男子日本代表の練習生、三宅綜大が国際親善試合で得た学び「スパイカーだけでなく、セッターも求めていかないと」
- 大学生
- 2025.07.25
「2025バレーボール男子日本代表国際親善試合 日本B対オーストラリア(岩手大会)」が、7月5日(土)、6日(日)に奥州市総合体育館(岩手)で行われた。練習生として参加した三宅綜大(順天堂大1年)が、トップレベルの選手たちから得たものとは
三宅綜大(写真:田中夕子)
スパイカーと共につくる
最適なトス
日本代表ユニフォームをまとう選手たちの中に一人、練習着姿の三宅綜大がいる。練習時はどこか遠慮気味だったが、試合になれば顔つきが変わる。7月4日に岩手・紫波町のオガールアリーナで開催されたオーストラリアとの練習試合、5日、6日の両日、奥州市総合体育館(Zアリーナ)で行われた親善試合で出場機会を得た三宅は堂々としたプレーを披露した。
「見ているだけでも勉強になるんですけど、(練習時の)6対6にも入れてもらって、試合も出させてもらえた。ほんとうにいい経験ができていると思います」
日本代表登録選手に名前はないが、三宅に練習生としてB代表の合宿招集の声がかかったのは6月中旬。数日後に開幕する東日本インカレに向けた準備を進めていたが、B代表を率いる真保綱一郎監督からの評価は高く「彼のプレーは前から知っていた。関田(誠大〔サントリー〕)のように小さくても技術力が高い選手なので、大型選手ばかりでなく彼のようなタレントも育てたかった」と今回の抜てきにつながった。
合流直後から「緊張はない。それよりもせっかく呼ばれたのだから、自分のプレーを出せないで帰るほうがもったいないので、たくさんコミュニケーションをとろうと思っていた」という三宅がよりなじみやすいように。永野健コーチの粋なはからいで、対人レシーブは最年長の深津英臣(WD名古屋)とペアを組んだ。「まだまだ対人がぬるい」と笑ってだめ出しをしながらも、積極的にコミュニケーションをとるだけでなく、「自分の姿から何かを学んでくれたらうれしい」という深津の存在に加え、同じ大学生の高橋慶帆(法政大4年)も練習前後のストレッチ時だけでなく、試合中も三宅をサポートする。
練習試合や親善試合で、「自分の持ち味を出したかった」という三宅はミドルブロッカーの速攻やパイプ攻撃を積極的に選択。相手のブロックを散らせてオポジットからの攻撃を通そうと試みるも、トスが内側に入り高橋のスパイクが止められた。直後は、落ち込んだ素振りを見せた三宅に対し、高橋は「ナイストスだよ、次はカバーするから」と声をかけたが、将来を考え、もっと別の接し方があったかもしれない、と話す。
「周りが年上だらけの中、いちばん下で途中から入ってプレーするのは誰だって難しい。そこは助けてあげたいと思っていましたし、止められたトスも『いいトスだよ』と言いました。でも、彼の成長を促すなら『もっとこうしてほしい』と言うべきだった、とも思った。三宅くんにもセッターとして要求してほしいし、自分たちも要求してなおかつ助ける。そういう関係性を築きたい、というのは常に考えていました」
オポジットの高橋へトスを上げる三宅(写真:山田壮司)
それこそがまさに、三宅にとってもB代表で得た“学び”の一つだった。
「練習中から1本のコンビに対してもスパイカーだけじゃなく、セッターも、お互い要求して、追求し合っているのをすごく感じた。決まったらOKじゃなくて、スパイカーは『もう少しこうして』と求めるし、セッターも『もう少しこう入って』と求める。学生のカテゴリーだとセッターが合わせるのが当然、という考え方だったんですけど、お互いがお互いに求めていかないといけない、それがすごく大切なんだ、と改めて感じました」
相手の裏をかいたつもりでも、高さで勝るブロッカーのマークが外れずにブロック1枚で止められてしまう場面や、決め急いでトスが低くなるケースなど、格上の相手と対することで多くの課題も見えた。だが、それ以上に収穫も得た。親善試合の初日、3セット目の終盤でコートに立った三宅はそれまで見せてきたセンター線中心のトスではなく、ライト側のアンテナに近い位置から、レフトの工藤有史(VC長野)へトスを上げた。高さと伸びのあるトスを工藤がストレートに打ち抜き、日本の勝利につながる1点を決めた1本を振り返り「今までの中でもベストだった」と三宅は笑みを浮かべた。
とはいえ、貴重な経験をしたからこそ、「よかった」で終わるのではなく、次へいかにつなげるか。すでに三宅の視線は先へと向けられていた。東日本インカレに出場できなかった分、大学に戻れば秋季リーグ、そして全日本インカレに向け、鍛錬の夏が待っている。
「この環境を知ることができたのは自分にとってすごくプラスで。だけど、だからこそこれがムダにならないように、(経験が)自分のものだけにならないように。自分には順大というチームがあって、そこで勝ってこそだと思っているので、優勝に向けてつなげていけるように、得られた経験から学んだことを周りに向けて発信していきたいです」
なんとも頼もしい言葉だが、振り返れば1年前はインターハイで戦っていた。高校三冠という目標を達成するべく、セッターとして、リベロの谷本悦司(筑波大1年)と共にリーダーとしてチームをけん引し、年度最初のタイトルを手にした。
あれから1年、まもなく後輩たちがインターハイを迎える。
「自分たちが2、3年のときは三冠を目標にしていたんですけど、今年は自分たちが1年生のとき以来の『春高優勝』が目標。インターハイも大事だけど、春高優勝に向かっている若いチームなので、春高で日本一を取るための戦い方を感じながら頑張ってほしいです」
それぞれの場所で、目標に向けて走り出す。熱い夏が、まもなく始まる。
対人レシーブのペアを組んだ深津(右)と記念撮影。今回の経験は、これからに向けて大きな財産になる(写真:田中夕子)
みやけ・そうだい
身長174㎝/最高到達点319㎝
駿台学園高(東京)→順天堂大1年
セッター
文/田中夕子
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