
「私がオリンピックに連れていくんだ」と決意し、石井美樹とペアを結成
目指す場所への道すじがくっきりと映ったとき、その一歩を踏み出すかどうか。答えは、イエスだった。
今年5月のジャパンビーチバレーボールツアー2026第1戦 名古屋大会を制したことで9月の「第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)」の出場が内定した伊藤桜(日本通運)。以降の大会も、ペアを組む沢目繭(ミライラボバイオサイエンス)とともに参戦し、秋に向けて強化を進める…、かと思いきや、7月11日〜12日に横浜赤レンガ倉庫(神奈川)で開催された「ジャパンツアー2026 第5戦グランドスラム 横浜赤レンガ倉庫大会」には石井美樹(ラストウェルネス)と出場していた。伊藤はその理由をこのように明かした。
「(沢目)繭さんとはアジア競技大会に出場してメダルを獲得することを目標にしてペアを結成しました。そうして出場が内定したところで、ここからどうしようかと考えていたタイミングで(石井)美樹さんから声をかけていただいたんです」
伊藤自身が抱いていたのは「オリンピックに出る」という願いだ。だが社会人になり、ビーチバレーボール選手として活動するなか、オリンピックはどこまでいっても夢だった。
「この舞台でプレーするのはほんとうに最高なんだろうな、と想像していました。それこそ憧れに近かったですね。そうして社会人3年目になって日本代表の方々と一緒に合宿をさせてもらったり、私も国際大会を経験するうちに、『自分の実力でオリンピックの舞台にペアを連れていきたい』という思いが強くなりました。夢ではなく、明確な目標に変わったんです」
その折に声をかけてきたのが、オリンピックには東京2020大会、パリ大会と直近2度出場している石井だったというわけだ。
「美樹さん自身も次のオリンピックを目指していて、同じ目標を持っていましたから。それに2度の出場を経験した選手の隣に立てるプレーヤーは限られています。私にとってチャンスでしたし、『私が美樹さんをオリンピックに連れていくんだ』という気持ちでここから戦えたらいいなと思って返事をさせてもらいました」
「できることが確実に増えている」と実感を口にする伊藤
ペアを結成することが決まったのが6月中旬のジャパンツアー第2戦グランドスラム グランフロント大阪大会を終えてから。この1ヵ月間は、アジア競技大会に向けた沢目と並行して、ときには2部練を設けながら調整を進めてきた。
そこでは多くの学びを得ることができている、と伊藤は目を輝かせる。
「私のちょっとしたパスのミスや、セットアップ(トス)の入り方など、これまでだと見逃していたような細かい部分に関しても『今のはダメ』『もう一回、やり直し』と言ってもらえています。そこまでやらないとオリンピックはたどり着けない舞台なのだと、一緒に過ごしているなかで実感します。まだまだ『あれもこれもできない』と自信をなくしそうになるんですけど、実際に試合を振り返ると、できていることは確実に増えています」
そうして石井と臨んだ最初の公式戦がジャパンツアー第5戦グランドスラム 横浜赤レンガ倉庫大会だった。「美樹さんとペアを組んで試合に出るということで、周りからも注目されていると耳にしていましたが、やってきたことに自信はありましたから。そこはどっしりと構えて大会を迎えられました」と伊藤は言う。
「どのチームよりも練習をこなしてきた自信もありますし、アタックも何時間も打ち込んできましたから!!」
果たして、伊藤/石井組は1回戦こそ不戦勝(相手チームの棄権)だったものの、準決勝では沢目/菊地真結(トーヨーメタル)組を2-0(21-19,21-16)で退けて決勝に進出する。決勝は柴麻美(帝国データバンク)/村上礼華(ダイキアクシス)組に0-2(16-21,13-21)と数字上では完敗に映る結果となったが、それでも手応えは十分。
「これは絶対に拾える、というボールを拾えていましたし、練習を重ねていけば、次に対戦したときは勝てると思います」
そう言ってニコリとほほえむ石井から温かい視線を送られた伊藤も収穫を口にした。
「試合では美樹さんがレシーブして私がセットアップに回る場面が想定しているよりも多くありました。ただ練習では私のトスが安定しないことが課題で、なかなかいいアタックを美樹さんに打ってもらえていなかった。だからこそ、この大会では要求されるトスを常に一定して上げることを念頭に置いていました。その点に関しては自分の中でも『あ、いい』と感じながらプレーできていたのでよかったです」
百戦錬磨のベテランとともに伊藤はこの先も試行錯誤を重ねながら、自身のレベルアップと、そしてペアとしての練度を高めていく。その道のりの終着点は2028年、アメリカのロサンゼルスだ。
(文・写真/坂口功将)
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