サイトアイコン 月バレ.com【月刊バレーボール】

男子U17日本代表は「戦う集団」になれるか。今夏のU17世界選手権大会へ合宿を重ねる

アイキャッチ

 バレーボールの男子U17日本代表は今年8月にドーハ(カタール)で開催予定の「2026男子U17世界選手権大会」に向けて強化を進めている。今年1月の第1回合宿に始まり、3月下旬には2回目となる合宿を行った。

 

本番はイラン、ブラジル、ブルガリアとの対戦が決定

 

 候補選手のリストには、主に昨年のU16アジア選手権大会で4位の成績を収めた面々が名前を連ねている。ただしチームづくりやメンバー選考に対する考え方は昨年と変わる、とはチームを指揮する笠松剛先生(幸高〔神奈川〕)の言葉だ。

 U16アジア選手権はまず上位に入って、翌年のU17世界選手権の切符を獲ることが求められます。仮に出場権を獲得できなければ、国際大会を経験するという強化策の一つが消えてしまうわけですから。大会に参加する12名のメンバー選考に関しても、U16アジア選手権はその時点で実力のある選手を9名に将来性のある選手を3名、という考え方でした。そこからU17世界選手権はその配分を半々にして、成長しだいではシニア日本代表に入る可能性がある選手を積極的に選抜したいと考えています」

 

 主には2026年度の高校1年生らの世代から有望株をピックアップすることになる。また高校2年生でも大会レギュレーションに即した生年月日の選手や、中学3年生でもすでに高いポテンシャルの片鱗を見せている選手らも候補に入るなど、大会本番にむけて選考は重ねられる。

 

 

U16-17日本代表の指揮を執る笠松先生

 

 

 もっとも318日には大会の組み合わせが決まり、日本は予選グループ戦でイラン、ブラジル、ブルガリアと同組になった。なかでもイランは昨年のU16アジア選手権で準優勝を飾り、日本も準決勝で対戦。そこではストレートで敗れている。イランのシニア代表は世代交代を図るなかでかつての勢いを一時期は失っていたものの、圧倒的なサイズと高いクオリティーは変わらず。アンダーエイジカテゴリーの強化体制も敷かれ、昨年はU21代表が世界一に輝くなど、どの世代においてもまぎれもなく脅威だ。昨年の記憶をU16日本代表でキャプテンを務めたリベロの小田切絃貴(松本国際高〔長野〕2年)はこう振り返る。

 「イランで印象的だったのはサーブです。とにかくスピードが速くて、かつ力強い。サーブレシーブをフロントゾーンに集めることができず、クイックを使えなくなり、ハイセットのトスは身長2m級のブロックに簡単にしとめられました。1本目のパスの精度と、サイドへの速いテンポの攻撃を合宿で磨いていく必要があります」

 

 加えて、サイドからの攻撃を生かすためにもクイックを絡めることは必須。「シニアの日本代表と同様の戦い方で世界と渡り合わなければ」と笠松先生は語り、セッターの選考に際してもミドルブロッカーの使い方は一つのポイントになっている。

 

 昨年のU16アジア選手権で諸外国と対峙することを肌で感じているのは選手たちにとって一つの財産といえるだろう。けれども、それを手にしただけでは意味がない。次に生かさなければ。小田切はU17日本代表の第1回合宿でばつが悪そうに語った。

 U16アジア選手権大会を経験したメンバーが、そこでできなかったことが自分たちには足りないとわかっていたはずなのに、初めて合宿に参加した選手たちへ伝えることができていなかった。そのことを先生から指摘していただき、今は僕たちが中心となって合宿に取り組めています」

 

 

リーダーシップを発揮する小田切

 

【次ページ】「人間性が素晴らしい」と評価も、選手たちへ促すは戦う姿勢

8月の大会本番へ選考と強化が重ねられる

 

 

「人間性が素晴らしい」と評価も、選手たちへ促すは戦う姿勢

 

 場合によっては、大会本番は昨年とメンバーが大きく変わるかもしれない。夏の時期はインターハイを筆頭に各年代の国内大会が催され、力のある彼らは自チームでそちらに参加することだってありうるからだ。けれども重ねていく合宿の中では「U16アジア選手権を経験している選手が、その姿勢や心持ちをU17世界選手権に臨むチームへ継承してほしい」と笠松監督は期待している。ただし、その口からは物足りない様子がうかがえる。

 U16アジア選手権でも、例えば対戦したイラン、インド、それに優勝したパキスタンは戦う姿勢がみなぎっていました。彼らにとってバレーボールはすでに自分の人生を左右するもの。場合によっては生きるすべがなくなるわけですから、それはもうがむしゃらに勝ちにきていました」

 

 そうした姿勢は実際に選手たちも感じていたところ。U16アジア選手権の3位決定戦で敗れたインドに対して、日本は2日前の順位決定ラウンドで勝利していた。だが…。

 「相手は一度負けていただけに、最初から捨て身で向かってきたと感じました。もうどんどん攻めてきましたから、試合が始まった時点で力関係はイーブンではなかったと思います」(小田切)

 

 油断、疲労、戦術、対応力…。理由を挙げればきりがないが、その経験があるからこそ小田切は「U17世界選手権に向けて徐々に意識が高まるようでは遅いので。常に心がけることを徹底したい」と言葉に力を込めた。笠松先生は言う。

 U17日本代表の候補たちは…、人柄のよさを感じます。人間性が素晴らしい。けれども、アタッカー陣にしても『自分が決めにいく』『勝負を決めてやるんだ』という姿勢はまだまだ足りないのが正直な印象で、チーム全体としても“戦う集団”になれていません」

 

 

合宿への参加メンバーたちへ戦う姿勢を促す様子も

 

 

 合宿でも実戦形式のメニューではコーチ陣から「ゲームは戦うための練習だ!!」というげきが飛んだ。候補選手たちは自チームで主力を担っている、その背景からのジレンマもそこにはある。

 「例えば小西出隼翔(札幌大谷高〔北海道〕1年)や手塚純矢(福井工大附福井高〔福井〕1年)はエースだからこそ、『自分が下手にミスをしてはいけない』という思いから、ゲーム中も乱れたトスを相手コートに置きにいく様子が見られます。ですが、それではスケールがどんどん小さくなってしまう。今の段階で、そしてこれから世界を相手に戦っていくにあたっては、まずは壁にぶち当たるぐらいの姿勢でアタックを打ってもらいたい。そのほうが次につながります。

 たとえ、このカテゴリーで結果を残すことは難しくても、世界を経験して次のカテゴリーに上がったときやステップアップしたときに、選手たちがここで芽生えた意識を失わずにプレーしてくれたらと願っています」(笠松先生)

 

 アンダーエイジカテゴリーは将来的なシニアへつながる取り組みであり、継続的な強化と今ここで結果を求めることを一概に天秤にかけることは難しい。けれども小田切が「U17世界選手権ではメダルを獲得したい」と意気込んだように、大会に参加する以上は勝ちたい思いを持っているのは誰もが同じ。そのためにも戦う集団へと成長し、まずは今夏、世界の舞台へ打って出る。

 

 

 将来の日本代表へ。可能性を秘めた選手たちが研鑽を積む

 

※原稿内の所属・学年は2026年度/写真はいずれも今年2月の第1回合宿のもの

 

(文・写真/坂口功将)

 

■令和7年度全国中学生選抜男子がイタリア遠征へ。「最後の最後まで悩んだ」セッターの選考ポイントは

■令和7年度全国中学生選抜の女子が海外遠征で大会4連覇。MVPの大西雪路「どうすれば成長できるかをみんなで考えた」

■U16男子日本代表 アジア選手権3位決定戦はインドにフルセットの惜敗 4位で終了もU17世界選手権出場権を獲得

■男子U16日本代表 手塚純矢(V-NUTS)の2025年。「全国ヤングクラブ大会では自分のベストパフォーマンスを」

■U16男子日本代表 アジア選手権順位決定ラウンドでタイとインドに連勝し準決勝進出

 

【ギャラリー】男子U17日本代表の合宿の様子(第1回選考強化合宿)

モバイルバージョンを終了