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バルドヴィン監督が語る西田有志と石川祐希のイタリアでの姿とパドヴァの育成論 今季WD名古屋を指揮

  • 編集部取材
  • 2022.07.25

<2009年男子U19(ユース)世界選手権でU19イタリア代表のアシスタントコーチを務めたバルドヴィン監督(後列右端)。若きフィリッポ・ランザ(⑰)やルカ・ベットーリ(⑭)、ダニエレ・マッツォーネ(⑨)ら、のちのイタリア代表の姿が/Photo:FIVB>

 

最も成長を遂げた選手は? 育成に注力することでチームの進歩につなげる

 

―選手の成長を感じられたときは、指導者冥利に尽きるのではありませんか?

バルドヴィン監督 そう信じてやみません。まず、コーチに必要なことは、選手を“マネジメント”するのではなく、選手を“指導する”こと。最適かつ十分なコーチングを授けることです。もちろん、勝利という結果はうれしいものですが、それは大事なことの、少なくとも一つに過ぎません。それを選手たちにも理解してもらいたいですし、一生懸命に励んでもらいたい。そして、彼らが成長するために私もベストを尽くすのみです。

 

―イタリアでも長年コーチをされてきた中で、ご自身の中で最も成長を遂げた選手を挙げるとすれば?

バルドヴィン監督 そうですね…。非常に悩むところです。誰とも忘れられない時間を過ごしてきましたから…。強いて挙げるならば、現・男子イタリア代表のリベロ、ファビオ・バラーゾでしょうか。彼とはパドヴァで5シーズン(13/14~17/18)をともに過ごしました

 

 まるでマシーン(機械)のような選手でしたね。トレーニング中から常に、高いクオリティーを求めていましたし、決して気を散らすことがありませんでした。それが、彼が成長した要因だと思います。

 

<男子イタリア代表で守護神を務めるバラーゾ(Photo:FIVB)。現在はリーグ王者ルーベに在籍>

 

―パドヴァはセリエAの中でも特に、育成に力を注いでいる印象です

バルドヴィン監督 パドヴァは決して資金が潤沢ではありませんが、その分、しっかりと組織が構築されています。そして、ユースやジュニア世代の選手がチームにとって重要な存在でもあります。当時、私もジュニアチームのテクニカルディレクターとして携わっていました。そこでは毎年、新しい若手選手をシニア(トップチーム)に引き上げるようにしていました。

 

 チームを12、3人のプロレベルの選手と2、3人の有望選手で構成する、という具合でしたね。そうすることで、チーム全体の成長にもつながりますし、同時に、費用をかけることなく強化ができたわけです。このシステムはシーズンを通して、非常におもしろい選手を発掘することにもつながりました。その最たる例が、今では男子イタリア代表に名前を連ねるアウトサイドヒッターとなったマッティア・ボットロです。

 

 彼との出会いは、夏の時期に行われていたU16世代の国内大会でした。私も毎年、その大会でパドヴァのユースチームの指揮を執っていたのですが、そこで才能あふれる彼の姿を目にしたのです。そのとき彼は別のチーム(バッサノ)でプレーしていたので、すぐにパドヴァの編成部に話を持ちかけ、招き入れました。そうしてパドヴァのCチーム、Bチームと着実にステップアップし、来季はチャンピオンチームのルーベでプレーするほどまでになりました。

 

<バルドヴィン監督に才能を見出され、ステップアップを遂げたボットロ(Photo:legavolley.it)>

 

―若手選手とトップチームの選手とでは、指導の仕方も変わってきますか?

バルドヴィン監督 あらゆる点で異なります。ですが、トレーニングの“質”という点ではそれほど差異はなく、むしろ私たちコーチからのアプローチにおいて違いが生じます。例えば、ジュニア世代を指導するときには、選手個々とまた技術的な部分にフォーカスします。一方で、シニアの場合もそれらは大事ですが、チームのシステムにいかに順応させるかが必要になってきます。シニア世代になってもさらに技術を高めることができますし、私たちも選手がそうであってくれると信じているものです。

 

 とはいえ、明確な違いを話すことは難しいですね。ジュニア世代の選手には、成長を続けるためにも楽しみながら技術を磨くことだよ、と伝えています。

 

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 イタリア北部、オーストリアに近い山間の町ベッルーノで生まれたバルドヴィン監督。人口4万人ほどの町で、幼少期から多くのスポーツに触れてきたそうだが、11歳の頃からバレーボールを始めた。主にはアウトサイドヒッターでプレーし、「私のレベルは低かったですよ」と恥ずかしそうに笑う。スポーツ指導の勉強は、体育大学に進学してから。以降、指導者としてはU18/19イタリア代表のコーチを務め、セリエAではパドヴァをスーペルリーガ(1部)昇格に導いた実績を持つ。

 

 とりわけ育成面に定評があり、WD名古屋のチーム関係者も「底上げをもたらしてくれると期待しています」と語る。ネーションズリーグ大阪大会では、出番が多くなかった小川智大に「振る舞いがよかったよ」と、高梨健太には「成長を続けるように」と声をかける姿が見られた。そのまなざしは温かく、成長を見守る父親のようでもあった。新指揮官の下、ポテンシャルの高い有望選手が並ぶWD名古屋がどのように発展を遂げるか、興味深い。

 

(取材・写真(ポートレート)/坂口功将〔編集部〕)

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