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「なんであんな指導を」と後悔する“ふつう”の公立校監督がVリーガーとつながり授かったスピリッツ《後編》

  • 編集部取材
  • 2023.09.14

 

昨年度のキャプテンを務めた斎藤

  

 

富士通の山本監督が口にしていた「今こそ多くの方々に感じてもらいたい」こと

 

 指導者の「変わらなければ」という思いに、もっともマッチしたのが「明るく、楽しく、そして強く」だった。下坂監督はこれまでの歩みを振り返りながら口にした。

「あの言葉は、指導者である自分に向けたものでもありますね。子どもたち一人一人に大事な家族がいて、その子を学校は預かっている。生徒を大切にすることにはバレーボールを上達させるよりも責任が伴うといいますか。そのうえでいかにうまくなるか、さらには勝てるようになるか、だと今は考えています。

 いろいろなことがあって、こうして今につなげてくれた教え子たちに感謝していますし、この先も大事にしなければならない言葉なのかなと思います」

 

 思えば今年の春先、学生バレーボール界では体罰の問題が激化。実績ある有力校での体罰が表沙汰になった。

 時同じくして、Vリーグを戦っていた富士通の山本道彦監督は、試合前に和気あいあいとアップする選手たちを見ながら、こう話していた。

「今こそ私たちのバレーボールを通して、多くの方々に感じてもらいたいんです。バレーボールって楽しいものなんだよ、楽しんでいいんだよ、って。それが富士通というチームに課せられたミッションでもあります」

 

 その思いは県を越えて、確かに届いていたのである。

 

 

長年、富士通の指揮を執る山本監督。「明るく、楽しく、そして強く」の生みの親でも

  

 

代替わりしたチームがつなぐ絆とその未来

 

 斎藤たちの代は出場する公式戦すべてで県大会にまでのぼりつめた。1年生から3年生まで、全学年の部員数は30人を超える。とはいえ、高校から始めた生徒もいるなどスキル面でいえばまだまだトップレベルには及ばない。下坂監督は「いたって、ふつうの公立高校のバレーボール部です」とほほえむ。

 そんなチームは代替わりをして、今は夏休みのさなか、2年生たちは週替わりでキャプテンを交代させ、自分たちでメニューを考えることに四苦八苦しながらチームづくりに励んでいる。

 

 中でも前チームからレギュラー入りしていた新井聖美(2年)は悩みつつも、精いっぱい汗を流している。

「一緒にコートの中に立たせてもらえていたことが自分の中では大きくて…、3年生が残したものをきちんと残さなくちゃ、続けなくてはという思いが強かったんです。とにかく勝ちたい、って。

 でも、それではだめだ、って。先生や先輩から『同級生ともっともっとコミュニケーションをとるように』と言われて。私自身、そこは課題だと思っていました。

 いざ実際にコミュニケーションをとるようにしたら、全然違いました!! 練習の雰囲気も何もかも。自分がやらなきゃ、って抱えていたのが楽になって。まだまだ難しいですけど…」

 

新チームの主軸を担う新井

  

 

 先輩たちの姿を見てきたからこそ、その思いは募る。そして指導者と同じように、部員たちも変わろうとしている。明るく、楽しく、そしてその先には“強く”なった絆が芽生えているはずだ。

 

 笑顔でボールをつなぐ。そんな入間向陽高女子バレーボール部を、今年新しく作られた横断幕が温かく見守っている。

 

 

(文・写真/坂口功将〔編集部〕)

 

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