「ジャパンビーチバレーボールツアー 2025 第7戦グランドスラム エスコンフィールドHOKKAIDO大会」は9月5日から7日にかけてHOKKAIDO BALLPARK F VILLAGE(北海道)を舞台に開催され、男子ではインドアとビーチバレーボールの二刀流で注目を集める水町泰杜(トヨタ自動車ビーチバレーボール部)がジャパンツアー初優勝を飾った。
自身の誕生日に国内大会初優勝を飾った水町泰杜
その決勝で水町/トーマス・ハートレス(ニュージーランド)組はマーティン・カウファー(ドイツ)/庄司憲右(ハウスコム)組と対戦した。第1セットを21-17で先取し、第2セットは16-13からサイドアウトとなりトーマスにサーブが回ってくるとブレイクを重ねることに成功する。ついには20-13とチャンピオンシップポイントに到達し、優勝に王手を懸けた。いよいよ、その瞬間はやってきた。
これまでのキャリアで何度も見せてきたような“勝利に導くアタック”か。それとも、このあとにサーブ順が回ってきて、この大会の準決勝で直近3連敗を喫していた黒川寛輝ディラン(LIVZON)/長谷川徳海(ハウスコム)組にリベンジを果たしてみせたマッチポイントからのサービスエースを、ここでも決めるのではないか。いずれにせよ、この大会最終日の9月7日に24歳の誕生日を迎えた水町自身が爽快にフィニッシュを飾る、そんな機運は高まっていた。だが、結末は違った。
トーマスのサーブから始まったプレーは最後、庄司のアタックを水町がブロック。ジャッジが下されるまでにやや時間を要したものの、得点のコールがなされて水町が国内大会初タイトルを手にしたのであった。
「タイトはいいブロッカーだからね!!」とペアを組むトーマス
水町自身、第一線でプレーするバレーボール選手としては決してサイズに恵まれてはいない。かといって、ブロックが苦手というわけではなく、むしろ要所で決めるシーンは少なからず。ただトーマスとペアを組んで戦ううえでは、身長が高いほうのトーマスがブロッカーに、水町がレシーバーに回ることがセオリーだ。
実はこの場面、終盤になって水町へブロックを跳ぶように提案したのはトーマスだった。水町は明かす。
「18点目に到達したあたりで、トムさん(トーマス)が『いけ!!』と言ってサインを出してきたんです。僕は『オッケー!!』と返したのですが、最初はそのサインを勘違いしていたみたいで。トムさんが『違う、違う。タイト(水町)がブロックにいくんだ』と。そっちね!! と理解して、ブロックに回りました」
結果的にこれが的中したわけだが、戦術を変えた理由は何だったのか。トーマスは説明する。
「いつも同じリズムでプレーするのではなく、ブロッカーを入れ替えたり、自分たちの戦い方を変えることで相手を揺さぶる。それも戦略の一つです。最後はやや点数も開いていたので、実行することにしました」
決勝という舞台で、そうした戦略を敷けたのもお互いを信頼しているからだ。
「タイトはいいブロッカーだからね!! 跳ぶタイミングがとてもいいんですよ」
その取材の場でトーマスが口にした「グッドブロッカー」という単語を聞き、水町は隣で笑いを抑えきれなかった。
「ノー、アイム、レシーバー!!」(いや、自分はレシーバーだから!!)
それでも、ブロックをチェンジした理由をトーマスが説明したあとには、おどけてみせる。
「ソーリー。アイム、ブロッカー!!」(そうだね。自分がブロッカーだ!!)
すると、トーマスも「アイム、レシーバー」(自分はレシーバーだね)と乗っかる。
そんな爽やかな掛け合いが、このペアの関係性を象徴していた。
(文・写真/坂口功将)
■ジャパンビーチバレーボールツアー 2025 第7戦グランドスラム エスコンフィールドHOKKAIDO大会/最終結果
=男子=
優勝:水町泰杜/トーマス・ハートレス
準優勝:マーティン・カウファー/庄司憲右
第3位:黒川寛輝ディラン/長谷川徳海、石島雄介(ゴッツfamilyクラブ)/上田翔貴(全日空商事)
=女子=
優勝:松本 恋/松本 穏(ともにフリー)
準優勝:石井美樹(ラストウェルネス)/菊地真結(トーヨーメタル)
第3位:柴 麻美(帝国データバンク)/村上礼華(ダイキアクシス)、伊藤 桜(日本通運)/沢目 繭(ミライラボバイオサイエンス)
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