買取大吉 バレーボールネーションズリーグ 2025 千葉大会(男子)が7月16日(水)~20日(日)に千葉ポートアリーナ(千葉)にて行われる。このラウンドから石川祐希キャプテンや髙橋藍らが合流するなか、昨年のパリオリンピックメンバーには今季日本代表活動に参加しない選手も。そのうちの一人である髙橋健太郎は、どんな思いで日々を過ごしているのか
その時々の感情を大切に
自分のやりたいことを
――髪が金色になっていますが、どんな心境で染められたのですか?
完全に気分ですね。2日前(取材日は7月1日)に染めたんですけど、その日起きた瞬間に思って、そのまま染めに行きました。髪の毛を染めるのは初めてです。
――何かモデルはあるんですか?
いや、ないです。似合うようにしてくださいと言いました。でも、似合わないことが判明したのでやめようと思っています(笑) 染め直しはしないけど、生え変わるまでこれでいて、そこからサクッと短くして戻していこうと思っています。
――ほかの選手たちの反響はいかがでしたか?
みんなにはバカにされましたね。いろんな人に言われすぎて、僕はもうわかっていません(笑) 髪の毛を染めるのはもともと好きではなくて。「染めるのは絶対ないわ」と言っていたんですけど、やってみたらこんな感じになりました(笑)
――これから髪色がなじんでいきそうな気もします
たしかに、そうですね。
――パリオリンピックを終え、日本代表を引退する発言もありました。そこから再びこのユニフォームを着るまでにどんな思いがあったのでしょうか?
いろんな心境の変化があって。僕はそのとき、そのときの気持ちで流れていて、やりたいなと思ったり、もういいかな、と思ったり、いろいろとあるので。だから、今は余計な発言をせずにいこうかなと思っています。
――パリオリンピックでの引退発言は、そのときの感情からきた言葉だったのでしょうか?
いや、パリの前にはやめるつもりでいました。そのときは感情的になって言ってしまった部分もありましたが、その話はずっとしていました。
でも、いざ終わってみて、次のオリンピックに出る機会を自分から手放したらその空間がすごくいとおしくなってきて(笑) 日本代表という空間が離れがたかったというか、そんな気分になりました。パリでメダルを取っていたら多分もうやめていますが、どうしてもメダルがほしい気持ちになりました。
――「いとおしくなった」というのはどのタイミングでしたか?
その日です。オリンピックが終わって、試合会場を離れた瞬間に思っていました。「いやぁ、もう終わりか」って。控え室に帰った瞬間、みんなの前で、「引退って言っちゃったけど、すごく嫌だな!」と言って。「やりてぇ!」みたいな感じで大きい声で言っていました。
不用意な発言ではなかったと思いますが、そのときの感情もあったので。僕から出ることはすべて、そのとき、そのときの表現でしかありません。
――今回の髪色もその一つですね
そうそう、そうです。
――今シーズンの日本代表活動については、ロラン・ティリ監督とどんな話をしましたか?
今シーズンは全部休みます、と一応話をして。でもはっきりとは話をしていなくて、伝えてもらったというくらいです。
――休むことに対して不安はありませんでしたか?
ないです。そこは自分の人生なので。誰かの人生を生きているわけでも、誰かの期待に沿って生きているわけでもない。自分のやりたいようにやりたいだけなので。正直、ここで日本代表に来い、と言われて行って、ケガをして来シーズンからバレーボールができなくなっても、誰も責任を取ってくれないじゃないですか。養っていくべき家族がいるし、僕のライフプランニングもあるので、自分の責任は自分で取らないといけない。そのためにはやはり休む必要があると思いました。
代表とクラブシーズンは正直、二刀流のようなもの。試合数があれだけ多くなったらもう相いれないので、自分で選択していく必要があると思います。ケガをせずにパフォーマンスを保てる人はいったらいいし、それができないと思っているのであれば、休息するというか、もっともっとフィジカルを鍛え直す、見つめ直すことも重要だと思います。
体づくりに励み
よりパワーアップした姿に
――昨年10月には左ヒザ関節遊離体除去手術を受け、SVリーグ初年度を戦い抜きました。現在の体の状態はいかがでしょうか?
コンディション的にはよくなってきているし、ヒザの状態もいいです。でも、メンテナンスをしなければいけない箇所、部位はほかにもたくさんあります。やはりケガをしない体づくりはまだまだ必要です。SVリーグの期間が長くなったことで、自分の体は自分で守らなければいけないフェーズに入ったと思っています。僕も今30歳と、ある程度の年齢ですし、長年プレーを続けるためには、もう一度自分を見つめ直す機会が必要だと思っています。
ただ、代表から離れる決断をしても、クラブシーズンはあります。そのための助走期間というか、体をつくる期間になるので、SVリーグが終わった3日後にはトレーニングを開始しました。自分の体を見つめ直すいい機会だと思ったし、新たな自分を見たいというワクワク感がありました。
――これまで以上にご自身の体と向き合うことができると思いますが、どんな期間にしたいですか?
根本的に体のサイズを大きくすることが重要だと思っています。僕のポジション(ミドルブロッカー)はフィジカルが絶対的に重要。もう一回筋肉量を増やして、もっともっと、目に見えるかたちで大きくなる予定です。そこから削って、使える筋肉にする作業を8月以降にしていきたいです。
そのほかには基礎代謝を上げたい。年齢が上がると基礎代謝が落ちて太りやすくもなるので、そこを変える、体質改善の期間にもしようと思います。
――フィジカルの重要性は年々感じているのでしょうか?
感じています。昨年まではどうしても出がらしのような状態でやっていたので、なかなかパフォーマンスが上がらず、伸び悩んでいる感覚がありました。もっともっとトレーニングでよくなる方法を知っているのに、それができなくて結構むずがゆかったんですけど、今はできるので。
ブロックディフェンスのアジリティーなど、今足りない部分がたくさんあります。自分のよりよいパフォーマンスを知っているからこそ、そこに戻すのではなくて、そこに対してさらに違うアプローチを加えて、もっと求めていくことが大事。そのためにもフィジカルが重要という結論に至りました。
――ネーションズリーグでは若手のミドルブロッカーの活躍が光っていますが、ご覧になっていますか?
僕たち(山内晶大、小野寺太志を含めたパリオリンピックメンバー)とまた違ったいいかたちというか、ほんとうにすごいポテンシャルがあると思います。佐藤(駿一郎)のプレーを見ていても、決定力があってめちゃめちゃいいな、と。「すげぇ」と思うし、彼のようなポテンシャルの選手が今後育っていくべきだと思います。
我々で4年、8年とずっといくわけにもいかないので。そういった選手がどんどん出てくるとうれしさもあります。だからこそ、僕も頑張らないといけないという刺激にもなりますし、そういった突き上げは素晴らしいと思います。
――この1年、またロサンゼルスオリンピックが行われる3年後はどんな姿になりたいですか?
僕は毎回言いますが、オリンピックに照準を合わせて生きているわけではありません。毎年、自分の結果に一喜一憂して生きているので、今秋のSVリーグで悔しい思いをしたら、悔しくてまた違う感情になると思います。後悔はしたくないので、今すべきことをしていくのがすべてだと思っています。どんなふうになりたいか、自分の完成形はわからないし、それを自分で決めたくないです。
――ほんとうに1年ごとが勝負なんですね
そうです。そこは日々、自分との戦いだと思います。今、頑張れない選手に将来はないので。
たかはし・けんたろう
ジェイテクトSTINGS愛知所属
1995年2月8日生まれ
身長201m/最高到達点361cm
米沢中央高(山形)→筑波大→東レ
ミドルブロッカー
取材/田中風太(編集部)
写真/石塚康隆(NBP)
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