観戦記『イタリア男子/この深き愛に包まれて』
- コラム
- 2018.10.10
現地9月30日に閉幕した『男子世界バレー2018』。“自国開催での優勝”を目指した、開催国イタリア・アッズーリ(※)に注がれた愛の形とは。現地取材班の観戦記
※アッズーリ:イタリア代表の呼称
■観戦記『イタリア男子/この深き愛に包まれて』
9月9日、屋外競技施設『フォロ・イタリコ』で行われた開幕戦
9月9日、イタリアはローマ。男子世界バレー2018開幕戦は、インドア競技を屋外競技施設で実施するという、それだけでも“特別”なものだった。
足を運んだファンは試合前から、明らかにその興奮を隠せずにいた。その熱も、イタリア男子がコートに姿を現した瞬間からさらに上昇していく。試合前のアップから、入場時、国歌斉唱、試合が始まり、1点が決まり、そして、勝利に近づくごとに。限界を知らぬボルテージが、会場を支配した。
それは、世界一決定戦に臨む代表チームへの、人々の思いを純粋に表していた。
『なぜなら、イタリアだから。私たちの、世界バレーだから!』(本誌連載コラム『World Today』<文/ジャン・ルカ・パシーニ>より)
イタリア男子を率いるジャンロレンツォ・ブレンジーニ監督がそう声を上げた、壮大な夢を懸けた“特別”な大会はここに幕を開けた。
イタリアが誇るスーパースター、イバン・ザイツェフ
チームとファンとの触れ合い
2016年リオデジャネイロオリンピックで銀メダルを獲得したイタリア男子は、フランスやアメリカに匹敵するほどの、スター選手ぞろい。イバン・ザイツェフ、オスマニー・ユアントレーナ、シモーネ・ジャネッリ…、アイドル顔負けの甘いマスクを持ち合わせる彼らに、ファンはハートを鷲掴みにされている。黄色い声援が飛び交い、それは若い女性だけではない。子供から老人まで、男女問わず、代表選手に憧れ、張り裂けんばかりのエールを送っているのだ。
中でも、ザイツェフは、現在のイタリアの顔ともいえる存在で、国内のメンズ雑誌の表紙を飾り、本屋には自伝が並んでいる。ミラノの2次ラウンドでは、試合前のアップでスクリーンに観客席にいるファンの姿が映し出された。一人の若い女性は、『SPOSAMI(=私と結婚して!!)』と書いたハリセンを掲げた。続いて、その映像を見て、照れ笑い(苦笑い?)を浮かべるザイツェフが映し出され、彼が親指を立ててサムアップをすると、もう会場は興奮のるつぼだ。
試合が終われば、ザイツェフはインタビューに応え、控え室へと姿を消す際には着ていたユニフィームを脱ぎ、スタンドに投げ込む大サービス。どれだけハートを射抜けば、この男は済むのだろう。
ただ、こうしたファンとイタリア男子が受け答えをする姿はもはや日常風景だった。握手、サイン、スマートフォンでの自撮り、喜んで!! スタンドから最前列に駆け寄ってくる観客だろうと、ボランティアの子供たちだろうと、時間を尽くす。疲れた表情は確かに見せているのだが、それでもできる限りは応える。
自国開催ということもあるだろうが、選手は勝利はもちろん、こうした触れ合いで感謝の気持ちを還元していた。
子どもたちは小さいころから、スター選手たちにこれほどされたら、それはもう好きになってしまうだろう。シンプルなことだ。
試合後、セルフィーに応えるジャネッリ