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8大会連続全国ベスト4以上 西畑美希監督(就実高)がトライした新たな指導スタイル 「選手がついてこなければ、やり方は間違っている」

昨年度の春高で準優勝し、3年生と記念撮影をする西畑美希監督(右端)

福村心優美(大阪MV)ら下級生時から得点源を担ったメンバーが卒業しながらも、昨年度は国スポを連覇するなど3つの全国大会でメダルを獲得した女子の就実高(岡山)。その強さの秘訣を、西畑美希監督に迫った。指揮官として譲れないこだわりと柔軟性が、8大会連続で全国ベスト4以上という輝かしい成績につながった

 

 

 

昨年度の春高で準優勝し、3年生と記念撮影をする西畑美希監督(右端)

 

春高で許した

Aパスとラリー

 

――今年の春高では4人の3年生を中心に準優勝。決勝では金蘭会高(大阪)にストレートで敗れましたが、前チームから得点源が抜けて始まったシーズンで、大きく成長した姿を見せました

 最後に逃げなかったところがほんとうによかったです。特に仙波(こころ〔SAGA久光〕)以外の3年生はこれまで、自分が打てないとき、チームがうまくいかないときに逃げる癖がありました。でも、春高ではすごい二段トスでも打ちにいった比留間(美晴〔早稲田大1年〕)のように、ほんとうに逃げずに、積極的にプレーしていました。決勝の1セット目は比留間が、最後は牛田(音羽〔関西大1年〕)がスパイクをネットにかけて終わりましたが、私はあれでいいと思っています。思いきって打ってダメだったら、「もういいじゃん、勝負したし」と思える。後悔がないし、満足です。最後は「この4人でよかったね」という会話をしました。

 でも、このメンバーで、誰が私たちが決勝までいくと予想しましたか? 中国大会は3位で、なんでこうなった?(笑)

 

――西畑監督自身は昨年8月に右ヒザの手術でチームを離れた期間があったりと、これまでとは違う1年でした

 今年(昨年度)は私にとって未知の世界だったかもしれません。手術をした期間にいろんな本を読んだり、話を聞いたりして。チームを客観的に見て、これまでとちょっとやり方を変えようかな、と思いました。

 今までのやり方より、(自分が)折れる。やるべきことはやって、厳しさはもちろんありますが、手を抜くのではなくて、どこかを妥協する。今まである程度成功してきているなかで、それで結果が出るのかはすごく恐い部分でした。でも、そういったやり方もあるんだな、と。監督としてはほんとうに学びますね(笑) 毎年違う。全然違って難しい。これからはもっと違ってくるんだろうか。

 

――やり方を変えようと思ったきっかけはなんでしたか?

 (去年の)夏までは何がしんどかったかというと、選手から「絶対に結果を出してやろう」という思いを感じられなかったことです。選手がそうではないのに、「地元でインターハイ(中国インターハイ)があるから絶対にメダルを取るぞ!」と言っても、そこまでやる必要もないよな、と思って。

 だって、やるのは選手ですから。監督も選手に合わせていかないといけません。自分を貫いてやったところで、結果が出なくて選手がついてこないのであれば、そのやり方は間違っている。その中で結果を出していけるやり方を見つけるしかないですよね。

 もちろん、全部がそういうわけにはいかなくて、就実では日常生活もきちっとできないと、バレーもできないと言っています。どこまでを緩めてどこを許さないか。それは練習もそうです。その(難しい)状況が、試合できますからね。

 

 

ベスト4入りした昨夏のインターハイ。第一目標のメダルは獲得した一方で、準決勝の福岡女学院高(福岡)戦では悔しさも味わった

 

――「折れた部分」で言うとどんな例がありますか?

 試合は生きるか死ぬかなので、私からもピリピリ感が出ていたと思いますが、コミュニケーションのピリピリ感をなくしてみたり。どこかに連れて行って楽しいこともしてみたり。それを 1年や2年、ずっとやっていたらダメになると思いますが、ここ一回限りの春高でやってみました。

 

 今回のやり方で来年やったらいいかというと、それはまた違う。来年には来年のやり方があります。その年は何が合うのか、どこかで早く見つけないといけません。

 

――プレー面では、今年の春高でもそういった部分はありましたか?

 Aパスです。これまではセッターをターゲットに、と散々言ってきたけど、「Bパスはうーん…、我慢!」って(笑)

 

――絶対にAパスを返す、と言われれば、選手たちは必要以上に力が入りそうです

 Aパスに決まっている、というサーブも、それは弾くよね、というような捕り方をする選手がいました。でも、その選手に試合で「Aパス、Aパス」と求めると、余計に返りません。だから、アタックラインに返ればOK、と。あとはラリーを OKにしました。

 

――これまでは「一発で決まるスパイクがラリーになっている」と嘆いていた年もありました。それほど、ラリーをすることには厳しかった印象があります

 今までは、Aパスと必要以上にラリーをしないことは絶対でした。なぜラリーがダメかと言うと、金蘭(金蘭会高)さんなどの強いチームは打ち損ねや拾い損ねを見逃してくれず、二度とチャンスがこないと思っているからです。ラリーをしているとミスが出るし、何より時間が長くてしんどいので(笑) 

 だけど、今年はそれを我慢しました。ラリーをしながら自分たちのペースへ持っていけるかどうか。春高の準決勝(対大阪国際高〔大阪〕)は相手も粘ってくると思って、ラリーをしながらチャンスを見つけていきましょう、と。Aパスとラリーを許したのは今回が初めて。私も我慢強くなりました(笑)

 

 

昨年度の春高では、#1仙波を中心にラリーから得点につなげた

 

3年生がつくり出した

練習のスタンダード

 

――その一方で、西畑監督が譲れない部分はありますか?

 最後までボールを追わなかったり、手を抜いたり、いい加減なプレーは大嫌いです。私がなぜ3人レシーブでボールを出すかといったら、ボールを打ちながらその選手がしんどい場面でどんな姿を見せるのかを確かめています。自分が OKと思う基準にいるかどうか。それができていないチームが、メダルを取ることはありませんよ、と。レギュラーになる人には、そこを超えてもらうように、あの手この手で持っていくしかない。自分の感覚なので、言葉にするのは難しいですけどね。

 

 監督としての経験をすればするほど、起こることを予測できたり、プラスになることは多いですが、慎重になりすぎることもあるかもしれません。例えば去年の春高岡山県予選決勝は(大学受験のため)比留間がいませんでしたが、選手のほうが平気でした。私は予選で負けたこともあったり、深澤(めぐみ〔SAGA久光〕、つぐみ(東レ滋賀))たちのときだって 、1セットを取られたりして、予選の怖さを知っています。最悪のケースを想定していないといけなくて、その状況が来ないように練習にも手が抜けませんが、この子たちはそれを知りません。経験が邪魔をするときもあるなと思いました。

 

――メンバーが変わっても、8大会連続のベスト4以上と全国上位に名を連ね続けています。その秘訣は何でしょうか?

 わかりません、教えてください(笑) でも、選手たちがここ(べース)をつないでくれたんだと思います。私が(就実高にコーチとして)戻ってきたときは「これをやっていても勝てないでしょう」という練習の基準でしたが、今は少しずつ勝ちだして、そのスタンダードが上がったと思います。それがいちばんで、これを落としてしまったら二度と勝てない。メダルを取れるスタンダードが切れないことが大事だと思います。

 

 振り返れば、小川(愛里奈〔大阪MV〕)たちがいた(2016年度)ころは、「勝つ、勝つ」、「結果、結果」とそればかりでした(笑) でも、今はそう思わなくなったのも逆にいいのかな、と思います。

 

 

1年生時からレギュラーのセッター加藤由詩(中央)は、3年生として先頭に立ってチームを引っ張る

 

――深澤ツインズを擁して春高連覇した2021年度の経験も大きいのでしょうか?

 あのときはやりきった感がありましたね(笑) 周りから「(深澤)ツインズ、ツインズ」と言われて、どこを歩いても「就実が勝って当然」と言われるのがすごく嫌でした。でも、今はそう言われても「どうもどうも。勝つときもあれば、負けるときもあります」って(笑) 気づいていても、気づかないふりをしています。

 

――今春にはレギュラーの3年生4人が卒業。それぞれの代の3年生がつないできた伝統を、これからいかにつなげるかが大事ですね

 それが今の2年生(現3年生)にはまだありません。1年生(現2年生)でも吉本(奏)がどうか、というところです。

 

 

 1年生からレギュラーの加藤由詩キャプテンが引っ張る新チームは、岡山県新人大会決勝でセットを落としながら優勝、中国新人大会では5位と苦しいスタート。それでも、昨年度の全中選抜として、イタリアで開催されたユース世代の国際大会「Nations Winter Cup」でMVPに輝いた大西雪路ら、期待のルーキーも加わり、まずは夏の大舞台を見据える。

 

取材/田中風太(編集部)

写真/山岡邦彦(NBP)、中川和泉、山田壮司

 

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