インターハイ、国スポを終えて、高校バレーは全日本バレーボール高等学校選手権大会(春高)の予選が各地で行われている。集大成の舞台に向け、選手たちはどんな思いで歩みを進めてきたのか。インターハイ女子準優勝の福岡女学院高(福岡)の萩原千尋キャプテン、エースを務める木築紗良、吉田朱李のインタビューをお届け。後編では、3年生時には全日本中学校選手権大会(全中)でベスト4入りした中学時代からの成長を語った
――決勝の金蘭会高(大阪)戦は、後がない第3セットを26-24で奪いました。前衛で苦しむ木築選手を、吉田選手が救いましたね
吉田 (木築)紗良は2枚(前衛のスパイカーがミドルブロッカーとアウトサイドヒッターの2人になるローテーション)を回している側で、どうしてもブロックがついてしまう。それに比べて自分はどちらかといえばマークが薄いところもあるので、紗良が決まらなかったらその分自分が決めようという気持ちでした。
木築 前衛のときに決まらなくて、「あー、やばいわ」って思いながらやっていて…・。とりあえず一回(ローテーションを)回したら(吉田)朱李が前に来ると思いながらやっていました。自分が後衛になったら絶対にボールを落とさんから、「お願い、決めて!」って(笑)
――両エースの絆が垣間見えたセットでした。木築選手はパワー、吉田選手はスピードが光りますが、お互いにどんな存在ですか?
木築 得意なことが2人とも違って。お互いのいいところを合わせたら多分めっちゃよくなる。
吉田 お互いに絶対負けたくない、という思いがあるなかで、プライドもなく教え合うこともできます。どっちかがいなかったらここまでうまくはなっていないと思います。
――負けたくない気持ちが強いんですね
吉田 絶対に負けたくないです(笑) 練習中に反対側のコートにいたら、どーんと打ち返してくるやん! あれよ、あれ!
木築 逆のコートに入ったらね(笑)
萩原 この2人が反対のコートに入ったら、「ストレートに打ったら決まるやん」という場面でもお互いにインナーにしか打たない(笑) でも、中学のときはどっちかがよくて、どっちかが悪かったよね。
吉田 そう。片方がいいともう一方が焦って、どっちもいい日はあまりなかった(笑)
萩原 でも、紗良はあまり争ったりするのが好きじゃないよね。いいよ、いいよって。
吉田 穏やか系。(自分は)プレーがついてきていないというか、気持ちだけが先走っているってよく言われる。
――中学時代の萩原選手はいかがでしたか?
吉田 変わった。優しくなったね。謝るようになった。
木築 たしかに、言われてみれば。
萩原 普通のことやけどね(笑)
小学校のときから笑うときが…、あまりなかった(笑) 最初は人見知りで、中学の入試のときも誰ともしゃべらない、という感じでした。
木築 正直に言っていい? 怖かったです。
萩原 紗良にはよく怒っとったね(笑)
木築 自分はサーブレシーブやレシーブをするじゃないですか。(萩原)千尋がセッターだから、絶対に一歩も動かせんと思ってやっていました。それもあって今はうまくなっているんですけど(笑)
吉田 よかったやん、紗良!
木築 よかったけど、ちょっと恐怖でやっとったわ(笑)
萩原 うそー!
吉田 自分は仲よかったけど、ほかの子は怖かったと思う。
萩原 (自覚は)…ちょっとは(笑) なかなか自分から謝れなかったんです。
でも、高校はそれでは通用しないし、キャプテンがそういうことをしていたら周りがついてこないから、全部変えました。中学のときはそれでも周りがついてきてくれていたから。…すみません(笑)
木築、吉田 (笑)
木築 千尋に怒られて、泣いて城岡先生(伸行/福岡女学院中高総監督、福岡女学院中の監督を兼任)に送ってもらったこともあった(笑) 中3のときがいちばん怖かった。
萩原 最低―!
吉田 ケンカしかしてない。ここ(萩原と吉田)やばかったよね? 高校に入ってからもたまにあるんですけど…(笑)
萩原 でも、ケンカというケンカではなくて。学校に行くときにずっとしゃべらなくて、「怒っているんかな」「何かしたかな」と思っていたら、自分が怒っていると思われていたみたいで。すれ違いもありました(笑)
吉田 先生(大谷弘之監督)にも「ケンカしてんのか」って言われて。最近はしていないのに、一緒におらんかっただけでも言われる(笑)
萩原 でも、おったらおったで「ずっと一緒におる」って。
木築 やばいですよ、お二人は。仲はいいけど、ケンカしたらいつも複雑な気持ちで間に入っています(笑)
萩原、吉田 (笑)
吉田 もちろん、バレー中はちゃんとするけどね。
萩原 コンビが合わないときはお互いにイライラするときもあるけど、どっちかが歩み寄らないとそのままだから。セッターからすればスパイカーは自分のトスをずっと打ってくれているという思いもあるので、自分から「もうちょっとこうしよう」と言うようになりました。
――国スポに出場しないため、春高予選に向けて長い準備期間があります
萩原 長いけど、自分たちにもう次はない。今日の練習だって、もう来年はないから。それを考えれば一日一日の練習をやりきる意味があるし、ここで手を抜いてしまうと最後の大事な大会にすら出られなくなってしまう。福岡を勝ち抜くのは難しいと思うから、危機感を持ってやっていきたいです。
あくまでも自分たちはインターハイで準優勝しただけであって、目標を達成したわけではない。今までの練習では勝てないとわかったから、ほんとうに練習で追い込んでいきたい。3年生はきつい練習やしんどいことも楽しんでやっていきたいです。
あとは、インターハイでも感じたけど、応援してくれる人たちのために、日ごろの感謝の気持ちを持ちながら、春高で日本一を獲って恩返ししたいと思います。
吉田 金蘭(会高〔大阪〕)との守備やつなぎの差が、インターハイですごく明確になりました。大会が終わったあとに、自分がレシーブ面で足を引っ張っていたと先生から言われて。それが悔しかったから、春高では改善したい気持ちが強いです。レシーブ練習を頑張って、つなぎのプレーでも目立てる選手になれば、(福岡)女学院はいろんなコンビが使える。春高までにレシーブの精度を上げられるように集中したいです。
木築 今回のインターハイではいい部分もあったけど、決勝で決められないと意味がない。そこを練習で詰めていきたいです。
はぎわら・ちひろ
3年/身長170㎝/最高到達点286㎝/福岡女学院中(福岡)/セッター
きつき・さら
3年/身長172㎝/最高到達点288㎝/福岡女学院中(福岡)/アウトサイドヒッター
よしだ・あかり
3年/身長170㎝/最高到達点287㎝/福岡女学院中(福岡)/アウトサイドヒッター、オポジット
取材/田中風太(編集部)
写真/山岡邦彦(NBP)、編集部
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