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就実高がキム・ヨンギョン監督率いる韓国チームと対戦 「攻め続けることをベースに」再認識した戦う姿勢

試合を終え、笑顔を見せる就実高とワンダードッグスの選手とスタッフたち

11月15日(土)、16日(日)に全日本バレーボール高等学校選手権大会(春高)の岡山県予選(準々決勝~決勝)に臨む女子の就実高。ベスト4入りしたインターハイから2日後、韓国のテレビ番組の企画でキム・ヨンギョン監督が率いるチーム「ワンダードッグス」と対決していた。国スポでの連覇にもつながった一戦での学びを胸に、まずは春高予選の切符をつかむ

 

 

試合を終え、笑顔を見せる就実高とワンダードッグスの選手とスタッフたち

 

 

韓国のテレビ番組がきっかけ

払しょくしたインターハイの課題

 

 カメラの台数は40台以上、そしてスタッフは100人超え。ベスト4入りしたインターハイから2日後の8月11日。就実高の体育館は、緊迫した空気に包まれていた。反対側のコートで鋭い視線を送るのが、2024-25シーズン限りで引退した韓国のスーパースター、キム・ヨンギョン。西畑美希監督も「うれしいというか、信じられない。バレーをやっていて、こんな日がくるんだ、って」と夢見心地な、特別なマッチアップだった。

 

 この試合は韓国のテレビ番組『新人監督キム・ヨンギョン』の企画で実現。現地のプロリーグで活躍できなかった選手や実業団チームでプレーする選手などがトライアウトで集まり、7月中旬に14人のチーム「ワンダードッグス」を結成した。「4回負ければ番組は打ち切り」という決まりのもと、韓国の高校チーム、同プロチームと対戦してこれまで1勝1敗の成績を残していた。

 

 日本のチーム、その中でも高校生に白羽の矢が当たったのは、漫画『ハイキュー‼』がきっかけになったという。作中で描かれている高校バレーの世界は現実なのかという疑問から、舞台はインターハイが行われる岡山、またその強豪である就実高が対戦相手に選ばれ、話はとんとん拍子で進んだ。

 

 キム・ヨンギョンも足を運んだ岡山でのインターハイで、就実高は第一目標の四強入りを果たした。だが、準決勝(対福岡女学院高〔福岡〕)では消極的なプレーが目立ってストレート負け。仙波こころキャプテンは「全然攻められずに終わってしまった。納得のいくバレーをしようと言っただけなのに、やり切れずに終わってしまったことが悔しい」と涙していた。それから2日後。就実高にとっては、その課題を克服するための戦いでもあった。

 

 

#4仙波こころキャプテン

 

 

 サーブレシーブの乱れや高さとパワーのある攻撃に苦しみ、2セットを続けて落としたが、インターハイでは出番のなかった交代選手たちを中心に反撃。1年生のアウトサイドヒッター内田未実の攻撃が光って第3セットを取り返すと、2-8と点差をつけられた第4セットはサウスポー打田理央菜のサーブで追い上げる。5本のサービスエースを含む7連続得点でひっくり返し、試合をフルセットに持ち込んだ。

 

 攻撃がレフトに集まり、相手の疲れが見えた第5セットは、仙波キャプテンを中心とした持ち前のディフェンス力で冷静に対応。そこから第4セットに途中出場したセッター柳佳歩が攻撃を組み立て、15-11で逆転勝ちを飾った。西畑監督は「インターハイに出られなくて悔しいと思ってやった選手もいるだろうし。代わった選手のおかげで勝てたと思います」とたたえた。

 

 ワンダードッグスにとってはこれで2敗目となり、敗戦直後は重苦しい空気が流れていたが、お互いに歩み寄ると笑顔でプレゼントを交換。就実高からはお菓子や手ぬぐいを手渡し、韓国チームからはリップを贈られた。キム・ヨンギョン監督からの「またお会いする機会があると思うから、それまで頑張りましょう」という激励を受け、仙波キャプテンは2日前とはまた違った表情で前を向いた。

「春高、国スポとまだ全国大会が2つ残っているので、そこで自分たちの力を出せるように。攻め続けることはベースにして、もっとレベルを上げていきたいです」

 

 選抜チームで臨んだ10月の国スポでは優勝。インターハイ優勝の金蘭会高(大阪)、準優勝の福岡女学院高が不在の大会で、きっちりと勝ちきった。11月15日から行われる春高県予選でも、攻めの姿勢で戦い続ける。

 

試合後はキム・ヨンギョンが就実高を激励。握手をした選手たちは目を輝かせて喜んだ

 

文・写真/田中風太(編集部)

 

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