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旭川実高(北海道) 凸凹チームが春高女子ベスト4 敗れた準決勝は「集大成のゲーム」【笠井季璃×岡本祐子監督対談①】

  • 2024.02.21

エースでキャプテンの笠井季璃を擁し、1月の全日本バレーボール高等学校選手権大会(春高)でベスト4入りを果たした女子の旭川実高(北海道)。笠井と岡本祐子監督が大会を振り返った。第1回は同大会での戦いについて。高校入学まで全国大会の出場経験がほとんどなかった選手たちは、いかにセンターコートにたどり着いたのか

 

 

春高でベスト4入りした旭川実業高(前列右端が岡本監督、同5番目が笠井)

 

——春高から2週間が経ちました(取材日:1月22日)。笠井選手はどう過ごしていますか?

笠井 ふつうに練習しています!

 

岡本監督(以下、岡本) 今、リベロで練習しています。スパイカーではありませんが、後ろから声で点を取らせていてすごいと思います。セッターも練習中です。

 

笠井 自分ができる最大限の準備をして、(内定した)トヨタ車体さんに合流したくて。やるからにはリベロ並みのレシーブ力とセッター並みのトス力をつけたいと思っています。

 

——笠井選手らしい取り組みですね。改めて春高ではベスト4入りおめでとうございます。反響はいかがでしたか?

笠井 たくさんの方から「おめでとう」という声をいただいたので、かなり見てもらえていたんだな、と感じました。

 

岡本 「泣いた」「感動した」という声が多くて。1月1日から地震が起きたり、つらいニュースばかりでしたが、改めてスポーツはいいな、と思いました。

 (笠井)季璃のことは1年生のときからずっと見ていて。努力していいものを持っているけど、あと一歩で成果が出ないことがあったので。最後に努力が報われたところにも感動しました。

 

笠井 1年生の春高は(1試合で)10点しか取れなくて。2年生は20点、そして今年は30得点ができました。やっと決められる選手になったかなと思います。

 

岡本 そうだったね、懐かしいよ。ほんとうに漫画の世界のシンデレラストーリーというか、彼女は3年分以上の成長をしていると思います。

 

——大会を振り返ると、ダブルヘッダーの大会3日目はともにフルセット。なかでも準々決勝の東京都市大塩尻高(長野)戦の勝利が大きかったのではないでしょうか?

岡本 (昨年の)ゴールデンウイークの合宿では、(東京)都市大塩尻に全部負けたよね。全国大会のベスト8を越えるには、ああいったチームに勝たないといけないから、今の力を体感しておこうと思って試合をさせてもらって。

 

笠井 どれだけ頑張っても1セットで23点ぐらいしか取れませんでした。でも、自分が(U19日本代表のため)いなかったインターハイで、1セットで20点ぐらい取れたことがほかの選手たちの自信になっていました。「あとは季璃がいれば勝てるね」という雰囲気でした。

 

岡本 今大会は季璃以外の選手たちが、都市大塩尻の特徴を熟知していました。「もっとこうだよね」と季璃に伝えていましたね。

 

——第1セットは25-8と圧倒。笠井選手がサービスエースを連発しました

岡本 1セット目が終わったあと、この大会でいちばん焦りました。「こんなはずはない」と。こういう展開になると、逆転負けするパターンがよくありますが、うちはフルセットに強いんですよ(笑) 私学大会(昨年3月の全国私立高等学校選手権大会)からフルセットばかり(大会中、全6試合中4試合がフルセットとなり、すべてで勝利した)で。3セット目は最初から走って逃げ切るという(笑)

 

笠井 はははは! 2セット目の終盤に自分のサーブがアウトになりましたが、自分としてはミスをするか決めるかのどちらかだと思っていました。想定内だったので、3セット目はすぐに切り替えることができて。そこからまたチームとしてもいいリズムで戦えたと思います。

 

岡本 やっぱり目標はセンターコートというか、いちばんになりたくてやってきたので。「負けるのはここじゃないよね」と言ったときに、選手の顔がちょっと引き締まった感じがしました。

 

——フルセットで勝てる秘けつは何でしょうか?

笠井 開き直ること(笑) 「あと1セットしかないから、ここで全力を出すしかなくない?」という気持ちですね。

 

岡本 腹が据わっていますよね。「私が決めれば勝つし、失敗したら負ける」という責任感が。だから強いんだと思います。

 

笠井 今回の春高でも、「感謝」をテーマにしていて。どんなときでも自分が笑顔を絶やさずに上を向くことだけは忘れてはいけないと思っていました。そこを意識した結果、センターコートに立つことができてよかったです。

 

 

高いブロックと対峙した準決勝の下北沢成徳高戦

 

——準決勝の下北沢成徳高(東京)戦は、国体の準決勝の再戦でした。ストレート負けとなりましたが、成長を感じられるシーンはありましたか?

岡本 いやぁ、ちょっとね…。1セット目はちゃんとブロックにつけていたし、悪くなかったです。でも、「いけるぞ!」という雰囲気になった2セット目に、ちょっと気合が入りすぎてしまって。ミスのオンパレードになってしまいました。タラレバの話になりますが、3セット目の内容を2セット目にできれば、会場はすごく盛り上がったと思います。

 でも、勝ちたい気持ちが空回りしてしまったことや、出し切ってやろうと思って戦ったことを含め、全部が今年度のチームの集大成だったと思います。ベストを出してあの結果だったので。

 

笠井 自分もチームも、目指していたところが日本一だったので、そこにいけなかったのはすごく悔しかったです。特にトスが集まってきた3セット目のプレーを1セット目から出せていたら違っていたと思うし、最後(第3セット24-25から)のバックアタックを1本で決めていればまだわからなかったので。自分の技術とメンタルが足りなかったと感じています。

 

岡本 試合が終わったあと、天井を見たあのなんとも言えない表情がすべてですよね。「くそー!」という(笑) 

 

笠井 いやぁ、悔しかったですね。

 

岡本 ベスト4で「おめでとうと言っていいのかな?」と言う方もいますが、すごいことだと思います。田舎の子たちで、凸凹チームだけど、ここまでくることができた。3年生はJOC杯も(コロナ禍で)中止だったので、ほとんどが高校まで全国大会に出たことがない選手たちです。(3年生の中では)中体連の全国大会に出たのは1人だけで、初心者も入っていますから。季璃は中学生のとき、1日にどのぐらい練習していた?

 

笠井 2時間くらいです。

岡本 中学生のときは、たいしたことがない数でも、「腹筋を何回しました!」と喜んでいたので。「いいぞ、いいぞ」と言いながら(笑)

 

笠井 ははははは!

 

岡本 その子たちが最後、こうやって花が咲くんだなと思ったらやっぱり感動しましたね。

 

——この敗戦がまた成長のきっかけになりましたね

岡本 年中成長期なので。

 

笠井 そうですね、日々成長します!

 

 

準決勝で敗れ、仲間を抱き寄せる#1笠井。エース、キャプテンの大役をまっとうした

 

笠井季璃

かさい・りり/身長175㎝/最高到達点306㎝/別海中央中(北海道)/アウトサイドヒッター

2022年度はU18日本代表、23年度はU19日本代表に選ばれた世代屈指のエース。V1女子のトヨタ車体クインシーズに内定し、210日のプレステージ・インターナショナルアランマーレ戦で早速デビュー

 

岡本祐子

おかもと・ゆうこ/旭川実高→早稲田大

早稲田大卒業後は東洋紡、栗山米菓でプレー。旭川実高のコーチを経て、2010年に監督就任

取材/田中風太(編集部)

写真/中川和泉(NBP)、山田壮司

 

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