熊本県宇城市の中学生クラブ「豊野クローバーズ」が臨んだ初の全国大会。被災で予選参加見送りの可能性も乗り越えて
- 中学生
- 2026.09.08
初めての全国大会。それでもいつもと同じ心持ちで臨んだ。違ったのは、本番が始まってから。
今年8月の「第56回全日本中学校バレーボール選手権大会」(全中/広島)に初出場を飾った女子の豊野クローバーズ(熊本)。小学生のときから活動してきた面々がそのまま中学になっても同じチームに所属し、だからこそ培った絆を武器に全国大会の切符をつかんだ。だが2年生の奥村泉美キャプテンが「3年生たちとの活動がこの大会で終わるかもしれない、そのプレッシャーはありました」と明かしたように、予選グループ戦初戦は古川学園中(宮城)を相手に試合開始から7連続失点。身長176㎝の2年生ミドルブロッカー、松村陽菜を中心に反撃に打って出るも0-2(16-25、13-25)と力及ばず。続くSC KEN G’s(茨城)との敗者復活戦も0-2(16-25、22-25)で敗れ、大会を去ることになった。
初の全中出場を果たした豊野クローバーズ
試合中は保護者や関係者たちがひっきりなしに応援を送り、客席はチームカラーである鮮やかな緑色で彩られた。けれども「最初は応援も聞こえていましたが、どんどん聞こえなくなっていました」と奥村キャプテンが言えば、松村も「試合が進むにつれて自分たちだけにしか目を向けられず、周りを見ることができなかった」。野田亜希子監督は言う。
「この大会を楽しみに、できる練習をしっかりやってきたので。開会式の雰囲気も楽しんで、いざ予選グループ戦にやってきたのですが、雰囲気の違いに飲まれてしまいましたね」
予選グループ戦の2試合を終えた直後、涙をこらえきれなかった松村は言葉を振り絞って、胸の内をこのように吐き出した。
「この大会には家族が仕事もあって見にくることができませんでした。また地震もあり、自分や親戚の家も大変な状態になっていました。だからこそ、結果を残すことで、明るく楽しくバレーボールができていることを伝えたかった。ですが、足らない部分や弱さがあり…。とても悔しいです」
長身を生かしたプレーが光った②松村
豊野クローバーズが拠点を置くのは熊本県宇城市。今年7月28日、令和8年熊本地震において最大震度7を観測した場所だった。
その日、すでに熊本県大会を1位で通過していたチームは8月4日から始まる「第59回九州中学校競技大会」つまり全中予選にあたる九州ブロック大会突破へ意気揚々と練習に励んでいた。地震が起きたのは、その練習を終えた直後だった。
おのおのは帰路に着いていたとはいえ、帰宅もままならず、なかにはテントで過ごしたメンバーもいた。体育館の使用はおろか、活動自体もストップせざるをえない。「九州大会に行けない、それにこのままバレーボールができなくなるのではないか、という心配がありました」と奥村キャプテンはそのときの心境を振り返る。
事情を踏まえれば、九州ブロック大会への参加を見送る選択もあった。それでも「子どもたちがつかんだ機会なのだから、どういうかたちでも行こうと大会3日前に決断しました」と野田監督。なんとか使用できる体育館を探し、再び歩みを始めた。
「いろんな方々に支えていただき、九州大会に行ける、と決まったときには『絶対に勝って、3年生のため、指導者さんのため、それに保護者や関係者の皆さんのために頑張ろう』と思って臨みました」(奥村キャプテン)
小学生からつながりがある面々。仲間たちとの「信頼関係に自信はあります」と語った奥村キャプテン
そうして九州ブロック大会の予選グループ戦を突破し、翌日の決勝トーナメントでベスト4入りを果たしたことで全中への出場権をつかみとってみせたのであった。
それだけに、全中本番で力が発揮できなかったことがとにかく悔しかった。野田監督は「この空気感に飲み込まれたときに、この子たちを引き上げる私の力が足りなかった」と唇をかむ。かといって、予選グループ戦敗退という結果そのものと、被災したこととの因果関係はきっぱりと否定した。
「この結果と地震は関係ありません。確かに動揺はありました。ですが、熊本や県外の方々からたくさんの声援や支援をいただき、子どもたちも元気をもらえて大会へ臨むことができました。地震の影響はあるかもしれないけれど、選手たちには『それを感じさせないように頑張ろう』と言ってきました。
今回、全国大会を経験させてもらったからこそ、来年に生かせられるようにもう一度頑張って、この舞台を目指したいです」
初めての全中では相手にも会場の雰囲気にも飲み込まれた。再び、この舞台に立つべく。奥村キャプテンや松村たち2年生は強いまなざしで意気込んだ。
「来年は相手に流されることなく、自分たちが楽しいと思えるプレーをして、絶対に今年の成績を超えたいです」(奥村キャプテン)
人の手にはどうしようもない厄災も乗り越えた。次も必ず、乗り越えられる。
苦難を乗り越えて全国の舞台に立った選手たちへ熱い声援が送られ続けた
(文・写真/坂口功将)
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