武蔵コーポレーション杯 令和7年度第78回全日本バレーボール高等学校選手権大会埼玉県予選会はサイデン化学アリーナ(埼玉)で大会最終日が行われた。女子決勝は11月8日、男子決勝は11月9日に埼玉上尾メディックスのホームゲームと同会場で開催。女子は細田学園高が5年ぶりの本戦出場を目指す春日部共栄高をセットカウント3-1で下し、2年ぶり24回目の出場を決めた。男子は春日部共栄高が準決勝でインターハイ県予選覇者の埼玉栄高を倒した昌平高にフルセットで勝利。県予選初優勝を果たし、17年ぶりに全国への切符を勝ちとった
細田学園高(女子)
嶋崎キャプテンの支えもあり
下級生たちが躍動
昨年度は春高本戦に進めず、悔しさを味わった細田学園高。今年は下級生を中心とした攻撃力を武器に、2年ぶりのオレンジコートに立つ。第1セットを先取した細田学園高は、第2セット、11-15とリードされるが、2年生ミドルブロッカーの平沼日頼や1年生アウトサイドヒッターの松本絆奈が高い打点から放つスパイクなどで点差を縮めると、1年生オポジット中島果穂の3連続得点で逆転に成功。9月からレギュラーに定着した中島は「2セット目から落ち着いてきて、『決めなきゃ』という一心で思いきり腕を振りました」と冷静ながらも熱い心で逆境を跳ね返した。その後ジュースにもつれるも、最後は松本が得点し、このセットもものにする。第3セットは春日部共栄高の冨永果杏キャプテンや秋葉彩芭が得点を重ね、セットを奪い返すも、第4セットは細田学園高が中島のライト攻撃など7連続得点で11-1。勢いのまま試合を優位に進め、歓喜の瞬間を迎えた。
2大会ぶりに春高本戦出場を決めたあと、伊藤潔美監督は「1年生の2人がよく頑張ってくれた」と高く評価。また、リザーブの嶋崎紗恵子キャプテンを「ベンチからチームをしっかりまとめてくれた」とたたえた。嶋崎キャプテンは「監督から『まず3点差にしよう』と言われていたので、流れがわるいときにはみんなを落ち着かせるために『1点ずつ取っていこう』と伝えていました」と振り返ったように、力ある下級生を「いちばんまとまる」(伊藤監督)声で支えた。
今年のインターハイでは2回戦敗退と悔しい結果に終わった。「インターハイでいい結果を残せなかった分、1回でも多く勝って、埼玉県代表としての自覚を持って上位を目指したいです」と嶋崎キャプテン。熱戦を繰り広げたライバルたちの思いを背負って、東京体育館での躍動を誓った。
春日部共栄高(男子)
夏の悔しさを糧に念願を達成
男子の決勝は、3年ぶりの出場を目指す昌平高と、全日本高等学校選手権大会としては17年ぶり、1月開催の春高としては初の出場を目指す春日部共栄高との顔合わせとなった。
試合は、昌平高の棚澤一葉、春日部共栄高の伊藤巧寿という両チームのキャプテンが、ともにエースとしての存在感も示すぶつかり合いとなった。熱い気持ちを前面に出し、2年生が多くを占めるチームを力強く鼓舞する棚澤キャプテンに対し、感情を表に出さず背中でひっぱる伊藤キャプテンという対照的な雰囲気を醸す両チーム。春日部共栄高は、セッター村山幸祐の繰り出すトスや、リベロ橋本和也の安定した守りを起点に、1年生の坂本貴啓も攻撃面で加勢し、決勝のプレッシャーを感じさせない軽快なリズムで2セットを連取する。だが、昌平高もちぎれんばかりに腕を振り抜く棚澤キャプテンの熱さがメンバーに伝播し、驚異的な粘りで続く2セットを奪い返してタイに。しかし最終第5セットは、それまでクールに自分の仕事に徹していた伊藤キャプテンが徐々に感情を表に出し始め、自らの連続得点によりじわりと昌平高を引き離し、最後は自身のスパイクで念願の勝利をつかみ取った。
試合後、伊藤キャプテンは「自分一人の力ではなく、チームのみんなで戦ってきました。その成果がこの試合で出て、勝ちにつながったのかなと思います」と上気した笑顔で振り返った。指揮を執った野口優監督は、「(準優勝に終わった)インターハイ予選はあと1点が取れずに悔しい思いをしましたが、今日、最後の1点を取りきった選手たちは本当によく頑張ったと思います」と語り、チームの成長に目を細めていた。
■試合結果
11月8日・女子決勝
細田学園高 3(25-16、26-24、20-25、25-11)1 春日部共栄高
11月9日・男子決勝
春日部共栄高 3(25-20、29-27、19-25、31-33、15-11)2 昌平高
取材・写真/村山純一、廣田充則(編集部)
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