
ジャパンビーチバレーボールツアー2026 第5戦グランドスラム 横浜赤レンガ倉庫大会に出場した水町泰杜/黒澤孝太組
7月9日に予選、11日〜12日に本戦が実施される「ジャパンビーチバレーボールツアー2026 第5戦グランドスラム グランフロント大阪大会」の出場チームとその組み合わせが決まってからというものの、水町泰杜(トヨタ自動車/ウルフドッグス名古屋)は声を出さずにはいられなかった。
「トムさんとやりたい!!」
“トムさん”とはニュージーランド籍のベテランプレーヤー、トーマス・ハートレス(Thomas Hartles)。水町にとってはビーチバレーボールを始めて2シーズン目となる2025年にペアを組み、ジャパンツアーでは3大会に出場、そのうち9月の「第7戦グランドスラム エスコンフィールドHOKKAIDO大会」でのツアー初優勝を飾ったときの相方だった。
さらに水町が今年ペアを組む黒澤孝太(トヨタ自動車)も、5月の「ジャパンビーチゲームズ®フェスティバルおだいば2026 第10回ビーチバレーLIVZONカップ」にトーマスと出場しており、水町/黒澤組にとっては胸がはずむ相手にほかならなかった。
果たしてトーマスは渡辺周馬(東京グレートベアーズ)とのペアで予選を突破し、ついに11日の1回戦での対戦が実現することに。「一緒に組んだ経験があり、とてもよくしてくれたトムさんと対峙できることがとてもうれしかったですし、とにかく楽しみでした」と水町。試合に先駆けて、2人とトーマスとのメールのやり取りでは「Crispy(クリスピー)」なる単語が飛び交った。
試合はトーマスのサーブでスタート。そのボールを水町が返球し先制点をマークする。「おそらくトムさんの狙いは僕たち2人の間だったと想像しています。ただ風に揺られて、僕のほうに飛んできたのかと。常に準備はしているので、『きた! 捕った!!』という具合です」とは水町の分析だ。一方のトーマスはオープニングサーブの意図をこう明かした。
「彼らがどういう戦い方をしてくるか、まずはそれを確認したいと考えていました。タイトさん(水町)がしばらく長い間、インドアのシーズンを戦っていたのは知っていたので、さてレシーブはどうかなと。それでも素晴らしいタッチ(レシーブ)でしたね」
そうしてサイドアウトに成功すると、次は水町がサーブを打つ番。こちらの狙いは明確だった。
「僕らは『トムさんでいこうか』と。戦術的に、というよりも、やっぱりトムさんと戦いたい気持ちがあったので(笑) サーブはトムさん狙いでした」
「新しいかたちを見せてくれた存在」(水町)で「一人の人間としても大好き」(黒澤)
その水町の言葉にあるとおり、もちろん勝負事であり公式戦である以上は勝利することがゴールになるが、それとは別の思いを水町/黒澤組がぶつけていたのは確か。黒澤も「トムさんと初めて対戦できる。気持ちは入っていました」と告白する。
結果的に2-0(21-13,21-14)で勝利した水町/黒澤組に試合後、あらためて聞いてみる。それぞれにとって“トムさん”とはどんな存在なのか。
「日本人選手とペアを組むときとはコミュニケーションも違うし、スタイルも違ってくる。だからこそ新しいものを自分の中に取り入れることができました。もちろん人柄も素敵です。僕にとっては新しいビーチバレーボールのかたちを見せてくれた存在ですね」(水町)
「5月に組んだときは、すぐに自分に合わせてくれましたし、上手な選手だなと感じました。海外のプレースタイルを感じさせてくれる、なかなか日本では味わえない貴重な存在ですし、一人の人間としても大好き。ニュージーランドに行きたくなるくらい、好きです」(黒澤)
そんな思い入れある選手と日本で戦った初めてのゲーム。水町は「試合後、トムさんもめちゃくちゃ『Crispy』と言ってたので、おそらく『Crispy』だったのではないかと思います」とほほえんだ。
対するトーマスも、その胸の内は同じ。2人との試合を心待ちにしていたと明かす。
「こうして試合ができてほんとうにうれしかったですね。2人は終始、素晴らしいプレーをしていましたし、彼らのおかげで最高のゲームができました。自分としては負けてしまったわけですが、コートの向こうに2人がいること自体がとても楽しかったです」
「2人がどれだけ成長していくか、それを見ているだけでワクワクする」と“トムさん”
世界を舞台に10年来、ビーチバレーボールでプレーしてきたトーマスの目に映るのは、若き才能がメキメキと成長を遂げていく姿だ。
「間違いなく2人とも日々、成長しています。高いポテンシャルを備えていますよね。タイトさんはディフェンスが素晴らしく、何より動作性やタイミングがいい。コウタさん(黒澤)はブロックの位置どりが素晴らしいですし、より経験を積むことでさらに磨きがかかることでしょう。
確かに2人はまだまだ経験が多くありません。ですが、すでにあれだけの高いレベルにあります。それにシンペイさん(青木晋平コーチ〔トヨタ自動車〕)のもとで、どれだけ成長していくか。それを見ているだけでもワクワクしますし、ほんとうに気持ちがいいものですよ」
ここから水町/黒澤組は7月後半に海外遠征へ出向き、ドイツの国内大会「シュトラールズンド・プレミアム」や「ワールドプロツアー フューチャーズ平潭大会(中国)」に出場する予定。世界へくり出す2人へトーマスはエールを送った。
「彼らのこれからの旅がうまくいくことを心から願っています。出場する大会では日々、上達するためにトライし続けてほしい。そうすれば、大きな成果を手にすることができるでしょう」
そう話すトーマスも、再びネットをはさんで2人と対峙する機会がめぐってくるかもしれない。また次も対戦してみたいか、を聞くと…。
「もちろん!! 私にとって特別な友人たちですし、いつだってそんな存在とゲームをするのは楽しいものですから」
一回戦を終えた日、トーマスは自身のSNSで試合映像とともに「Crispy」なる単語を添えていた。水町や黒澤との会話でも出てきた、その言葉の正体は。ファーストフードに代表されるように“外はカリカリ、中はジューシー”というニュアンスかと思いきや、どうやら異なるらしい。トーマスは、こう解説してくれた。
「ニュージーランドではよく用いる表現なんです。いいプレー、いいショット(アタック)、いいゲーム…。(ニュージーランドの名物である)ラムチョップのように素晴らしいものを例える言葉です」
とりわけ海外でビーチバレーボールは老若男女問わず、あらゆる世代がプレーできる生涯スポーツの代表格。トーマスと水町、黒澤もまた、練習や試合それに遊びであっても、いつかまた砂の上でボールをつなぐ機会がやってくるだろう。それはきっと、「Crispy」な時間だ。
(文・写真/坂口功将)
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