令和7年度全国中学生選抜男子がイタリア遠征へ。「最後の最後まで悩んだ」セッターの選考ポイントは
- アンダーエイジ
- 2026.02.18
バレーボールのアンダーエイジカテゴリー育成強化事業である「全国中学生選抜」(以下、全中選抜)。その令和7年度海外遠征が事前合宿も含めて2月17日(火)〜23日(月)に実施され、チームはイタリアで開催されるユース世代の国際大会「Nations Winter Cup」に参加する。
いよいよ海外遠征に臨む全中選抜の面々(写真は今年1月の第二次強化合宿)
現時点の技量と、サイズ&将来性のはざまで揺れるセッター選考
遠征メンバーの12名は昨年度の全国中学生長身選手発掘育成合宿に始まり、昨年10月の第一次合宿や12月のJOCジュニアオリンピックカップ第39回全国都道府県対抗中学大会(以下JOC杯)、また中学校やクラブチームの全国大会などを踏まえて選考されている。イタリアへの海外遠征は今年で4年連続となるが、メンバー選考において毎年、最も難しいのがセッターの選出。今年の全中選抜男子を監督する山岡航太郎先生(鎌田中〔長野〕)はこう語る。
「やはり現代のバレーボールにおいて、セッターが勝敗を左右する部分は非常に大きいと感じていますから、かなり慎重に選びました。最後の最後まで悩みましたね。海外遠征で臨むのが国際大会である以上、やはり勝つことを目指す意義がありますので、セッターとしての技量を備えた上手な選手を連れていきたいところ。とはいえ、選抜入りを果たした面々が次のU18/19(ユース)、U20/21(ジュニア)といったカテゴリーに進むことを踏まえれば、今は上手でなくても将来性のある選手たちに経験を積ませることも、こうした育成強化事業の目指すところになります」
極端な見方になるが、中学生世代では「サイズのある選手はアタッカーへ、技術に秀でた選手はセッターやリベロへ」配置するチームづくりが、いわばスタンダード。もちろんセッターの場合、ハンドリングといった細部の要素や戦術理解などのバレーボールIQ、それに“司令塔”という言葉が用いられるようにリーダーシップが備わってこそ、なのは言うまでもない。そこにサイズが伴えば理想的だが…、なかなかそうはいかないのが実情だ。
その点、今年度の中学生世代は豊作とも言え、サイズや技量などそれぞれで強みを持ったセッターが多かったことも選考を悩ませるうれしい要因となった。そうして岩下遼大(錦ヶ丘中〔熊本〕3年)と中森葵(清風中〔大阪〕3年)の2名が全中選抜に選出されたわけだが、今年1月の男子U17日本代表候補合宿には身長189㎝の兼田創右(西野中〔北海道〕3年、北海道イエロースターズU15)やJOC杯で長崎県選抜を日本一に導いた身長183㎝の中村拳人(喜々津中〔長崎〕3年)が参加している。またチームの成績でいえば、JOC杯で準優勝の成績を収めた愛知県選抜の田島皇(六ツ美中〔愛知〕3年、ジェイテクトSTINGS愛知U15/身長168㎝)は大会特別賞に輝き、また昨夏の全日本中学校選手権大会ベスト4の昇陽中(大阪)でコンビバレーを司った山路侑大(3年/身長172㎝)も全中選抜の第一次合宿に名前を連ねていた。
兄に続いて全中選抜入りを果たした岩下遼大
センターエリアからの攻撃を絡める岩下と、ていねいなトスが持ち味の中森
そうした面々から選考を重ねていくわけだが、それぞれの強みは往々にしてジレンマを生じさせる。例えば、セッター経験が浅くとも高身長の選手がいたとする。だが、セッター歴の浅さからトスが安定しなければ、周囲のアタッカーがボールを打ちきれない状況が続いてしまう。相手と戦う以前の問題に陥る可能性だってありうるのだ。一方で、サイズは小さいもののセッターとしての完成度が高い選手がいたとする。ゲームメイクしかり、攻撃に関しては幅が広がるだろう。しかし「vs.海外」を踏まえれば、とりわけブロックにおいてウィークポイントを生むことにつながる。実際に、男子U16/17日本代表を指揮する笠松剛監督(幸高〔神奈川〕)も「うまさはあっても、身長が160㎝台や170㎝前半となればネットからブロックの手が出ない。となれば、国際大会で戦うには非常に厳しいところです」と語っている。
セッターに限らず「大型」とは、サイズで諸外国を下回る日本バレーボール界が長年欲する“才能”であり、向き合う“課題”だ。この点において、山岡先生は近年の変化をこう話す。
「昨年のJOC杯に関しても、175㎝以上あるセッターをピックアップしたところ、20名近くいました。JOC杯の趣旨に則った選考や、さらにはアタッカーから転向させてセッターとして成長させようとしてくれる姿勢が強くうかがえたことは、(〔公財〕日本中学校体育連盟バレーボール競技部の)強化委員としてうれしかったです」
男子U16日本代表でもコーチを務めた経歴を持つ山岡先生
さて今回、海外遠征に選出された2人はどうだろう。岩下は自チームやJOC杯熊本県選抜で常に司令塔を務めた。身長は182㎝で、トスワークを評価された。「まずクイックが使えること。また日本代表が繰り出すようなバックアタックを絡めた4枚攻撃を体現できるセッターだと感じました」と山岡先生は言う。なお、3学年上の兄は鎮西高(熊本)のアタッカー岩下将大で、3年前に全中選抜入りを果たしている。その兄が「僕よりもバレーボールの頭はいいですから」と太鼓判を押す弟は、海外を相手にチームをいかに操るだろうか。
もう一人の中森は、全中選抜の第一次合宿には招集されておらず、JOC杯で選考の網にかかったセッターだ。身長は181㎝で、実は所属先の清風中ではミドルブロッカーとしてプレーしていた。「JOC杯の大阪南選抜で活動するにあたって、セッターに転向した彼は素直なトス回しとボールを捕らえる位置の高さが選出したポイントになります」(山岡先生)。中学進学時からセッターを希望していたというが、チームは下級生に純正セッターがいたためかなわず。それでも清風中の伊藤晋治監督は、「ハンドリングは中学3年間で磨きがかかりました。海外でしっかりと経験を積んできてもらえれば」とエールを送った。
いざ、国際大会へ。参加する「Nations Winter Cup」には昨年度欧州王者の男子U17イタリア代表も参加予定など、例年以上にハイレベルな戦いが予想される。今回、司令塔を託された2人がチームを勝利へ導きつつ、どんな学びを得るかに注目だ。
念願のセッターに挑戦。ポテンシャルを秘めた中森
(文・写真/坂口功将)
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