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「親の許可なしに。100円玉をにぎりしめて」始まった道が迎えた最高の結末。浜西クラブ(静岡)が全国中学2人制大会で優勝

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 中学生世代の2人制ビーチバレーボールの全国大会「HEKINANマンモスカップJVA5回全日本ビーチバレーボールU15選手権大会」(以下、HEKINANカップ)で優勝を飾った男子の浜西クラブ(静岡)。器用さを備える倉田颯太郎と身長185㎝の高さを生かす上畠光志朗(ともに浜松西部中〔静岡〕3年)のペアは対戦相手を圧倒して頂点まで駆け抜けた。

 

 

(右から)浜西クラブの上畠光志朗(うえはた・こうしろう/身長185㎝)、と倉田颯太郎(くらた・そうたろう/身長164㎝)

 

 

中学1年生時から浜西クラブでペアを組む倉田颯太郎と上畠光志朗

 

 喜びもひとしおだった。浜西クラブの2人としては、HEKINANカップは2年連続の出場。しかし昨年は決勝トーナメントでシードに入り、その初戦で敗れたうえでのベスト8だった。「前回は緊張して、チャンスの場面でもうまく動けなかったりしました。その悔しさを今日、晴らせました」と倉田。続けて、感謝の言葉を口にした。

「大会前日の金曜日からドキドキしていたんです。たくさんの励ましの言葉や自分の学校でも応援してもらって、それに中学3年間もビーチバレーボールの練習では海まで送り迎えをしてもらい、監督にも練習をつけていただいた。多くの方々の助けがあったからこそ立てた、日本一です」

 

 浜西クラブは2017年に創設され、小学生から高校生までの男子を対象にインドアとビーチバレーボールの両方に励んでいる。今回のHEKINANカップを戦った2人は中学に進んでからビーチバレーボールでペアを結成して活動してきた。

 その成りゆきを聞くと、元々は小学校低学年から浜西クラブで活動していた上畠のほうから倉田を誘ったそう。倉田は振り返る。

「僕自身は小さいころからずっとサッカーをしていたんです。小学5年生の頃にちょうどバレーボールにハマった時期があって。学校でも昼休みにはスポンジのサッカーボールを使って、友だちとバレーボールをやっていました。そのときに誘ってもらったんです」

 

 ずっとサッカーを続けるものだと考えていたが、上畠に誘われたことで「バレーボールをやってみたいな」と興味はふくれあがった。上畠が所属している浜西クラブは「完全自由参加」をうたっており、倉田は練習一回の参加費である100円玉をにぎりしめて家族に伝える。「ちょっと体育館に行ってくる!!」と。

「お母さんの許可なしで(笑) 100円だけ手にして、自分から決断して足を運びました。バレーボールをやることを伝えたら、お母さんには『縁があったね』と言ってもらいました」

 そうして本格的に始まったバレーボールの道。インドアではリベロとミドルブロッカー以外の全ポジションをこなし、ツーセッター制を敷くなかではセッターとアタッカーを兼任する。さらにはチームのキャプテンを務めた。

 

 

感情をむき出しにしてムードをつくる①倉田

 

 

2人でプレーするビーチバレーボールならではの魅力を存分に味わいながら戴冠

 

 ビーチバレーボールでは上畠と中学1年目から公式戦に参加し、HEKINANカップの県予選では2位の成績を残した。その後は先述のとおり。ビクトリーロードをともにしてきた相方を、倉田はこのように表現した。

「静岡県の中学は学校もクラブもレベルが高くて。それにケガもあって(上畠は)JOC静岡県選抜からも漏れてしまいました。ですが、『埋もれている天才』だと僕は思っています。たまに243㎝のネットで練習するのですが、僕がトスを上げたら、とんでもないスパイクを打つんです。これは中学生じゃないな、って(笑)」

 

 そんなリスペクトを抱くペアと臨んだ中学生活最後のHEKINANカップ本戦では、ビーチバレーボールならではの楽しさを存分に味わっていた。2人は言う。

「協力してできるところが楽しいです。お互いを支え合ってできるスポーツだと感じています」(上畠)

「一人が崩れても、もう一人が救ったりするので。それに、コート上では頭を使います。ブロックのあるなしや、空いているスペースなどをお互いに言い合う必要がある。そこではちょっとしたひと言があるだけで、メンタル的にも助かりますから。なので、友情がほんとうに深まりますよね。こうして2人で最後に優勝できて、3年間一緒に頑張ってきてよかったです」(倉田)

 

 聞けば、2人とも競技は続けたい意向を持っている。

「僕は高校に進んでからもビーチバレーボールをやりたいと考えていて。将来はプロの選手になりたいです」(倉田)

「僕もインドアとビーチバレーボール両方を頑張りたい。中学ではみんなと結果を残せなかったので、高校ではもっともっと成果を出して、将来への道を切り開きたいです」(上畠)

 

 友人からの誘いに招かれ、100円玉一枚を手にして踏み出した道のりは、やがて日本の頂へと続いていた。けれども、これはまだ彼らの物語の序章に過ぎない。

 碧南の地ではじけた2人の笑顔に、そんな予感がした。

 

 

上畠(真ん中)のブロックを起点に、切り返しては倉田が得点する。それぞれの強みが生かされたペアだった

 

(文・写真/坂口功将)

 

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