東福岡高(福岡)の体育館が、約4,500人の大観衆による熱狂の渦に包まれた。6月13日、同校の学園祭の一環として開催された特別招待試合「現役vs. OBオールスターズ」。コートには、インターハイを間近に控えた現役チームと、SVリーグやVリーグで活躍する同校OBたちが集結した。過去に全国高等学校総合体育大会(インターハイ)を1度、全日本高等学校選手権大会(春高)は3度制して全国にその名を轟かせる九州の雄。数々のトッププレーヤーを輩出してきた名門だからこそ実現した、世代を超えた特別な勝負の幕が上がった。
初の試みとなったOB戦
トップリーグで戦う先輩たちが技術を披露
例年は九州の強豪校や大学チームを招いていた学園祭の招待試合に、トップリーグで戦うOBが一堂に会するのは初の試み。発起人の藤元聡一監督は、「ちょうどリーグが閉幕したタイミングだったので、ひとまずお願いしてみようと思ってご連絡したところ、各球団のGMの皆さんが快諾してくださり実現しました」と経緯を語る。
試合は3セットマッチで行われ、いずれのセットも若さあふれる現役チームが先行する展開となった。しかし、ここで立ちはだかったのはトップ選手たちの壁だ。巧みな攻守で猛追するOBチームが第1、第2セットを連取。第3セットに入ると、OBチームは東福岡高の黒いユニフォームを着用して登場。さらに、観戦に訪れていたほかのOBたちも入れ替わり立ち替わり飛び入り参戦し、お祭りムードに拍車をかけた。先輩たちが力強いスパイクや精度の高いディフェンス、マイクパフォーマンスで会場を沸かせるなか、最後は現役2年生の種田力が連続得点を決めてセットを奪取。大盛況のゲームを締めくくった。
主将不在の危機を経験値に
先輩のパワーに触れて現役が誓う「夏の日本一」
試合後、藤元監督はかつての教え子たちの雄姿を振り返って、次のように語った。
「午前中には毎年行っている小学生対象のバレーボール教室にOB陣も参加してくれました。彼らはプロ選手という自覚を持っているので、エンタメ的な要素も含めた盛り上げ方や表現ができる。その様子を見て『表現者になっているのだな』と思いました。このバレーボール教室や招待試合は金子聖輝(広島TH)が3年生のときに始めたのですが、当時は会場もシーンとしていて。私は試合中に、技術的なことはそっちのけで彼らに『小学生が目を輝かせるような雰囲気をつくってみろ!』と話したことを思い出しました。でも、今日は金子がいちばん盛り上げてくれていましたので、立派になったなと感慨深かったです」
その金子は、1年生時からエースとしてチームを引っ張り、2年生では高校三冠、3年生時には春高連覇を経験しているレジェンドの一人。後輩たちとネットを挟んだ感想を聞くと「パスが返ったら全然止まらないし、ブロードや時間差攻撃などコンビも複雑で、プロでもてんやわんやになりました。こちらは身長があって高さで勝負をしていますが、最後はブロックの指先を狙うなど、細かなところでしのいで決めていく技術は高い。今日が、インターハイに向けてよいきっかけになればと思っています」と笑顔で答えた。
先輩たちが感じた頼もしさとは裏腹に、現役チームの表情には悔しさがにじんでいた。エースでキャプテンの比嘉晃跳が右足首の負傷により欠場し、代わりにチームを引っ張った3年生の吉塚栄大は「間近で見ると体の大きさが全然違いました。ボールがとても重かった」と、先輩たちのパワーを実感していた。さらに、試合内容に関しては「楽しかったですが、チームとしてはよくなかった」と唇をかむ。「こういった機会は当たり前にあるものではなく、成長できるチャンスなのに、雰囲気にのまれてしまって自分たちの最高のパフォーマンスができなかった。『ここで引いたら負けるんだな』とわかったので、この経験を生かして、インターハイでは(相手を)全部押して日本一を取りたいです」と、悔しさの中から得た経験値と覚悟を口にした。
中高時代から続くホットライン
近藤蘭丸と柳北悠李が久しぶりのコンビ結成
今回、急造チームにも関わらずナイスコンビを見せたのが、セッターの近藤蘭丸(東京GB)とアウトサイドヒッターの柳北悠李(広島TH)だ。1学年違いの二人は出身中学校(板櫃中)も同じで、長くコンビを組んでいた経歴を持つ。近藤は、久しぶりに柳北へトスを上げた感想をうれしそうに語った。
「(柳北)悠李さんと4〜5年一緒にやっていましたが、大学は別(柳北が東亜大、近藤が明治大)だったので期間は空いていました。でも、今試合をしてもパッと合う。ほんとうに彼にずっと上げ続けていたのだなと実感しました。自分としても、(柳北は)いちばん頼りになるエースなので、今日はトスを上げることができてほんとうによかったです。3セット目の最後は悠李さんに託そうと思っていたら、悠李さんも『持ってこい!』と言ってくれたので、とても懐かしい気持ちになりました」
柳北も「長い間合わせていなくても、感覚的に合うところは打ちやすかったです」と同調。阿吽の呼吸を見せた。
また昨年、教育実習で母校を訪れていた近藤は、練習にも参加し、同じセッターである吉村蓮の指導にも当たっていた。
「彼の改善すべき点は藤元先生から指摘されていますし、僕もそれを知った上で、一緒に練習して改善させてあげようと思って指導してきました。これからインターハイもあるため、ここで手の内を話すのは控えます。でも、今教えていることができるようになれば、彼の可能性はほんとうに広がると思うので、僕自身すごく楽しみですし、頑張ってほしいと思います」と近藤は後輩へエールを送った。
今年5月のインターハイ県予選決勝では、福岡大附大濠高に2-0(26-24、25-23)でリベンジを果たし、3年連続16回目となる夏の全国大会への切符を手にした東福岡高。偉大なOBたちの胸を借り、ハイレベルな世界を肌で知った若きチームが、12年ぶり2度目となる夏の頂点を目指す。今年のインターハイ男子は8月4日(火)に京都府で、女子は8月3日(月)に滋賀県で幕を開ける。熱い夏は、もうすぐそこだ。
取材・文/フジサキヒロ
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