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SVリーグ2024-25

駿台学園高の梅川大介監督はなぜ大阪Bのアカデミーに? 日本の育成の可能性と、これからの駿台学園高との関わりについて「まずはやってみることを大事に」

  • クラブ
  • 2025.04.18

駿台学園高(東京)の梅川大介監督が、41日からSVリーグ大阪ブルテオンのアカデミーダイレクターに就任することが発表された。今年の春高で春高3連覇、全国三冠に導いた名将は、なぜ新たな道に進むのか。3月下旬に開催された全国私立高等学校男女選手権大会(さくらVOLLEY)の会場にて、その思いを語った

 

 

さくらVOLLEYではコーチとしてベンチに入った梅川前監督(写真:中川和泉)

 

 

バレー界のために

選択肢を増やす

——今大会は監督ではなくコーチとしてベンチ入り(監督は2024年度からコーチを務めた高橋真輝)。どんな思いで臨んでいますか?

 最後だからどうこう、という思いはないです。今後もある程度携わっていくつもりですので。まあ、いなくてもちゃんとやれよ、という気持ちです(笑)

 

——次のステップについてはいつから考えていましたか?

 いろんな話があって、どこかタイミングがあれば、とは思っていましたが、決断したのは今年の春高が終わってからでした。

 

——春高3連覇、全国三冠を飾り、やりきった思いも強かったのでしょうか

 やりきった気持ちもありましたし、リオ(松永理生サントリーサンバーズ大阪アシスタントコーチ※)がああいったかたちで上のステップに進んで。バレー界を見たときに、僕はどちらかというとアンダーカテゴリーを重視したいと思っていたので、そういったことも考えました。(大阪Bのアカデミーでは)まだU18はありませんが、U15で教えた子どもたちが高校でどうなるのかを見るのもおもしろいと思いますし、バレー界にいろんな選択肢が増えるようにしたいと、少しでもバレー界が盛り上がっていければと感じました。

 

※昨秋に東山高(京都)の監督を退任し、今年2月から新たな道に。梅川監督とは同級生

 

——松永さんはその先の夢も持たれていると思いますが、梅川さんはアンダーエイジカテゴリーを重視されているのですね

 リオは上にいってトップを引っ張ればいいと思いますし、そこは任せた、ではないですけど(笑) 自分はどちらかというと下の土台、U15から欲を言えばU20までをどう強化していくかが今後の日本の課題だと思います。

 

 中学校の部活が厳しくなっていくなかで、日本でも指導者がクラブで食べていけるようにならないといけないと思っていて。そうすれば指導者が増えるし、チームが増えれば選手が増えると思います。ゆくゆくはそれがトップの強化にもつながるという考えもあります。

 

 今の駿台(学園高)の生徒たちに「将来は何がしたいの?」と聞くと、バレーしかやってきていないこともあり、「バレーに携わりたいです」と言います。でも、今はプレーヤーとして生きていくか、教員として部活の指導をするかのほぼ二択しかありません。クラブの指導者でちゃんと生活が成り立つのであれば、指導をしてみたい子はもっと増えると思いますが、現状はそうではないので。そういったクラブの組織づくりがあってもいいと思っています。

 

 高校男子はほんとうにいい先生方が熱量を持ってやっているため、いい循環だったと思いますが、すでに中学にクラブチームが参入し、ゆくゆくは高校でもクラブが参入するかもしれないとなると、今後は過渡期になると思います。その中で、さまざまな選択肢があったほうがいいと思っています。先日イタリアに行かせてもらって、課題はそこかな、って。今後、日本が世界と戦うためには、クラブのあり方、経営、U18からU20のアンダーエイジカテゴリーの指導、そしてU15以下の普及が課題だと思いました。

 

 

今年の春高準々決勝を終え、対戦した近江高(滋賀)のスタッフ陣と笑顔を見せる梅川監督。さまざまなチームの指導者と切磋琢磨してきた

 

 

——日本とはさまざまな違いがあると思いますが、現地での発見はありましたか?

 試合に出られなかったら、試合に出られるところに移籍したり、経験を積ませるシチュエーションがあったほうがいいと思っています。日本の場合は学校に縛られるため移籍はできませんが、向こう(イタリア)はクラブなので、下のカテゴリーからレンタル移籍があります。

 

 ここ(さくらVOLLEY)に出場するチームは(部員が)20人オーバーぐらいが多いですよね。ここでチームを応援することも大事かもしれないけど、例えば試合のあとにBチームの選手たちがユニフォーム着て試合をする、またリーグ戦の導入といった取り組みも大事だと思います。皆さん、毎週末どこかで練習試合を組まれて試合していると思うので、それをリーグ戦にして、いろんな選手にユニフォームを着させて試合をすることが大事だと考えています。

 

 またこれは日本で急に変えられないとは思いますが、イタリアは2年縛りで組まれていて、小さいときからゲームキャリアが全然違うと感じました。僕たちも見ていて思うのは、高校3年生と高校1年生では体格差があります。そう考えれば中学3年と高校1年で試合があってもいいし、クラブだったらレンタル移籍して試合に出てもいいと思います。

 

 関東大学男子1部リーグが若手を出す試合(Sprout Camp)を315日、16日にしていましたが、ああいった取り組みがもっとあっていいと思います。例えば、Vリーグに大学12年生の選抜チームを参入させたり。いろんなことをやるだけやってみて、ダメだったら変えればいいんじゃないかな、って。日本はどちらかというと、そもそもやらない保守的なところがあるので。そういった取り組みをやっていけば、もっとおもしろくなって、伸びる子たちが出てくるのかなと思います。

 

——大阪Bのアカデミーでは、どんな指導をしたいですか?

 やらされるのではなく、自分で考えて取り組むことは継続し、データバレーとはどんなものなのかを理解したり、栄養学や筋力トレーニングに若いうちから取り組むことで、その子たちが10年後にどうなるのかが楽しみです。また、アンダーカテゴリーでは勝敗に関係なくバレーボールを楽しみ、バレーボールの醍醐味である駆け引きなどができる子どもたちを多く育てたいと思っています。体育館に来るのが楽しみでしかない、子供たちが目が輝いているクラブにしていきたいと思います。

 

 今回、川野(琢磨〔駿台学園高→早稲田大1年〕※)が海外に行かせてもらったのはほんとうにありがたいことでした。目先の1、2年では結果は出ないかもしれませんが、石川(祐希〔ペルージャ/イタリア〕)君が19歳でイタリアに渡ったところを、川野はその1年早く渡ったことが、78年後のキャリアにどう影響するのか。向こうでゲームに出られたかというとそうではないですし、球拾いの時間が長かったのかもしれませんが、あのレベルでやることは非常に大事。答えはわからないけど、とりあえずやってみることが重要だと思ったので、僕自身もまずはやってみることを大事にしたいです。

 

※今年の春高で最優秀選手賞に輝いた身長197㎝のアウトサイドヒッター。U21日本代表候補として、1月下旬から約2ヵ月イタリア・セリエAのピアチェンツァで武者修行した

 

 

早稲田大に進み、早速リーグ戦デビューを飾った#21川野

 

 

継続して

駿台学園高もサポート

 

——駿台学園での10年間は、どんな経験になりましたか?

 指導者としていろんな生徒といろんなことをやらせてもらいながら、いいキャリアを積めて。生徒たちにはほんとうに感謝しています。その子たちが今、SVリーグや日本代表で活躍してくれているので、指導者のおもしろみを感じられたかな、と思います。今度は駿台という枠ではなく、バレー界がどういう風になっていくのかを考えたほうがいいのかな、と。自分がきっかけでクラブに行く指導者が増えるのもいいし、いろんなあり方があっていいと思います。

 

——これから駿台学園高にはどう関わっていくのでしょうか?

 学校側からもある程度の継続指導を依頼されているので、月に何回かは学校に行って指導をします。今はオンラインでも(指導が)できるので、常に映像を送ってもらうようにします。土岐(大陽コーチ)と自分でうまくフォローをしながら。全国大会ではもしかしたら3人ともベンチに入るかもしれません(笑)

 

 高校でやっていたことを小中学生に、逆にいえば日中は時間ができるのでトップで見ていることを高校生に(教える)、ということができると思うので、駿台としてはマイナスというよりは逆により高い指導が受けられると思います。あとはもうバレーしかやらないので、いろんなことを彼らに教えたり、データをつくる時間ができると思うので、生徒たちにはマイナスに感じる必要はないよ、と言っています。

 

——教え子でもある高橋新監督にはどんな思いを託したいですか?

 プレッシャーはあるかもしれませんが、失敗を恐れないで好きにやればいいと思います。言う人は何をやっても言うので(笑) そんなことを気にしても仕方がないです。僕がやってきたことを守らないといけないことはないので、自分の、若い人の感性でやってほしいですね。もちろん、もっとこうしたほうがいいんじゃないの? ということがあれば伝えます。

 

 土岐も含め、2人とも教え子で仲がいいので。いろんな人が協力して、チームができるのが駿台。一人がやるというよりは、いろんな人からアドバイスを受けながらやっていければと思います。

 

——東京生まれですが、大阪での生活はいかがですか?

 初めてですね。3月末に引っ越しますが、それもチャレンジですよね。関西圏で生活してみて、新たな土地でどんな感覚になるのか。いろんな人の考えを知って、どんな思いが生まれるのか。何をしても楽しみです。

 

——梅川さんの「ブルテオンポーズ」が見られるかもしれないですね

 そうですね(笑) でも、僕は基本的にトップには関わらないと言っているので。

 ただ、この間、(選手に)会ったときは緊張しましたね。西田(有志)君たちのことも知っているから、「マジで来たんですか」「やばいですね」みたいに言われて。「トップがへまをしたらアンダーにも影響するから、負けたら(練習に)行くからな」と言いました(笑) 新たなチーム、楽しみですね。

 

 

今春卒業した3年生とともに、新たなステップに進む

 

 

うめかわ・だいすけ

1982年2月9日生まれ。駒形中→東亜学園高(ともに東京)→大東文化大。NECレッドロケッツでコーチとアナリストを経験し、2014年に駿台学園高の監督に就任。昨年度は初の春高3連覇、そして16年度以来の全国三冠に導いた

 

取材/田中風太(編集部)

写真/山岡邦彦(NBP)、中川和泉、編集部

 

駿台学園高も出場したさくらVOLLEYの模様は、好評発売中の月刊バレーボール5月号をチェック

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