富士通・中川/グレイテストショーマンは永遠に
- V男子
- 2019.05.05

中川はバレーボール選手であると同時に、会社勤めをするサラリーマンだ。だが、「試合を見に来てくれる人にとって、僕たちがプロであることに変わりない」と断言する。
そんな中川の「大ファン」といってやまない一人に、堺ブレイザーズの「なおき」さんがいる。プロのお笑い芸人で、現在は堺の『応援部プロデューサー』という肩書きを持ち、会場を盛り上げている。中川とはV.LEAGUEのオールスターゲームで交流が生まれ、そのサービス精神に尊敬の念を抱いたという。
「最初にリーグで彼を見たときは衝撃的でしたから。彼のすごいところは、一見ふざけているように見えて、実際は要所で客席を見て、ファンと目を合わせて、“魅せる”こと。
それに、キチンと計算されているんです。私も彼のサービス精神に感動して、オールスターゲームで一緒に雰囲気を作り上げることがありましたが、事前に“こう思っている”と伝えてくれたりと、それはもう、芸人どうしがするような掛け合いでした」
黒鷲旗では大会2日目にチームが対戦し、堺がフルセットの末に勝利したものの、中川が観客席を巻き込み、もり立てた雰囲気に「試合の後半、ブレイザーズは押されていましたね」となおきさん。試合後には中川と言葉を交わした。
「素晴らしいパフォーマンスをありがとう、と。リーグにおける、ファンサービスの第一人者。心から、お疲れ様でした」(なおきさん)

バレーボール選手としてのピークを悟ったこと、それが引退の理由だと中川は明かした。
「全力で喜んで、走り回って。それも含めて、僕のプレーだと思っていますし、それがバレーボーラーとしての前提としてあるのですが、おそらく全力でできるのが今年くらいだと。ここからは下がる一方で、チームへの貢献も減っていくだろうなと感じたんです」
黒鷲旗では最後まで、アタッカーとしての役目をまっとうした。ライト方面で何度も助走に入り、トスが上がれば、目いっぱいに跳び上がり、ボールを打ち込んだ。そこには一選手としての、意地と誇りがあった。
「僕のことを知っている人でさえ、実はプレー姿を知らなかったりするので(笑)。意外と、ふざけているだけではないんだぞ、って。いちばんはプレーで100パーセントの力を出したい、そう思っています」
もちろんスパイクが決まれば、これまでと変わらず両手を大きく広げ、コートを走り回っていた。相手のスパイクが拾えなければ、大声をあげて悔しさをあらわにした。最後は早稲田大に敗れる結果に終わり、「プレーに満足しているかといえば、満足はしていない」と話したが、チームメイトたちへの感謝の気持ちで胸がいっぱいになった。
これで現役選手を引退するが、「今後もバレーボールに携わっていきたい」と中川は言う。以前には「応援団長をやるよ!!」と口にしたこともあり、これからもチームに関わりながら、まずは“外から”そして“お客さん目線”でバレーボールを見る。そうして気づいたことをチームに伝えて、「ファンの満足度を高めたい」という思いがすでに、彼の中にはある。
誰よりも騒ぎ倒し、そしてバレーボールが大好きなグレイテストショーマン。その心は、永遠だ。(編集部:坂口功将)

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