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「おまえ、バレーしにきてんだろ?」ルーキー山﨑真裕を奮い立たせたベテラン渡辺俊介の言葉。天皇杯優勝のWD名古屋で輝く努力の結晶

  • SV男子
  • 2025.12.25

新人選手で唯一、天皇杯のコートに立った山﨑真裕

 

 バレーボールの「令和7年度天皇杯 全日本選手権大会」で4大会ぶり3度目の優勝を果たしたウルフドッグス名古屋。MVPに輝いたオポジットの宮浦健人やエースアタッカーの水町泰杜、ベテランセッターの深津英臣らがチームをけん引するなかでミドルブロッカーの山﨑真裕はルーキーから唯一、大会で出場機会を与えられた。

 

 主な起用方法はリリーフサーバー。初戦の3回戦(1213日/vs.Reves栃木)からさっそくコートに立ち、アップゾーンからは「マサ(山﨑)、走れ!! 走れ!!」という温かいエールが注がれる。だが本人の耳には届いていなかった。

「緊張していました。外の声は聞こえていなかったです。というのも、自分のやることは決まっているだけに、それを頭の中で常に確認していたので…」

 

 無理もない。内定選手時代の昨季は出場機会がなく、この2025-26シーズンがルーキーイヤー。それでも今や、山﨑のサーブは立派な戦術の一つとなっている。

 転機となったのは天皇杯のおよそ2週間前、1129日にホームアリーナのエントリオ(豊田合成記念体育館/愛知)で行われた2025-26 大同生命SVリーグのレギュラーシーズン第6節(vs.ヴォレアス北海道)のGAME1だ。フルセットにもつれたこの試合で山﨑は最終第5セット、15-14の場面でリリーフサーバーとして送り込まれると、しっかりとサーブを相手コートに放ち、最終的には味方のブロックシャットをお膳立てする。ビクトリーポイントの立役者となり、歓喜の輪の中で先輩たちから祝福を受けた。

 

 

山﨑真裕(やまざき・まさひろ/身長195㎝/最高到達点345㎝/星城高〔愛知〕→中央大/ミドルブロッカー)

 

 

「努力が報われたね」。第6節後のオフ明けにかけられた言葉

 

 山﨑は振り返る。

「ここでサービスエースを決めたらヒーローになれる、という気持ちでコートに入りました。しっかりとサーブを打ちきれたことがよかったです。それに、あの場面で託してくれたことで、監督から信頼されていると感じたので個人的にはうれしかったです」

 本人いわく「サーブ練習には力を入れてきたので自信はあった」。そうしてリリーフサーバーのポジションを確立したのが、この日だった。

 

 翌日のGAME2ではサーバーのみならずセット開始時からミドルブロッカーとしてコートに立ち、早々に力強いアタックでも得点を上げた山﨑。その第6節後のオフ明けの練習日、37歳のベテランリベロ、渡辺俊介から声をかけられている。

「努力が報われたね」

 

 その言葉に山﨑の胸ははずんだ。

「そうやって自分の姿を見てもらえているのがうれしい。ほんとうにありがたい存在です」

 実際、第6節のGAME2では2人そろってPOMに選出。試合のタイトルスポンサーである名古屋銀行の法被(はっぴ)を着て、コートインタビューに登壇している。ただし山﨑が、渡辺の存在の大きさを実感したのは、そのさらに1ヵ月前のことだった。

 

 

11月30日の試合後、POMとして「名古屋銀行賞」を受け取った渡辺(左から2番目)と山﨑(右端)

 

 

試合の開催日も自主練習に励むまでに。「常に向上心を持って過ごせている」と話すわけ

 

 1025日にホームで開幕した2025-26 大同生命SVリーグのレギュラーシーズン。広島サンダーズを迎えたその第1節、山﨑はベンチアウトになった。外からゲームをながめることに終始したのち、試合後には食事とチームミーティングを経て、山﨑はロッカールームで仲間と少しばかり談笑していた。なんてことのない時間の過ごし方だ。ただ、トレーニングに励む選手がいたことも事実。

 やがてウエイトルームに足を運んだ際、山﨑は渡辺に呼びとめられた。

「しゃべるのもいいけれど。おまえ、バレーボールしにきてんだろ?」

 

 14歳年上のベテランから投げかけられた言葉は痛烈で、けれども確かな熱を帯びていた。

「そのとき俊介さんからは『選手生命はそんなに長くないから、後悔のないように』という話をしていただきました。そこでさっそく次の日の朝からエントリオで自主練習をすることにしたんです。シンさん(早坂心之介)さんに『練習をしたいんですけど…』と伝えたら、『いいよ。オレもやりたかったし』と快諾していただき、GAME2の午前中に2人でコンビを合わせました。結果的に、その日はベンチに入らせてもらい、出番はなかったですけれど、ユニフォームを着られたこと自体がうれしかったです。とはいえ、まだまだ満足はできなかったので、試合に出たい気持ちがいっそう強くなりました」

 

 シーズンが始まってまもない頃、山﨑はあらためて口にしていた。

「俊介さんが熱い言葉をかけてくれるので、自分は気持ちを腐らせることなく、常に向上心を持って過ごせています」と。

 

 

11月29日のヴォレアス戦で勝負をお膳立てするサーブを打ちきった山﨑を厚く祝福した渡辺

 

【次ページ】「僕も試合に出たいから努力している。そこに年齢は関係ない」と渡辺

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