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【プレイバック!】エース木村沙織、MVP荒木絵里香 東レが4度目の優勝【2011/12シーズンVリーグファイナル】

東レ

2011/12V・プレミアリーグファイナルを月バレ2012年5月号で振り返る

 

 V・レギュラーラウンド優勝チームとV・ファイナルステージに進出する最後の1チーム、どちらもが最終戦で決まるほどの混戦だった2021-22V.LEAGUE DIVISION1 WOMEN。いよいよ4月9日(土)より始まるV・ファイナルステージでクライマックスを迎える。

 

 その前に、過去の月バレ誌面からVリーグファイナルを振り返ってみよう。今回は月バレ2012年5月号から、東レアローズ対久光製薬スプリングスというカードだった2011/12V・プレミアリーグファイナルを振り返る。

 

【2021-22V・ファイナルステージについてはこちら】

 

 2011/12シーズン、東レはレギュラーラウンドを18勝3敗で1位通過した。全日本の主力も務めるエースの木村、そして荒木を中心に迫田、濱口、中道らが力を発揮し、セミファイナルラウンドは負けなしでファイナルに到達。前年、東日本大震災の影響でシーズン途中打ち切りにより4連覇を逃し、その雪辱に燃えるシーズンだった。

 

 対する久光はレギュラーラウンドではリーグ1位のサーブレシーブ成功率、同3位のブロック決定本数(セットあたり)という安定したディフェンスを武器に2位通過。石田、新鍋、座安、岩坂ら若い選手たちが先野、原らベテランが抜けたあとをつなぎ、5シーズンぶりの優勝を目指した。そんな両チームの対決を報じた月バレ2012年5月号の記事を見てみよう。(編注:文中の所属・チーム名は当時のまま)

 

【当時の誌面や木村沙織、荒木絵里香、迫田さおりらの写真を振り返る】

 

月刊バレーボール2012年5月号掲載

 

2012.3.24 女子決勝戦

東レが頂点奪回! 久光製薬の反撃を許さず

 

東レアローズ 3-0 久光製薬スプリングス

(32-30, 25-16, 25-22)

 

 女王復活。東レは全日本の主力メンバーを軸に、新戦力も存分に役割以上と言える活躍を果たした。

 

 ファイナルでは、石田や新鍋らバランスに優れるサイド陣をはじめ、高いレシーブ力を武器に上り調子の久光製薬と激突。勝負の1セット目は、セッター古藤が的を絞らせない攻撃を演出して久光製薬が走りかけるも、東レは中盤で連続得点。その後、ジュースにもつれ込んだ大激戦は30-30という局面を迎えたが、ここで迫田のサーブと、最後は木村のスパイクが決まった東レが奪い取った。

 

 2セット目以降もカギになる場面でリベロ濱口がよくチームを支えると、今季これまでもうひとつ調子の上がり切らない面があったエース木村も、要所では確実に欲しい得点を決めるさすがの活躍で、久光製薬を押し切った。

 

 ここ5年で4回目となるファイナルの舞台で、東レは負けなしの強さを発揮。「何回味わっても、いいもの」(荒木)という4度目の栄冠に酔いしれた。

 

【次ページ】2年ぶり4回目の優勝を果たした東レ

 

東レ強し! 5シーズンで4回目のV

女子優勝東レアローズ(2年ぶり4回目)

 

シーズンを通して、黒星はわずかに3つ。しかし、それらの負けを東レはおろそかにしなかった。自分たちの甘い部分から目をそらさず、「どこよりも戦い方を知っている」決勝の舞台で勝利するために、一人一人が役割を理解し、それをまっとうしきった。

 

敗戦をムダにすることなく全員が役割を果たす

 

 全日本の主力である荒木、木村を軸として、中道や迫田、濱口ら頂点を知る強力なメンバーが周囲を固め、高田や二見ら、新しい力もそれぞれが持てる力を発揮してチームに貢献した。

 

 東日本大震災の影響で中止となった昨季は2位。“史上初の4連覇”を逃した、その悔しさを忘れることなく、レギュラーラウンド、セミファイナルラウンドは苦しみながらも首位で戦い抜いた。

 

 「レギュラーラウンドは18勝3敗で、結果的には1位で走ったように見えますが、ほんとうにその力があったとも思っておりませんし、落とした3戦ではチームの雑な部分やミスなど、弱いところが出ていました」と菅野監督は振り返る。

 

 5年前の初優勝時は今季デンソーにいたデラクルス、その翌年は中国の趙という、いずれもレベルの高い外国人エースがいたが、その2シーズンの間に、現在の主力たちも勝ち方やチームの作り上げ方をしっかり吸収し、学ぶことができていた。ファイナルを戦えなかった昨年は連覇が途切れたものの、今季は全日本メンバー抜きで戦った昨秋の山口国体で優勝。若手の底上げもあり、やはりこの大一番で発揮された実力に間違いはなかった。

 

 今季1つのカギとなったのは、フリールの加入によるサイドの人選である。当初は迫田が新たにサーブレシーブに取り組みながらレフト木村の対角に入り、フリールはオポジットを務めていたが、チーム全体により安定感を求める中で、迫田と高田が交代となった。

 

 ディフェンス力に優れる高田と木村の対角は機能していたが、フリールは仲道が上げる速いトスを打つタイプではなかったため、苦戦する場面もあった。それでも、「いつでもいけると思っていた」(菅野監督)という迫田を控えに置く安心感の中で、次第にマッチしてチーム力は向上。結果的に途中出場の多かった迫田は「途中からでも出させてもらうことに感謝していましたし、せっかく出るからにはどんな形であってもチームに貢献していきたい、と思っていました」と素直な活躍で勝利を引き寄せた。

 

 フリールが故障欠場したセミファイナルラウンド以降はその迫田がオポジットに入り、さらに大詰めの場面では「今は相手にもプレッシャーになると思った」(菅野監督)という1年目の二見をミドル宮田に代えて投入した。そうなれば、役者ぞろいの先輩たちに迷いはない。荒木が止めれば濱口が拾い、中道がつなげば木村が決めて、結局2月12日、パイオニア戦での敗戦を最後として、東レはその後の全試合を勝利で飾ったのである。

 

 今季はケガでの途中出場もあり、なかなか調子が上がらなかったエース木村。決勝戦の1セット目、23-20とリードしながらスパイクミスと被ブロックでピンチを招いた自覚は試合後も残っていた。

 

 「自分が1回で切っていれば、なんてこともない場面だったので、とても反省しています。でも、ああいう状況に立ってしまった時に『絶対に自分たちならできる、勝てる』と、全員がチームで仲間を信じることができていたので、勝てたのかなぁ」

 

 そう話した木村は今季、レギュラーラウンドでサイドのトスを速くして打っていた。しかし納得のいかない部分があったため、セミファイナル以降は以前どおりの高いトスに戻し、相手ブロックを見て打つようにした。3セット目の最後、25点目は相手ミスだったが、その前の3得点はすべて木村が決めている。

 

「これからオリンピック予選もありますが、しっかり自分の持っているものを伸ばしていけるように頑張ります」

 

 黄金時代へ。東レの、そして日本の大黒柱が笑顔で締めくくった。

 

【次ページ】最高殊勲選手賞に選ばれた荒木

 

“チーム全員がレベルアップして最後は1つになれた”

 

最高殊勲選手賞 荒木絵里香

 

4年ぶり2回目の最高殊勲選手賞。前回の受賞時とは異なり、今回は「驚いています」と繰り返す荒木だが、特にクイック、ブロックでの存在感は大きく、パフォーマンスの面だけを見ても受賞資格は十分と言える。さらに、練習や試合前など、ふだん外から見えない部分でもチームのための貢献を惜しまない姿は、まだまだ若いながらも、“キャプテンとして”という枠を超え、貴重な財産として東レの後輩たちへと刻まれていくに違いない。

 

「今回は(賞を)いただけたことに驚いています。前回は、自分が『やってやった』みたいな感じでしたが、今回はそんなにいいパフォーマンスができたとは思っていませんし、自分よりも、ほんとうにチーム全員の力がレベルアップし、個人の力を出し切れて優勝できたと思いますので、そういう意味では、その中で代表していただいただけだ、と受け取っています。

 

 本当に一番、陰で頑張ってくれているのは中道だと思います。彼女がほんとうに、チームの中ですごくいろいろなものを背負いながら動いてくれています。ミチ(中道)にはとても感謝しています。

 

 今季3レグしかなかったことで、どうといった部分はあまり感じませんでしたが、流行りシーズン途中で(木村)沙織がケガをして抜けたり、最後はマノン(フリール)がプレーできなかったり、という中でも、戦力的には落ちることなく、みんながレベルアップして戦えていたことは、このリーグの大きな収穫だと思います。

 

 マノンもどんどんパフォーマンスが上がってきており、チームにとてもいいエネルギーを持ってきてくれる選手でしたが、ケガしてしまって、その分はリオ(迫田)がほんとうに活躍してくれました。セミファイナルはリオのおかげで勝ったゲームだったと思います。

 

 ミドル線も、あず(二見)や出場した選手がみんな活躍しました。和田はケガしてしまったのですが、彼女も含めてしのぎ合っていますし、チームの中でそういう争いができるのはとてもいいことです。全体としてレベルアップしている結果だと思います。以前は沙織頼みで、沙織の力で勝っていたゲームがとても多かったのですが、そういう試合が少しでも減らせてきているのではないかな、と思います。私もしっかり頑張ります(笑)

 

 逆に言うと、チーム力というよりも、各個人のスキルで何とかして勝ててしまったゲームもありました。そういう意味で、最後のセミとファイナルは個人の技術だけでは勝てませんので、もう一回チームとして“1つになって戦う”と言う部分が大事でしたが、そこができたことが、優勝できたポイントだったと思います」

 

【次ページ】今シーズンのファイナルの行方

 

 

 今回は月バレ2012年5月号に掲載された2011/12V・プレミアリーグ女子ファイナルを振り返った。

 

 今季も手に汗握る熱戦が予想されるV・ファイナルステージ。現在2連覇中のJTマーヴェラスに、昨季準優勝だった東レアローズ。そして皇后杯ではJT、東レに勝利して優勝を飾った久光スプリングス。どこが優勝してもおかしくない。4月9日より幕が上がる最後の舞台に注目だ。

 

【2021-22 V.LEAGUE DIVISION1 WOMEN V・ファイナルステージ】

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【動画】V・ファイナルステージに向けた出場争いを動画で復習

 

 

 

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