指導とは、一方通行ではない。そう感じたのは今年4月3日、岐阜メモリアルセンター(岐阜)で行われていた「WOLFDOGS名古屋CUP」に足を運んだときのことだった。その名のとおり、この大会は大同生命SVリーグ男子のウルフドッグス名古屋が主催し、チームが拠点を置く愛知県を中心に全国各地から集った高校男子18チームによって争われる。なお、いずれも全国大会常連の学校ばかりだ。
駿台学園高、清風高、愛知工大名電高…。突出した強みを持つ指導者たちがずらり
最大6面のコートでひっきりなしに試合が行われる最中、参加校の一つである鹿児島商高(鹿児島)の選手たちはいたるところで、監督と話をしていた。監督といっても、相手は他校の、今大会でいえば対戦相手の監督たちである。ただ、その眼差しは強く、また監督たちも身振り手振りで熱心に言葉を発している様子。その光景の真意を鹿児島商高の有川徳彌監督はこのように明かした。
「参加されたチームの先生たちと話しているうちに、『聞きにきてくれたら、もう全然教えるよ』と言ってくださる方々が多かったんです。これだけ一流の学校、一流の指導者の先生がそろっているわけですから、僕が聞くよりも、生徒たちが直接聞いて、それが本人たちのためになってくれたらいいかなと思ったんです」
実際に鹿児島商高の選手たちが質問をぶつけていた顔ぶれを見てみると…、うなずける。一流どころばかりであり、なおかつ、それぞれで突出した分野が明確だ。例えば、駿台学園高(東京)の高橋真輝監督なら組織的なディフェンス、清風高(大阪)の山口誠監督ならトスワークやセッターのスキル、愛知工大名電高(愛知)の北川祐介監督(当時)ならブロック。
選手たちからすれば最高の教材であり、さらには直接、聞いて、学ぶことができる。なんとも貴重な機会といえるだろう。そうして鹿児島商高の力武大燿キャプテンは、高川学園高(山口)の有吉健二監督の元へ足を運んでいる。
「自分はリバウンドをとるのが下手で、アタックしたときにネットの方へ突っ込んでしまうんです。なのでリバウンドのとりかたを教えてもらいました。それからは、リベロへ託すような位置どりや、着地してからサイドライン側へ戻る意識を持つようにしています」
キャプテンだけでなく、部員たちはもちろんのこと、さらには「生徒たちが教えてもらったことを、私が生徒たちから聞くことで指導の幅を広げたいと思っていました」という有川監督もまた、清風高の山口監督へ指南を授かりにいく様子が。「私も学生時代はセッターだったので、山口先生がどのように指導されているのかを聞きたかったんです」と有川監督はほほえんだ。
「『教えなければよかった』と思ってもらえるように成長し続けたい」
一方、質問される側はどのような思いで向き合っていたのだろうか。鹿児島商高の選手たちへマンツーマンで指導にあたっていた駿台学園高の高橋監督はこう話した。
「いやぁ、聞きにきてくれたらうれしいものですよ。やはり選手たちにはうまくなってほしいですから。自分に教えられることがあるならば、どんどん教えていきたいと思っています」
高橋監督自身は駿台学園中(東京)でエースを務め、駿台学園高を卒業後は日本大へ進学。「そのときにプレーヤーとしての活動よりもチームメートをフォローしたり、アドバイスすることにやりがいを感じました。それが(指導者という)今の立場につながっています」と言う。
たとえ対戦相手であっても、今回のWOLFDOGS名古屋CUPのような機会だからこそ。高橋監督を始め、各校の監督たちは「聞きにきてくれたら」と歓迎したのだ。その光景を見て、指導とはつくづく「上達したい」「上達してほしい」の双方によって成り立つものだと実感した。
あれから約2ヵ月が経ち、いよいよ全国各地で夏のインターハイに向けた予選がスタートし、鹿児島県も5月29日(金)〜31日(日)に県予選が行われる。鹿児島商高の面々はきっと、岐阜での学びを胸に戦うだろう。
「全国大会に出場すれば、WOLFDOGS名古屋CUPで指導いただいた先生方のチームと対戦するかもしれません。そのときに『教えなければよかった』と思ってもらえるように成長し続けたいです」と力武キャプテンは意気込む。
「上達したい」のその先にある願いをかなえるべく、目指すは全国の舞台。やがて、それが実現したとき。各校の指導者たちもまた、「上達してほしい」の先にある、成長した姿を見ることができた喜びを覚えつつ、今度は強敵として立ちはだかるに違いない。
(文・写真/坂口功将)
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