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初の決勝進出なるか。石川祐希のミラノの快進撃を後押しする“地の利”

 

 イタリア・セリエAは2022/23シーズンのプレーオフ真っ只中。石川祐希が所属するミラノはレギュラーシーズン8位ながら、同1位のペルージャを撃破してチーム史上初となる準々決勝ラウンド通過を果たした。そして昨季王者のルーベと準決勝ラウンドを戦い、現時点で2勝1敗。ミラノは決勝進出へ王手をかけた。

(Photo:legavolley.it)

※ポジション表記/OH …アウトサイドヒッター、OP…オポジット、MB…ミドルブロッカー、S…セッター、L…リベロ、C…コーチ

<ルーベとの第3戦でアタック決定率83%をマークし、MVPに輝いたMBアグスティン・ロセル(アルゼンチン)>

 

レギュラーシーズン無敗のペルージャと準々決勝ラウンドで対戦

 

 勝利に値するだけの力があるのは大前提だが、それでも、神風が吹いていると思えてしかたがない。プレーオフに入り、ミラノのホームアリーナ「アリアンツ・クラウド」での勝率は100%である。

 

 始まりはプレーオフ準々決勝ラウンド第2戦だ。第1戦(現地3月18日)はアウェーのペルージャに出向き、ストレート負け。レギュラーシーズンの対戦成績ではペルージャの2勝0敗であることを考えれば、ある意味、妥当な結果であった。だが、そこで引き下がる今季のミラノではない。「相手がどう攻めてくるか。この数日話し合い、対策を練ってきた」(ロベルト・ピアッツァ監督)と、ホームでの第2戦(同3月22日)は出だしから2セットを連取。選手交代を繰り出したペルージャの反撃もありフルセットに持ち込まれたが、最終第5セットを制して、レギュラーシーズン無敗のペルージャから今季初白星を奪ってみせた。

 

<準々決勝ラウンド第2戦でペルージャから白星を奪ったミラノ。快進撃はここから始まった>

 

「自分たちはあきらめないチーム」とミラノの大砲パトリ

 

 そもそもセリエAのプレーオフは一戦ごとにホーム&アウェーが入れ替わる方式。レギュラーシーズン上位チームに第1戦のホームでの開催権が与えられる。3戦先勝方式のため、ミラノは第2戦を制したことで、必然的に第4戦の実施が決まった。そして、その舞台はホームである。「必ず第4戦でここに戻ってこようと話していました」と、ミラノのキャプテンMBマッテオ・ピアノ(イタリア)は第2戦を終えて語った。

 

 アウェーでの第3戦(同3月26日)を落とし窮地に立たされたミラノだったが、「勝利するための最後のチャンス。ですが、それが不可能ではないことは、第2戦で証明されていいます」と力強く語ったのはOPジャン・パトリ(フランス)。「自分たちは決してあきらめないチームですから」という大砲の言葉には自信がみなぎった。

 

 そして迎えた第4戦(同4月2日)は4000人を超える観客がアリアンツ・クラウドを埋めた。その熱気に突き動かされたチームは、フルセットの末にまたしても白星を手にする。これで弾みをつけたか、アウェーでの第5戦(同4月10日)で逆転勝利を収め、ついに初の準決勝ラウンド進出を決めた。

 

<準々決勝ラウンド第5戦ではアウェーながら、ミラノの応援団がエールを送り続けた>

 

>>><次ページ>ホームで行われた、ここまで3試合すべてフルセット勝ち

<トータルディフェンスでルーベをはね返すミラノ(手前)。実力は拮抗している>

 

ホームで行われた、ここまで3試合すべてフルセット勝ち

 

 レギュラーシーズン8位のミラノにとって、プレーオフで戦う相手はいずれも順位を見れば格上の相手ばかり。それは準決勝ラウンドでも同じ。ここでの相手は昨季王者のルーベだ。第1戦(4月13日)は、準々決勝ラウンド最終戦から日も浅いこともあってか、ミラノの選手たちの動きもどこか鈍く。ストレート負けに終わっている。それでもSパオロ・ポッロ(イタリア)は「次はホーム。すぐに立ち直れるだろうから、そうしたい」と語った。プレーオフでペルージャから奪ったホームでの2つの勝ち星は、選手たちにとって心理的にも大きく働いていたのは確かである。

 

 そして第2戦(同4月16日)、ミラノは準々決勝ラウンドをなぞるかのように、ここでもフルセットの勝利を収める。試合後、ピアッツァ監督は「5296人の観客(注:リーグ公式記録は5446人)がチームを応援し続けたことに感動しました」と語り、パトリも「満員の観客からのエネルギーも後押ししてくれた」と感謝した。

 

<ミラノの大黒柱、⑭石川はルーベとの第2戦でMVPに選ばれた>

 

初の決勝ラウンド進出へ王手。ホームアリーナでの第4戦へ

 

 今やミラノは、プレーオフに進出した8チームにおけるアンダードッグ(最も力のないことのたとえ)ではない。「我々はルーベと同じレベルにある」(ピアッツァ監督)という言葉どおり、第3戦(同4月19日)ではアウェーのムードの中、ストレート勝ちを収めてみせた。そうして決勝進出に王手をかけた状況で第4戦(同4月22日)、ホームアリーナのコートに立つのである。

 

 もっとも、「ホームアドバンテージがあるとは思わず、これまでやってきたことを胸に留めなければ」と指揮官は気を緩めない。ルーベとて、ヴェローナとの準々決勝ラウンドでは1勝2敗の崖っぷちから臨んだ敵地での第4戦でストレート勝ちを収め、やがて最終第5戦を制した経緯があるからだ。

 

 とはいえ、今シーズンのミラノが「自分たちはこのクラブの歴史を刻んでいる」(準々決勝ラウンド最終戦を終えた石川のコメント〔原文はイタリア語〕)のはまぎれもない事実。第4戦で新たな歴史の1ページが刻まれたとき、アリアンツ・クラウドは“ディライツ・クラウド(delights cloud=歓喜の雲)”で満たされているに違いない。

<熱気うずまくアリアンツ・クラウド。新しい歴史は刻まれるか(写真は第2戦)>

 

(文/坂口功将〔編集部〕)

 

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