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SVリーグ2024-25

自身の退職金を充ててまで。岐阜の中学クラブの監督が実現したサンドコートづくりの背景と懸けた思い【インタビュー後編】

  • ビーチ
  • 2025.06.14

 今春、岐阜県内にビーチバレーボールをプレーするためのサンドコートが“私設”された。手がけたのは、中学男子クラブチーム「フレンズ」を指導する立松朋子監督。実現までに至った思いを聞かせてもらった。【インタビュー後編】(取材日/521日)

 

 「ペンギンオアシス」を構えるのは岐阜県各務原市。奥には愛知県の犬山城も見える

 

 

――場所が決まり、いざビーチバレーボールのコートづくりに臨みます

立松監督 正式に工事に着工したのは今年2月頃です。場所をお貸しいただいた「株式会社大竹建設工業所」さんは私の教え子だった保護者の方が役員をされていて、「子どもたちが生き生きとバレーボールをする空間にしたい」という思いでコートづくりを始めました。

 

――実際にはどのような過程を経られたのですか?

立松監督 コートも含めた施設の仕様や設備について検討するところから始めました。どれほどの広さが必要か、敷地を囲うフェンスの高さは、雨水等の排水面など必要な設備は、と。そこでは京都橘大学女子ビーチバレーボール部でコーチをされている江口貴弘さんに監修をいただきました。江口さん自身、ご自身の会社「株式会社エグチプランニング」さんでビーチバレーボールの国内ツアーの運営にも携わっていらっしゃるので、さまざまな部分で意見をいだき、一つ一つ「これでバッチリだね」とお墨付きをいただくかたちで進めました。

 

 例えば、敷地を囲う防球ネットは6メートルほど設けていますが、これも「これだけあれば、プロのプレーヤーがスパイクを打ったボールがバウンドしても外に出ない」と言っていただき、その高さに設定しています。またネットの色に関しても、一般的には青や緑のところを、景観を損なわないために黒色にしました。

 

――なかでも、こだわった部分はありますか?

立松監督 「砂」と「安全性」の2つです。まず砂に関しては、県内の資材メーカーの「株式会社トークレー」さんにご協力いただきました。というのも、「フレンズ」がビーチバレーボールで全国制覇をして新聞に載った際に、私が「ビーチバレーコートをつくりたい」と口にしていたんです。そのときに「ぜひ一度、砂をご覧ください」とお声がけいただいていたので、今回、選手たちと一緒にトークレーさんを訪ねました。山砂や川砂、たくさんの砂の上で実際にビーチバレーボールをやってみて、吟味しました。砂一つとっても、プレーはかなり変わるんです。そうして採用した砂は、砂ぼこりがそれほど立たず、体にべたつかない、色も白すぎず、黒すぎない、それに粒の大きさも国際規格に合ったものになりました。

 

 一方で安全性に関していえば、やはり子どもたちがどれだけ駆け回れるか、その際に危険でないかを考慮しました。これも実際にプレーしているなかで、どれぐらいまでボールを追いかけるかを測定して。砂の上だとそれほど走れないものですが、せっかく使うのに危ない、狭いではいけないので、ここではコート周りに5メートルほどの広さをとっています。

 

 

砂の質やコート外の広さ、フェンスの色までこだわりの詰まった仕様になっている

 

 

――実際に費用面は当初の想定と比べていかがでしたか?

立松監督 ある程度の目算は以前からしていて、1000万円という数字は頭にありました。コートをつくりたいと思ったときから、ならば私の退職金を一部に充てて…、という腹づもりだったのですが、今は資材も含めて建設費用が上がっていました。そこで4月からクラウドファンディングを実施することにしたんです。

 

 当初は砂にかかる費用を、と考えて100万円を目標金額に設定したのですが、うれしいことに3日目で達成することができました。そこで防球ネットやシャワーといった付帯設備に充てたいと考えて、200万円に目標金額を上方修正して。おかげさまで最終的に230万円に到達しました。ご支援いただいた皆さまには感謝の思いでいっぱいです。

 

――退職金を充てられたということですが、それほどまでに情熱を注げる理由はなんでしょう?

立松監督 子どもたちを指導していると、そのときどきに見せる、うまくできたときの表情や喜んでいる顔は何物にも代えがたいなと思ってやまないんです。そうして成長する姿をずっと見たいですし、そのためにも好きなときに来て、好きなだけバレーボールをやってほしいな、と。その思いで今回、コートづくりと向き合いましたし、笑顔があふれる居心地のいい空間にしたい、その一心でしたね。

 

 ただコートが完成してから、ナイター設備を要望する声もたくさん聞かれるのですが…、ごめんなさい、私の退職金ではそこまでまかなえませんでした(笑) やはり設備としてはほしい部分ですから、おいおい頑張っていきます。

 

――そうしてオープニングセレモニーが5月11日に実施されました

立松監督 当日は地域の方々にも足を運んでいただき、キッチンカーも含めて大勢の来場者の姿が見られました。三重県のクラブチーム「gravis」さんとビーチバレーボールの試合を行ったほか、プロビーチバレーボール選手の渡辺周馬(東京グレートベアーズ)さんにも出席いただき、「仲間のプロ選手を連れて、また練習に来たいです」とうれしいお言葉を頂戴しました。それほど、状態のいい砂だったようです。

 またコートの横には「城山テラス」というレンタルスペースが設けられていまして、オープニングセレモニー当日はマルシェやワークショップなどを展開しました。子どもたちがコートでビーチバレーボールに励む姿を、保護者の方々にものんびり見て過ごしてもらえる、そんな場になりました。

 

オープニングセレモニーでたっぷり汗を流したフレンズの面々。渡辺選手(前列右から3番目)とともに(写真はチーム提供)

 

 

――コート自体は一般にも貸し出しているのでしょうか?

立松監督 まだ予約システムが構築されていないのですが(取材時)、連絡をいただければ貸し出しは可能です。中学生までは1時間500円、高校生以上は1時間1000円、を想定しています。

 また、施設としても万が一に備えたAEDや、不審者等防止の扉などがまだ設置できていませんので、それらも含めて完成形に一歩ずつ近づけていきたいと考えています。

 

――これからはどのような思いで、このコートとともに過ごしていきますか?

立松監督 ビーチバレーボールのコートをつくる、それ自体が私にとって大きなチャレンジでした。この先は運営費、借地代、砂の管理維持費などと向き合う必要があります。今後も皆さまからのお力をお借りしながら、この空間を長続きさせたいと考えています。

 このサンドコート「ペンギンオアシス」を、よちよち歩きの子ども(ペンギン)たちが、一生懸命やりたいときも、羽根を休めたいときもに安心して居られる空間(オアシス)にしていたいと思っています。

 

夢の場所で、立松監督はこれからも地域の中学生とバレーボールをつないでいく

 

 

(取材・写真/坂口功将)

 

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【ギャラリー】シャワーやテラスの貸し出しスペースまで。「ペンギンオアシス」の様子

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