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大学日本一の水町泰杜が「最後くらい見に来やぁ」と誘った親友 谷武珍が明かす“幻の対決”と目にしてきた姿

第76回秩父宮賜杯全日本バレーボール大学男子選手権大会(以下、全日本インカレ)を制した早稲田大。同年代を代表するエースと称されてきた、キャプテンの水町泰杜は有終の美を飾った。その水町がプレーする姿を見るために、谷武珍(愛知学院大4年)は会場へ足を運んだ。2人の関係を表すなら、幼馴染、親友、そして栄光をともにしてきた仲間…、どれも当てはまる。その目に映っていたのは――。

 

谷武珍(写真左端/たに・たけよし/愛知学院大4年/身長182㎝/最高到達点310㎝/鎮西高〔熊本〕出身/オポジット)

 

全日本インカレ準決勝を観戦した谷

 

 122日、大田区総合体育館(東京)、全日本インカレ準決勝。その第1セット、早稲田大の水町が東海大のサウスポーエース飯田孝雅を一枚ブロックで仕留める。スタンドで観戦していた谷は目を丸くした。

「『サイドステップで、あれだけ腕出る!?』っていうくらいに高さが出てましたから。それにブロックのかたちも、めっちゃきれいやったし。まじで、しびれました」

 

 結果として早稲田大がストレートで勝利し、優勝へさらに加速したこの試合で、谷が最も印象に残った場面に挙げたのが、そのブロックシャットだった。ちなみに、だが…。

「ラリー中に、相手のダブルコンタクトじゃないか、って主審に猛抗議しに行ったでしょ。あれも、泰杜らしいな、って思いましたけれど(笑)」

 

 目に映る水町の一挙手一投足が、ほほえましかった。

「ほんとうにバレーが好きだし、感心しますから。どこにいても、『あぁ、泰杜や』って思います。

 でも、大学がいちばん楽しそうですね。練習での様子はどうなのかわからないけれど、試合を見ているかぎりは、そう見えます」

 

 とにかく楽しそうにバレーボールをするのは、谷も小さいころから知っている。何度も触れて、何度も感じてきた。

 2人がチームメートになったのは小学生時代。地元の菊鹿クラブ(熊本)に入団したときに出会い、ともに初めての全国大会出場を経験した。以降、肩を組んで歩いてきた。

 

 

2人とって初めての全国制覇となった、2016年のJOC杯。④が谷で、⓺が水町 

 

中学、高校では計3度の日本一を味わった

 

 菊鹿中でも全国大会に出場。水町が2年生時にJOC杯(JOCジュニアオリンピックカップ全国都道府県対抗中学大会)熊本県選抜入りを果たしたとき、中学で迎えた新チームでは谷がキャプテンを務めた。やがて水町はエースとしてめきめきと頭角を現し、同年代をリードする存在になる。

 翌年にはそろって熊本県選抜としてJOC杯制覇を成し遂げた。続く高校生活も一緒、寮も同部屋。その名門・鎮西高ではインターハイと春高の優勝を味わった。水町とともにつかんだ3度の日本一に、「ほんとうにね。おいしいところをもらえました」と谷は笑う。

 

 そんな2人のキャリアも大学進学を機に袂を分かつことに。寂しいものだったかと言われれば、どうやらそうではなかったようだ。

「僕自身は、どちらかといえば楽しみでした。正直、対戦相手として一度はやってみたい、と思っていたので。同じチームだと『敵じゃなくてよかった~』と思うんですけどね(笑) 一緒にやっていたからからこそわかることもあるし…。だから、どうしても最後にやりたかったです」

 

 

熊本の名門・鎮西高でも手を取り合い、ともに青春を過ごした

 

 

【次ページ】「コイントスしたいね」と描いた直接対決

 

 

愛知学院大ではキャプテンを務めた谷。写真は今年の西日本インカレ

 

「コイントスしたいね」と描いた直接対決

 

 大学生活において公式戦での対戦はなかったが、実は今年の11月に練習試合で再会。谷はリリーフサーバーで投入されると、狙いを定めた。

「泰杜が一人でサーブレシーブを捕っているパターンが多かったので。手前にショートサーブを打って、崩して、が理想でした。案の定、普通に返されて、普通にサイドアウトをきられましたけど」

 その試合後、水町は谷に「狙ってくんなよ」と伝えたそうが、その表情がどのようなものだったかは想像に容易い。

 

 そうしてチャンスは、最後にめぐってきた。大学生活最後の全日本インカレは、お互いに勝ち上がれば3回戦でぶつかる組み合わせだった。

トークアプリのLINEで「やっと(山に)入ってきたね!!」と喜ぶ水町とは、「コイントスしたいね」と言葉を交わした。

 

 だが、その願いはかなわずに終わる。愛知学院大は主力選手のコンディション不良に悩まされ続け、いざ大会本番では一回戦で慶應義塾大に敗れる。

 勝負の世界では、こうした非情さが往々にして姿を現すもの。水町は「しようがないですよね」と受け止めたものの、LINEでは先に「何してん!!!!!!!」とメッセージを送っている。

 谷は「全然だめだった」と嘆いた。

 

 

水町自身も幻に終わった盟友との直接対決に思いを馳せた

 

 

準決勝前日に聞いた活躍宣言

 

「勝ち上がって、早稲田との大一番で勝負したかったのが正直な思いだったので…、とにかく悔しかったです」

 そう話す谷の大学バレーはこのとき閉幕した。ただ、LINEを続けるなかで、水町から誘いの言葉を受ける。

「最後くらい見に来やぁ」

 

 もともと予定にはなかったが、水町がそう言うならば。

 チケットは本人に手配してもらい、谷はレンタカーを借りて準決勝前日の深夜に愛知を出発。高速道路を飛ばし、朝には東京に到着して、会場に足を運ぶ。えんじ色の応援シャツを着て、チーム応援席に座った。

 

 前日に電話した際には、大会が始まって早々に背中を寝違えたことを水町から明かされ、谷は「はぁ!?」とあんぐり。それでも「明日からは、がんがんギア上げていかんと」と頼もしい言葉を聞き、期待に胸を膨らませた。

 その言葉どおり、水町はサーブにスパイク、それにブロックシャットに、とエンジン全開。加えて、熱く、激しく、何より満面の笑みを浮かべながらプレーする。その姿に――

「普通にかっこよかった。感情を出しているのが、おもしろかったですね。僕が見たかった泰杜の姿。ほんとうに見に来てよかった、って思いました」

 翌日に予定があり、現地で観戦できたのはこの日だけ。再び車をかっ飛ばし、谷は決勝を見ることなく愛知へ帰った。

 

 

スタンドには早稲田大の応援シャツをまとってエールを送る谷の姿が

 

 

 【次ページ】「誰よりもバレー馬鹿」だと再確認した瞬間

準決勝を終えて整列する際、スタンドにむかっておどけた①水町。視線の先にはきっと…

  

 

「誰よりもバレー馬鹿」だと再確認した瞬間

 

 もしも、対戦が実現していたなら。高校時代、2人はこんなやりとりをしていた。

「武珍の上からスパイクを打ちます」(水町)

「(ブロックで)止めるか、僕も上からスパイクを打ちたいと思います」(谷)

「絶対に無理!!(笑)」(水町)

「言ったけんね!! 見ててください。頑張ります!!」(谷)

 

 谷自身は主な役割がリリーフサーバーになったが、だからこそサーブレシーブに定評ある水町と勝負したいと願っていた。

「サービスエースを1本くらい奪いたかったです。ここでの1本が試合のゆくえを左右する、そんな勝負をしたかった!! 最後の最後に対戦相手として、1セットでも1点でも取ってみたかったです。

 どうだろう。自分の100%の力を出せたとしても…、泰杜を崩せる確率は40%くらいかなぁ」

 

 結局のところ、2人は最後までチームメートの関係だった。今年の特別国民体育大会では本戦出場こそならなかったが、成年男子の熊本県代表としてチームを組んでいる。それは特別な時間だった。

「幸せでしたね。勝負にこだわることを抜きにして、ジュニア(小学生)の頃のような純粋に楽しいバレーができたので。めちゃめちゃ楽しかったです」

 

 その活動の最中、時間があればタブレットと向き合う水町の姿を谷は目にしている。画面には、同時期に合宿に励む早稲田大の映像が。

「チームを離れているけんね」

 そう口にする水町に対して、谷は「ほんと、誰よりもバレー馬鹿だなぁ」と心の中でつぶやいた。

 

 

国体で再びチームメートに。勝ち負け以上に、純粋にバレーボールを楽しむ時間だった(写真提供:水町泰杜)

 

 

水町のことを語るとき、いつも谷はうれしそうだった

 

 10年近くを同じチームで過ごし、喜びも悔しさも分かち合ってきた。学生バレー最後の4年間こそ別だったが、「連絡も取るし、帰省のタイミングで会っていたので」と谷はほほえむ。

 

 さかのぼれば、2人が大学1年生で臨んだ初めての全日本インカレ。荒川総合スポーツセンター(東京)では早稲田大vs.大阪産大、愛知学院大vs.東海大の3回戦が同時刻に行われていた。

 そこで、リザーブとしてアップゾーンに控える谷は、ついつい隣のコートに目を奪われていた。視線の先には、徐々に出場機会が与えられ、コートに立てば強烈なスパイクを突き刺す水町の姿。水町がアップゾーンに戻ったときには、お互いに目が合ったそう。

 

 その試合後、「水町のほうを見ていたね」と水を向けると、谷はどこかうれしそうに言い放った。

「やっぱり泰杜、かっこいいですね!!

 それが3年前の、122日のこと。大学生活の最後に、プレー姿を見届けた日付と同じだった。たとえ離れていても、どれだけ月日が流れても。その目に映る水町泰杜の姿は変わらなかったのである。

 

感情を爆発させながらプレーする水町。これまでも、そして、これからも――

  

 

(文・写真/坂口功将)

 

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