「ブロックは絶対に武器になる」女子日本代表がアンダーエイジカテゴリーから取り組むディフェンス強化の実態と指導者の見解
- アンダーエイジ
- 2026.06.19
「今年はブロックを改善したい」と女子日本代表のアクバシュ監督
今年最初の大型国際大会「FIVBネーションズリーグ2026」を戦っている女子日本代表。指揮を執るフェルハト・アクバシュ監督は今年5月11日、今年度のキックオフ会見で就任2シーズン目を迎えるにあたりチームづくりのポイントをこう語った。
「(就任)1年目はまずアタックを改善しようと努力してまいりました。そこに関しては前年度よりも上がったと感じています。そこで今年はブロックを改善したいと考えています。些細なことかもしれませんが、しっかりと改善していくことで試合の質は変わってきます。とはいえ日本は体格が小さいだけに、それほど大きな改善は見られないかもしれませんが、それでもブロックにフォーカスしたいです」
日本バレーボール界において男女問わず、世界と戦ううえでサイズの壁は避けては通れない。日本代表も大型化が進んできているとはいえ、ブロックの上からアタックされることも茶飯事だ。けれども女子日本代表はブロックを強化することに着手している。
もっとも、そうした動きはすでにアンダーエイジカテゴリーでは昨年度から見られたものだった。今年1月初旬に令和7年度全国中学生選抜は海外遠征メンバー12名が確定してから初めての合宿を実施。女子は合宿2日目の練習メニューの大半を、ブロックに充てた。そこでは腕のかたちや出し方、ステップの踏み方など細かい部分から取り組んでいた。限られた時間でも成長や変化が見られたと喜ぶのは、アドバイザリースタッフとして携わり、ユース世代の女子日本代表で指揮を執った三枝大地氏だった。
「自分たちがこれだけブロックができるんだ、ブロックの高さが出るのだと気づいてもらえたことがよかったと思います。ほんのわずかな時間でも大きな変化があった。素直な選手たちばかりだったという点もありますが、そこはこちらの目論見どおりになりました」
石川真佑や荒木彩花らをアンダーエイジカテゴリー日本代表時代から指導してきた三枝氏
聞くに、当時中学3年生の選手たちでも、高校生に匹敵するほどのブロックが身についたという。なぜ、まずはブロックから着手したのか。それは世界と見据えたうえでのねらいがあった。
「国内であれば、相手の打点もそれほど高くありませんから、抜けてきたボールもある程度はディグで対応できるものです。けれども海外の選手のアタックは高さもありますから、ボールの角度も日本人選手よりも鋭いものになります。また打球のコースにしても前後左右の幅が広く、そしてパワーもありますから、ディグだけでは対応が難しくなります。となれば、ブロックでどれだけアタックを抑えられるか、コースを限定させられるかが試合では国内以上に必要になってくるわけです」
このときの全国中学生選抜女子のメンバーは同年代でいえば比較的サイズに秀でており(それでも180㎝台は2人だけだったが)、所属先のチームでは長身を生かしてプレーしていた。ただ、それがブロック力に直結していたとは言い難い。
「サイズがあるからこそ、ある程度ジャンプすればボールに触れることができていました。ですが、ここから海外を相手にプレーするうえで、それ以上のアタッカーを目の前にした場合は、ブロックを跳ぶ位置の基準どりを定めたうえで、なおかつ、しっかりと高いブロックを繰り出さなければならない。つまり、やるべきことが増えるんです。ですから、まずは自分たちのブロックにどれだけ潜在的な高さが秘められていたかを知ってもらうことから始めました」
今年1月の全国中学生選抜の合宿にて、ブロックのメニューに励む様子
シャットやタイミングだけではない、ブロックへの評価
では、ブロックを強化することで何が変わるのか。
「ブロックの可能性を知ることができれば、ディグに関して、さらにできることが増えるんです」
日本は元来、ディフェンス面とりわけレシーブ力には定評がある。その強みを生かして攻撃回数をいかに増やすかが、日本代表が世界と戦ううえで「絶対的なテーマになってくる」とは三枝氏の見解だ。
トランジションアタックの機会を増やす前提にあるのは、トータルディフェンス。サーブの狙いを起点として相手の攻撃を絞り、ブロックとレシーブの関係性を構築することで相手の決定機を奪うこと。全国中学生選抜に関していえば合宿の時点で「まだまだそのレベルに至っていませんが、最終的にはそこにたどりつきます」と三枝氏は話し、中学生たちへブロックの考え方をシニアの映像をまじえながら説く様子も見られた。そこで説明したこととは。
「ついついブロックは、シャットしたか、シャットしていないか、で見られがちですが、トータルディフェンスを考えた際にたとえノータッチできれいに抜かれたとしても『ナイスブロック』と評価できるブロックがあるものです。真正面でディグができたならば、その理由にブロックの位置どりや腕の出し方が挙げられることだってありうるわけで。そこは中学生世代から理解してもらいたい部分です」
三枝氏の言葉にあるようにブロックには、止められたかどうか、間に合ったかどうか、という見方もある。ただ、ブロックが遅れたとしても「その瞬間の背景を見極める必要があります」と言う。
「例えばブロッカーがゲス(予測)をせず、最高の反応をして全力のスピードで足を運んで跳んだとして、それが間に合わない。相手のセット(トス)がそれよりも速ければ、そうなりますよね。となれば、『そのブロックがダメだった』と評価はできません。そこで抜けてきたボールはもう後衛がレシーブでなんとかしなければならないですし、その時点では相手のほうが上回ったという事実があるだけ。そこを埋めていくためには、筋力をつけてスピードを速めるのか、判断力を磨くか。また次の段階で取り組むことになるわけです」
なお、ブロックに跳ぶタイミングが遅れ、体勢が崩れていようとも、手の出し方が完璧だった例もある。そのお手本として三枝氏は、かつて“ブロックの名手”とうたわれた男子イラン代表ミドルブロッカーのセイエドムハンマド・ムーサビエラギのプレー映像を女子中学生たちに見せることで、さらなる理解を深めさせていた。
女子U17日本代表候補の鎌田(左)も各世代の強化合宿でブロックと向き合っていた
若年世代から意識を持って取り組むことが、いずれシニアでの武器となる
果たして全国中学生選抜の女子は今年2月の海外遠征で出場した国際大会で優勝。大黒柱を担った身長181㎝(当時)のミドルブロッカー、鎌田一歌(現・下北沢成徳高〔東京〕1年)は「海外勢のとてつもない高さを持つアウトサイドヒッターに対して、ほぼタッチがとれた」と三枝氏は評し、さらにチーム全体としても「少なからずブロックがものにできている手応えを選手たちは覚えたのではないでしょうか」と言えるほどの成果を残した。
そうして全国中学生選抜を皮切りに、中学生世代の強化においてはブロックにも力を注いでいる。同じく2月に実施された「令和7年度全国中学生長身選手発掘育成合宿」でも早々からブロックに着手。女子の指導を統括した青木慎太郎先生(上一色中〔東京〕)は「参加した選手たちの長所である身長の高さを生かせるメニューを考えた際に、まずは自信を持たせたいという狙いがありました」とその理由を語り、続けて「吸収力のある選手も多く、大きな変化も見られた印象です」とほほえんだ。
アンダーエイジカテゴリーから向き合うブロックの考え方。それはシニアにも通ずるか、という問いかけに三枝氏は「もっともっと持たなければいけません」と強調した。
「この年代からブロックに対する意識を持つからこそ、彼女たちがいずれシニアに進んだときにそれが標準装備になるわけです」
そうは言っても、シニアになれば女子でも最高到達点が340㎝を超える、トルコ代表のメリッサ・バルガスやイタリア代表のパオラ・エゴヌら圧倒的な高さを備えるアタッカーと対峙することになる。それでも日本代表としてブロックを磨くことが、たとえサイズで下回るとしても武器になるのだろうか。三枝氏は即答した。
「絶対に武器になります。それもリードブロックを徹底することで。
たとえどれだけ高さがあろうとも、すべてのボールをブロックの上からコートの奥へ打ってくる選手はそうそういません。エゴヌ選手でさえ、確かに圧倒する高さからコースを打ち分けますが、それでもそこにブロックがあれば、少なからず避けて打とうとするわけですからね」
世界と比べて体格で劣る日本が、世代を超えて磨こうとしているブロック。レシーブだけでなく、ブロックも評価される未来がくることを願ってやまない。
今年2月の「令和7年度全国中学生長身選手発掘育成合宿」でブロックのフォームづくりに取り組む中学生たち
(文・写真/坂口功将)
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