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富田将馬を支えた恩師の存在。中学に部活がなかった少年をつなぎとめた2人だけのパス

  • V1
  • 2022.06.27

<サーブにも磨きがかかり、コート上ではオールラウンドな活躍を見せる>

 

めきめきと上達したレシーブ力

 

 日によっては体育館に足を運ぶと、渡邉さんと富田しかおらず、8時頃になっても「誰もこないね」と笑っては2人でボールをつないだ。できることといえば対人でのパスがもっぱら。ネットを張っていたため、サーブもスパイクも練習することはできたが、レシーブ練習にいちばん時間を費やした。

 

「言われたことを言われたようにやるので、どんどんレシーブはうまくなりました。そのときの基礎が今につながっている、と私が言うとおこがましいですが、最後は大人たちの見本になるくらい。それほど上達しました」と渡邉さん。レシーブのポイントを聞くと、「まずは上目遣いでボールを見ること。すると、落下点に入れます。そして、最初は手を動かさないように」とのことで、それは富田が今も、基本に立ち返るときに大事にしていること。

 

 2021-22 V1男子のレシーブ賞受賞者は、「とにかくボールの下に早く入って、あとはセッターに対して、腕の面をしっかり作れば、ボールが返ります」と語るものだ。

 

<2021-22 V1男子で自身初のレシーブ賞に輝いた>

 

東レ、そして日本代表の姿を見て

 

 そんな関係は2年間続き、中学3年生時に富田はアローズジュニアに入団。やがて富田はさらに成長し、恩師の元に帰ってくる。そこには“師弟関係”ではなく、年齢を隔てた“友情関係”があった。そのときの様子を振り返る渡邉さんの声のトーンが上がる。

 

 「大学時代もユニバーシアード代表に選ばれた際に、東レアローズに合宿にきたことがあって。日の丸のついたユニフォーム姿で一緒に写真を撮りました。

 

 私はいつもアローズジュニアの選手たちに言うんです。チームを卒業した時点で、『指導者と選手』ではなく『仲間』になるんだ、と。将馬に関して言えば、僕が彼のいちばんのファンだと思っていますから(笑)」

 

 かつて、夜の体育館で2人きりでパスを行い、ジュニアチームのユニフォームを着ていた少年が、今はトップチームのユニフォームを着てコートの上で躍動している。東レのホームゲームの運営に携わる中、渡邉さんはその姿を見たときに胸が震えた。

 

 「夢が一つかなった瞬間でしたから。将馬のプレーを見たときに、もう涙が止まりませんでした。素晴らしい選手になったな、って。

 

 彼の魅力はやはりレシーブとサーブ。その強みを発揮して、日本を引っ張ってもらえるような存在になってほしいです。石川祐希選手のようなスターにはまだまだ及ばないのかもしれませんが、縁の下の力持ちとなる、チームにとって絶対に必要な選手として日本を背負ってもらいたいです」

 

 いつだって見守っている。そして、これからも夢はふくらむばかりだ。

 

<今年のFIVBネーションズリーグでシニア代表として国際大会デビューを飾った(写真:FIVB)>

 

(取材・文/坂口功将〔編集部〕)

 

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