日本は、負けた人が選ばれる。誰が勝つ、ではなく誰が負けるか、というカルチャーがある」。もちろん、ほかにもさまざまな事例があり、そういった些細な場面を積み重ねるなかで特徴をつかみ、一人一人の選手やスタッフ、チームに対応していくことは、どんな指導者にとっても欠かせない営みだろう。野瀬氏は彼の指導について「日本人の特性を理解した上で指示しており、わかりやすい」と率直に実感を述べる。
北欧への、興味の入口として
バレーボールでは今季よりトーマス・サムエルボ(49歳)が大阪ブルテオンの監督に就任しているほか、2021年まで4季にわたってウルフドッグス名古屋を率いたトミー・ティリカイネン(38歳)もフィンランド人である。こういった指導者たちについて野瀬氏は「若い監督が多い。現場感覚に加え、コーチング学としてコミュニケーションや指導論を体系的に学んでおり、柔軟に理解・対応してくれる」と話し、気質を含めた多くの面で日本人に合っていることが、現在の状況につながっていると推測していた。
その後も話は尽きなかったが、限られた時間の中で今回、何か明快な結論が得られたわけではない。むしろ、より興味深い議論への可能性が開かれたと言えるだろう。フィンランドは人口わずか約560万人。サウナやムーミンくらいしか知らない、という人も少なくないと思われるが(オーロラも有名)、成熟した教育制度や社会システムを誇り、国連の世界幸福度ランキングでは(2018年から8年連続)1位、男女の格差が少ない国2位など、北欧の「先進国」としての側面にも目を向けることで、指導者に限らず、学びの機会としてみてはいかがだろうか。
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