地元インターハイに臨む就実高を豪華OGが激励 西畑監督は「今までやってきたことを全部出す」
- 高校生
- 2025.08.07
令和7年度全国高等学校総合体育大会バレーボール競技大会(中国インターハイ2025女子)が8月5日(火)に岡山県で開幕した。地元を代表する強豪である就実高(岡山)は、7月6日(日)に同校の体育館でOGと練習や練習試合を行った。およそ40人の卒業生からの激励を受け、選手はもちろん、西畑美希監督も大舞台への思いを強くした
参加したOGと現役生で記念撮影
伝統の3人レシーブで
問われた「就実バレー」
年末年始でもないのに、就実高の体育館には卒業生が帰ってきていた。地元で行われるインターハイを1ヵ月後に控えた7月6日。西畑美希監督が就任後、初めて全国大会のメダルを獲得した小川愛里奈(大阪MV)や兵頭由希(元デンソー)の代から、昨年度の国スポで日本一に輝いた福村心優美(大阪MV)の代まで豪華な顔ぶれがずらり。大舞台に臨むチームを励まそうと、井上凜香(筑波大2年)、岡崎杏(桜美林大2年)が声を上げて集まった。
久しぶりの再会に頬を緩ませながらも、いざ練習が始まれば体育館は緊張感に包まれる。午前中のメニューはどの世代でも土台をつくった3人レシーブが中心。すると、練習を見守るOGたちも高校時代のような真剣な表情に。現役生がボールを追う姿勢に、先輩たちからは次々と指摘の声が飛ぶ。かつては西畑監督の厳しい球出しに食らいつき、ときには反骨心をむき出して立ち向かった選手たち。練習を止めながら、代わる代わる先輩たちが「就実バレー」の真髄を説く。
「ほんとうに勝ちたい?」
「最後までボールを追って、気持ちでバレーをするのが就実」
昨年度は、ベストリベロ賞に輝いた2024女子U17世界選手権大会を含む、2度の国際大会を経験したリベロの仙波こころキャプテンは、先輩たちが放つ言葉の重みを受け取った。
「小川さんからは『自分たちはまじめで、それがいい方向にも悪い方向にもいく』と言われました。悔しかったり、腹が立つ気持ちをプレーに出さないと、って。ミクさん(西畑監督)に言われっぱなしだったらいけないし、もっと立ち向かっていかないといけないと言われました。
先輩方の一つ一つの言葉にすごく思いが乗っていて、『やらないといけない』と思いました。今までの時代の練習との違いを言われて、変えていける部分がたくさんあると思います」
仙波こころ(就実高)
西畑監督も、選手たち自身もOGたちとの交流を一つのきっかけにしたかった。現3年生はこれまで2年間の全国大会で5個(6大会中)のメダルを手にしてきたが、それは先輩たちの力なしには得られなかった栄光。1年生時からエースを務めた福村ら力のあるスパイカーが抜け、3年生は最高学年としての姿勢を何度も指摘されてきた。それだけに、先輩たちからの助言はすっと胸に落ちた。
「私が選手たちに言うよりも、あの子たち(OG)に言ってもらったほうが、選手に響くと思いました。伝えられるものは全部伝えてほしいと思ったけど、それぞれが『就実のバレーとは』ということを言ってくれて。私が何か言わなくてもやってくれましたね」
そう語る西畑監督が「びっくりしました」と目を細めたのは、午後に行われたOGとの練習試合だった。
どの試合でも変わらない
自分たちのやるべきこと
相手のサイドには福村、髙橋凪(日本体大1年)、押川優衣(福岡大1年)が入り、ミドルブロッカーには岡崎と髙濱日菜穂(関西学院大3年)。守りの要はリベロの井上が担い、そこからセッター岩本沙希(日本体大3年)が攻撃を展開する。近年の春高の頂点に輝いたメンバーがコートに立ち、西畑監督は「全然歯が立たんかなと思った」と明かす真剣勝負。だが、3セットを戦ってストレート勝ちを挙げたのは、現役チームだった。
「自信になりました」と振り返る仙波キャプテンが感じたのは、3年生スパイカーの気迫だ。
「3人(比留間美晴、牛田音羽、石田恵)とも決めてやろうとか、ほんとうに負けたくない気持ちがスパイクに乗っていて、先輩方のブロックをはじきとばす本数が多かったです。これまでと少し変わったのかなと思いました」
その言葉に、西畑監督も「打つのも拾うのも、今まででいちばんよかった。みんなほんとうに気合いが入っていました」とうずいた。
岡崎(前列左)と井上(同右)が各世代に声をかけ、実現した企画だった(写真は23年度の卒業生と西畑監督で)
大きな刺激を受けた1日を終え、最後は笑顔で記念撮影。「このメンバーでチームをつくりたいと思いました。鍛えちゃるぞ! って」と笑った西畑監督は、頼もしくなったOGたちに感謝する。
「こうやって動いてくれて、ほんとうに卒業生みんながしっかりしたな、と思いました。日々を一緒に全力で過ごしたり、本気でやってきた関係はいつまでもいい。生涯の仲間というか、生涯の宝。だから、うわべだけでなくて、この人たち(現役生)にもそうなってほしい」
基本の大切さや相手に立ち向かう姿勢。そして何より、先輩たちが伝えたかったことがある。岡崎は言葉を託した。
「岡山インターハイだから勝たないといけない、と結果ばかりを考えるのではなくて。自分たちの納得するバレー、やるべきことをしっかりやったら結果が出ると思うから」
近年、全国の頂点に輝いてきた春高ではいつもそうだった。無観客開催で、西畑監督になって初めて制した2020年度も、深澤めぐみ(SAGA久光)、つぐみ(東レ滋賀)姉妹を軸に連覇の重圧を乗り越えた2021年度も、そしてコロナ禍で欠場を余儀なくされ、その思いを背負って戦った23年度も同じ。勝利だけにとらわれない、一貫した強さがあった。西畑監督も原点に立ち返る。
「私たちが今まで結果を出してきたのも、勝とう、勝とうとやってきたのではなくて、『皆さんに感謝を返しましょう』とか、『一生懸命やることで結果がついてくる』ということ。あの子たちが言うように、結果を出そうとするのではなくて、やるべきことをやった先に結果がついてくると思うから。私も今までやってきたこと、知恵、知識をここで全部出す。しっかりと準備します」
インターハイの選手宣誓を務めた仙波キャプテン
8月7日の決勝トーナメント2回戦(相手は京都橘高〔京都〕と川崎橘高〔神奈川〕の勝者)が就実高にとっての初戦。これまでにない数の観客が足を運び、会場は大歓声に包まれるだろう。シード校として出場するため、相手の勢いに押されることもあるかもしれない。だが、できることは変わらない。最高の舞台で、自分たちの全力のプレーを見せる。ただ、それだけだ。
文/田中風太(編集部)
写真/チーム提供
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