ビーチバレーで「バイキング・ロウ」さく裂。水町泰杜/黒澤孝太組がジャパンツアー出場3大会連続優勝でぶつけたチャレンジングな姿勢
- ビーチ
- 2026.07.23
今年のジャパンツアーでは出場した全3大会で優勝を飾っている水町/黒澤組
船を漕ぐように、両手を後ろへ引く。その動作に合わせて、発するは「ROW(ロウ)!!」の掛け声。
………ROW!!
……ROW!!
…ROW!!
ROW!!
ROW!! ROW!!
ROW!! ROW!! ROW!!
徐々にテンポが速くなり、最後は大きな音の渦が起こる。それは先日まで行われたサッカーのワールドカップ2026北中米大会で一大ムーブメントとなった、ノルウェー代表と応援団が織りなす定番のチャント。ここはアメリカ? 違う、港に臨む横浜赤レンガ倉庫(神奈川)。7月12日、「ジャパンビーチツアー2026第5戦グランドスラム 横浜赤レンガ倉庫大会」の決勝が終わった直後、会場に「バイキング・ロウ」が響き渡った。
(左から)今季ペアを組む水町泰杜(トヨタ自動車/ウルフドッグス名古屋)と黒澤孝太(トヨタ自動車)
観客たちと一緒になって、それを演じたのは男子の水町泰杜(トヨタ自動車/ウルフドッグス名古屋)/黒澤孝太(トヨタ自動車)組。試合中から得点シーン、とりわけ勝負どころの1点を決めきった場面で2人は「ROW!!」と声を張り上げ、船のオールを漕ぐようなアクションを繰り出していた。そうして自分たちの手でムードをつくりあげながら、目の前の一戦一戦をクリアし、大会を制する。出場した第1戦名古屋大会、第2戦グランドスラム グランフロント大阪大会そして今大会。今年3度目の優勝となった。
特筆すべきは、その戦闘スタイルだ。インドアでは強力なアタッカーとして腕をならしてきた水町と黒澤の2人は、その高い決定力を武器に“超”がつくほどの攻撃的なバレーボールを展開。それに加えて水町がサーブ、黒澤がブロックとそれぞれの持ち味を最大限に発揮することで総合的な強さを生み出している。
試合では積極的にアタックを仕掛けつつ、ときにはジャンプトスを活用し、3本目をより効果的なものにしていく。そのアタックも、2人が機動力を生かしてコートを縦横無尽に駆け回り、ところかまわず打つのだから、対戦相手からすれば厄介なこと、このうえない。
世界のトレンドである速いテンポのスタイルを磨いている水町/黒澤組
「ブレイクに成功すると一気に流れをつかむ」と対戦した同僚のマルキ
今回の第5戦グランドスラム 横浜赤レンガ倉庫大会の準決勝で対戦したマルキ ナシム(トヨタ自動車)/詫間悠(中部土木)は証言する。なお、このペアはマルキがブロッカー、詫間がレシーバーに就くのがベースだ。
「守りにくいですよ!! あれだけ移動してくるので、ブロッカーとしてはまっすぐ跳ぶのが難しくなるんです。どれだけ自分が我慢して、しっかりとした位置どりで跳ぶためのアプローチができるか。戦っていて疲れますし、それこそ体力勝負になってきます」(マルキ)
「ビーチバレーボールは“ブロッカーありきの、レシーバー”ですから。後衛で守るうえで、的が絞れないことが水町/黒澤組に対しては多く出てきます。なのでレシーバーとしては、アタッカーと1対1で対峙している感覚になっていました。マルキさんも頑張って動いてくれるのですが、攻撃を絞りきれず、僕も動きたいけれど、速さに追いつけない展開が第1セットは続いていました」(詫間)
ジャパンツアー2026 第3戦 都城大会 第27回ビーチバレー霧島酒造オープンを制したマルキ/詫間組
準決勝の第1セットを水町/黒澤組が21-11と大差で先取した背景には、そんな戦い方のギャップがあったわけだ。それでも第2セットはマルキ/詫間組が競り合いに持ち込み、22-20で取り返している。詫間は言う。
「マルキさんにもう跳ぶ位置を決めてもらって、僕が空いたスペースに入るようにしました。それが少しばかりうまくいったのが第2セットでした」
果たして最終第3セットも最大5点差のリードを奪ってみせたマルキ/詫間組だったが、黒澤がブロックにサーブにと大車輪の活躍を見せて、結果的に15-13で水町/黒澤組に軍配が上がっている。
「どのチームもリードしているかといって油断はできないのですが、やはりこの2人(水町/黒澤組)はディフェンスがいいですし、ブレイクに成功すると一気に流れをつかむパターンが練習でも多いんです。ブレイクのチャンスで攻め続けられた印象でした」(マルキ)
もっとも、準決勝ではフルセットにもつれたこともあって、試合中から水町は疲労感を隠せずにいた。「暑さというよりも、足がもう…、動かなかったです」。それは実のところ、新しい取り組みに挑戦していたからだった。
マルキ(手前)と水町。名門・トヨタ自動車ビーチバレーボール部に所属するものどうしのマッチアップ
「バイキング・ロウ」のパフォーマンスとともに海外遠征へ
出場が内定している9月の「第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)」を前に、この夏は海外遠征に臨む水町/黒澤組。海外勢と対戦するにあたって、ペアとしての戦い方を「大幅に変えています」と水町は言う。今後も試合が控えているため詳細は“企業秘密”だ。ただ、初めて実戦でトライしたのがこの第5戦グランドスラム 横浜大会であり、そこでは肉体的にも精神的にも負荷がかかった。
「昨日の一試合(1回戦)だけでも、かなり疲れていたんです。でも、そのぶん手応えを感じていますし、とはいえ、かなりの出力を要するので、あとはそれでどれだけ戦えるか。この横浜大会では最後までそのスタイルを続けられましたし、そうして結果的に勝てたことは大きかったのではないかと思います」
準決勝の第3セットでは「追えるボールを何本も見送った」と苦笑いを浮かべるほど、疲労困憊の様子がうかがえた。それでも勝ちきれたのは、大会後のコートインタビューで「孝太、ありがとう!!」と水町が開口一番に感謝したように、相方の存在があったから。
「相当、足がきつかったのですが、孝太が『いける、いける!!』とかなり声をかけてくれました。鼓舞してくれましたし、ブロックとサーブで(勝機を)つなぎとめてくれたので、せっかく追いついてくれたからには僕も意地を出さなければと思いました。孝太の声、力になりました」
タフな試合が続くなか、精神的にも水町を支えた黒澤
対する黒澤も「あんなにしんどそうな姿は初めてみました」と振り返り、だからこそ己を奮い立たせた。
「その中で自分にできることといえば、声をかけることかなと。それに自分がいけるボールを決めにいくように心がけていました」
そんな絆を培う2人はいよいよ、ここから日本を飛び出し、次なるレベルを目指して航海に出る。そのタイミングで、得点時のパフォーマンスを北欧の海洋民を模した「バイキング・ロウ」にしたのは偶然だろうか。水町は明かした。
「これまでは『シャバーニ』(WD名古屋でも採用しているゴリラを模したポーズ)でしたが、新しい何かをしたいと思っていたときに、たまたまSNSで見たんです。コレ、いいな!! と思って今回から取り入れました。
試合後のやつ…、お客さんたちとの一体感は生まれていました?」
優勝の余韻も手伝い、あの瞬間、選手2人と観客はまちがいなく一体となっていた。「ROW!!」は訳すると「漕げ!!」。海を渡る水町/黒澤組への、何よりのエールだ。
横浜赤レンガをバックに、観客と「バイキング・ロウ」を繰り出した
(文・写真/坂口功将)
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