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「コロナ禍の中、さらに深めたチームの絆」〜敬愛学園高校(前編)〜

  • 学生バレー
  • 2020.12.22

今年唯一の開催となる全国大会

春高予選で優勝

しかし、選手たちは喜びを露わにしなかった

「率直にうれしい。けど、喜び方を忘れてしまったというのか、それくらい久々な感覚でした。選手たちも、素直に喜べなかった。試合会場は大幅に観客を制限し、全員マスクをしていて異様な空気の中でした。選手たちに、手放しで喜ばせてあげたかったですね。でも大会が開催できただけでも感謝しています。いろいろな事を思い返すと涙が出そうになります」(上原典人監督)

11月8日、成田高等学校で行われた第73回全日本バレーボール高等学校選手権大会。千葉県代表決定戦。女子決勝は、敬愛学園高が、市立船橋高にセットカウント3-0で勝利。2年連続10回目となる「春の高校バレー」出場を決めた。

関東大会、全国私学大会、インターハイ、国体、あらゆるものがなくなってしまった異例の2020年、そんな中、選手たちの唯一の目標が「春の高校バレー」だった。それなのに、全身で喜びを表さない。そこには選手たちなりの理由もあったわけだが、特別な空気が影響していたこともゼロではなかっただろう。

3年生チームで結束し、臨んだ春高予選

今年唯一の全国大会に向けて、チームに関わる全員の気持ちを背負っての戦いとなった

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日々の練習、インターハイ、国体…

当たり前の日々がなくなっていく中

不安を感じていた選手たち

新型コロナウイルスの影響は甚大である。これだけ多くの人が“できるはずだったことができない”状況に遭遇したことは、歴史上、戦争以外になかったと言ってもいい。とりわけ学生にとっては、苦難の時であった。全国の高校生と同じく、敬愛学園高も入学式を行うことができず。学校再開は6月、部活再開もそのころだったという。12人いる3年生の1人で、マネージャー業とプレーヤーを兼務する齊木まつ莉は、その日のことを「今までの練習は当たり前ではなかったんだなと思いました」と振り返っている。

「一番不安だったのが、自粛期間中、チームの絆がどうなってしまうのかということ。1年生は1度も学校生活を送れていないし、部活もできなかったので実際に練習ができるようになってからが不安でした。(練習が再開した時)今までの練習は当たり前ではなかったんだな、とすごく思いました。いつも練習では円陣を組んでから、校歌を歌うのですが、それができることも幸せだったんだなとすごく感じました」

「今までの練習は当たり前ではなかったんだな…」、練習再開の時にそう思ったという齊木。

自粛期間があったからこそ、みんなとの時間はより濃密なものとなった

いつも会っていたチームのメンバーに、会うこともできない。揃って練習ができない。日本一を目指す選手たちにとって、それがどれだけ不安を掻き立てることだったかは想像に難くない。追い討ちをかけたのは、インターハイ、国体の中止の知らせだ。

「まず新人戦で優勝して、関東予選をやって優勝して、インターハイに臨んでという予定がなくなってまった。それはチームとしても、すごく悔しかったことでした。去年、自分たちは全国大会に全部出場させてもらいましたが、そこで結果を残すことができなかった。だから、全国で結果を残すということを目標にしていたのです。ところが部活もできず、大会すら無くなってしまい、めちゃくちゃ落ち込みました。全員のモチベーションが落ちて、『春高の開催もわからない』と言われていて、キャプテンとして、みんなをどうまとめるべきかというのは悩みました」、鈴木杏梨キャプテンは当時の思いを語った。

大会が次々となくなった。その時の思いを「すごく悔しかった」という言葉で表現した鈴木キャプテン。

みんなが苦しむ中で、キャプテンとしての責務を果たした

活動制限の中で

選手、監督、コーチ

それぞれが動き出していく

選手たちの動揺は痛いほどわかる。そんな中、積極的に動いたのが、上原監督が“チームの心臓”と全幅の信頼を置く釜井涼子コーチである。

「会えない中で、選手全員の意識をどう合わせるべきかを考えました。課題を与え頭の整理やイメージづくりをさせたが、これだけをやっていても全員で共有はできない。どんな形であれ顔を見ることが一番だな、とZOOMやLINEで選手たちにグループを組ませて毎日のコミュニケーションを促しました。3年生は、自分たちでどうにかしないといけないと危機感を感じていた。どうにかそのきっかけを作りたいと思っていました」。

上原監督をして“チームの心臓”と言わしめる釜井コーチ。

様々なアプローチで選手たちの結束力アップを促した

さらに釜井コーチは、選手同士でペアを組み、互いに相手の長所・短所を考えて自主トレのメニューを作るというおもしろい試みも促している。

「例えば、ジャンプ力が足りない人には走るメニューとか、筋力が足りない人には筋トレを増やすとか、それぞれが客観的に相手の課題を分析し、互いにメニューにする流れです。やっていることは別でもフットワークやスキップなども含めて、1日20キロが目安と言われていて、大体みんな走っていました(笑)」と齊木。大木春香は「練習ができるようになった時に、今までどおりに、それ以上に練習ができるように、力が出せるように自宅でのトレーニングを頑張っていた」と振り返った。

「練習ができるようになった時に、今まで以上の力が出せるように」

自主トレに励んでいたという大木は予選を戦う中でキーマンの一人に。監督もその成長を評価している

選手たちの不安同様、上原監督も部活が再開した時に、どんな感じになっているのか不安だったという。とはいえ、いつまでも下を向いている場合ではないと、4月から始めたのが、監督の自宅でのトレーニングだ。感染症を配慮して、電車は使わず。順番を組んで家族の車で生徒を送ってもらい、話やトレーニングはもちろん、食事ノートなどでコンディションもチェックした。

できる範囲で頑張ろう−−その時間は、選手たちにとっても貴重なものとなった。

 

自己管理できるように栄養について学び、日々の食事内容をノートに記していく。

また体調面も文字にすることで見える化していった

興味深いのは釜井コーチの発案で行ったビデオ制作である。

チームのつながりを強くするため、まず行ったのはAKB48のヒット曲『フォーチュンクッキー』に合わせての、チーム全員でのダンスを動画。これには、選手の家族も協力して一緒にダンスをし、さらに上原監督も選手を喜ばせようとダンスを披露した。さらに、「ろくすっぽパソコンも触れないのにね」と笑う上原監督が動画を制作する。それは大事MANブラザーズバンド『それが大事』に合わせて、選手たちへの想いを送るメッセージ動画だった。「そうしたら、今度は選手たちから返信のビデオを作ってくれてね」と笑顔で紹介してくれた上原監督。ところが、選手たちから話を聞くと、それは偶然が重なった結果だったことがわかる。実は、生徒たちは上原監督が着手する前から、“先生に贈ろう”とビデオの撮影・編集を始めていた。なんと選んだBGMは、同じ大事MANブラザーズバンド『それが大事』! 期せずして同じ曲を選択する。それだけ結びつきが強かったからこそ起きた偶然の一致と言えるだろう。

<互いの思いを話す>、<トレーニングをする>、<みんなでビデオを作る>、あらゆることをして、分解しそうなチームを繋ぎ止めていた。

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「勇住邁進〜春高の舞台、臆することなく一心に突き進め!!〜」敬愛学園高校(後編)


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