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SVリーグ2024-25

男子日本代表 in 薩摩川内合宿2025

  • 日本代表
  • 2025.09.01

小さな地方都市が「男子日本代表」フィーバーに沸いた。真夏の幻のような一週間を、写真とテキストで振り返る。今に続く薩摩川内合宿誘致の立役者と、その背景もご紹介。なお世界選手権は、912日からフィリピンで行われる

 

 

今年の集大成である世界選手権に挑む【写真/松田智恵】

 

 

男子代表チームの顔ぶれ、その変化

 

 連日の夏の熱さを超える熱烈な歓迎に沸いた男子日本代表 in薩摩川内合宿。選手15名が合宿に参加した。2019年夏の合宿以来となったのが石川祐希主将と小野寺太志の2人。富田将馬、永露元稀、エバデダンラリー、大宅真樹は2022年、24年のB代表合宿からのステップアップ組。故郷宮崎に近い鹿児島に、代表選手として“凱旋”した甲斐優斗は「よく合宿で来ていたので懐かしいのと、こんなに大勢のお客さんの前で練習できることがうれしい」と、甲斐スマイル。わずか数年で景色がガラリと変わったことだろう。

 

 その甲斐をはじめ、髙橋藍、大塚達宣、宮浦健人、小川智大、山本智大、西山大翔、西本圭吾と、初の薩摩川内合宿となった選手が半数を超えた。東京2020そして2024年のパリという二つのオリンピックを経て、世界一流の選手となった石川主将を軸に、チームの新陳代謝が機能していることを物語る。そして2018年に高校生として選出されていた佐藤駿一郎は代表にカムバックしての薩摩川内入り。「海外挑戦も含め、代表に戻るために自分で考えて行動してきた」と引き締まった表情を見せた。世代やキャリアステージはそれぞれでありながら、醸し出す雰囲気にプロフェッショナルなチームとしての風格が漂う。人気、実力ともに黄金期を迎えている男子日本代表チーム。スター軍団の名にふさわしい輝きを真夏の鹿児島に焼き付けていった。

 

 

青空をバックに。薩摩川内市の方々と

 

表敬訪問ハイライト

 

 チーム一行は815日に薩摩川内市への表敬訪問を実施。訪問に合わせ、市役所前広場でのお出迎え式が行われた。夏休みや帰省時期とも重なり、選手たちを一目見ようと大勢の市民やファンが押し寄せた。期待に応えるように、石川主将、小野寺、髙橋、宮浦、甲斐、山本とロラン・ティリ監督らチームスタッフが参列。合宿前日の豪雨から一転、祝福するかのように広がる青空をバックに、市民ら数百人と記念写真におさまった。

 

 表敬訪問では、日本バレーボール協会の南部正司ハイパフォーマンスグループシニアダイレクターとティリ監督があいさつ。選手も交えて、市長やスポーツ協会会長らが歓談した。代表チームの合宿には黒毛和牛やうなぎ、地元酒蔵の焼酎など鹿児島の特産品が贈られるのが恒例となっている。後日、石川主将も「うなぎがおいしかった」とインタビューで答えている。話題が焼酎に及ぶと、小野寺が「蔵の神」と地元銘柄の名を挙げれば拍手が沸き起こり、地元の方から「飲めそうな人」と言われた山本は「えっ!?」と言わんばかりの表情を浮かべ、笑いに包まれる一幕もあった。

 

 

優しく笑顔で対応する甲斐優斗【写真/松田智恵】 

 

 

川内川花火大会

 

 翌816日は、夏の一大イベントである川内川花火大会の日。お盆の時期、帰省した家族や親族と一緒に夏の終わりを感じながら、夜空を見上げる。ちょうど合宿期間中の開催とあって、見に行きたいか? とメディア陣から質問されていた髙橋。「めちゃめちゃ行きたいですね~、何年ぶりだろう? チームビルディングも兼ねて(行けたらいい)」と、おどける様子がニュースになっていたが、念願かなったようである。17日の公開練習後の会見で「行けました! 3年ぶりくらいの花火大会。音楽に合わせて上がるクオリティーの高い花火をいい席で見ることができて、夏らしさを感じましたね」と満面の笑みを浮かべていた。甲斐ら、行きたい選手で行こうということで、楽しんだようである(ちなみに石川主将は行かなかったとのこと)。同じ花火を見上げたと知れば、市民もまた一段と親しみを感じるもの。休日なしの合宿であっても、つかの間リフレッシュできたようで、何よりでした。

 

 

大塚達宣は、サポートを務めた川内商工高の全員と握手【写真/松田智恵】

 

大観衆を前に魅せた6×6

 

 そして合宿のフィナーレを飾ったのが17日の公開練習。2600枚のチケットは発売開始からほどなく完売したとあって、会場は県内外から訪れたファンの熱気で埋め尽くされた。サブアリーナからメインアリーナへと続く通路にはファンが立ち並び、選手を待ち構える。サインをもらった子どもたちやファンは言葉にならないうれしさをかみしめていたようだ。

 ウォーミングアップから、コート内での一挙手一投足を見つめる視線が心地よい緊張感を作り出す。選手たちに代わって、ティリ監督がコートサイドの観客とボールの受け渡しをするなど、コミュニケーションをとるシーンもあった。

 

 

エバデダンラリーはサービス精神も旺盛だった【写真/松田智恵】

 

 

 公開練習の様子は月刊バレーボール10月号をご覧いただくとして、公式試合とは違い、音楽や照明の演出がない分、シンプルにバレーそのものの魅力、トップ選手の高いスキルと集中力、それらが呼ぶ興奮が際立つものとなった。3セットで終わるかに見えたゲームは4セット目に突入。南部シニアダイレクター自らマイクを取り「合宿も最終日で選手たちの疲労もピークかと思います。最後、皆さんの拍手と声援で選手を後押ししてください」と呼びかけた。いち早くコートに入った髙橋、大塚、西山はピョンピョンと跳ねて、まだまだ元気のあるところを見せた。サーブ前の手拍子、プレーへの惜しみない拍手を受けて、最後まで質の高いゲーム練習を披露したチーム。しっかりと観客を満足させて、合宿の締めくくりにふさわしい充実した時間を共有した。

 

 

在りし日の宮司保さん(2023年8月、女子日本代表紅白戦にて)

 

 

宮司 保さんのこと

 

 熱気に満ちた会場の一角で、遺影を手にコートを見つめるご家族の姿があった。今年1月に急逝された宮司保(みやし・たもつ)さんのご家族だ。宮司さんは薩摩川内市スポーツ協会会長を長年務めた地域の名士だが、NHKのテレビ番組で、元女子日本代表の竹下佳江氏が「ロンドンオリンピック銅メダルの報告とお礼を言いたい」と訪ねた人物、といえばご記憶のバレーボールファンもいらっしゃるだろうか。バレーボールを愛し、バレーボールと地域のために情熱を注いだ人生であった。

「なぜこんなに代表チームの合宿が薩摩川内市であるの?」と思う向きもおありだろう。合宿所(宿泊施設)から体育館まで歩いて30秒、寝具等も長身の選手に合うようにそろえてあること、自治体や地元企業挙げてのサポートなど、理由はいくつか挙げられるが、今に続く合宿誘致の始まりには宮司さんの働きがあったからに他ならない。201110月の男子日本代表紅白戦開催を皮切りに、20134月に薩摩川内市総合運動公園総合体育館(サンアリーナせんだい)が「公益財団法人日本オリンピック委員会バレーボール競技強化センター」に認定されると、同年6月に女子日本代表の合宿、同年8月には女子セルビア代表が強化合宿を行っている。

 

 

選手たちのサイン入り横断幕を掲げて【写真/松田智恵】

 

 

 小さな地方都市にとって、海外の代表チーム受け入れには相応の覚悟が必要だったことだろう。打診から受け入れへの過程、そのときの心境を筆者は宮司さんに聞いたことがある。もちろん大変なことでしたよ、と振り返り「薩摩川内市は、どんなことがあっても受け入れます」と断言したのだと、ほほ笑んだ。以来、男女日本代表チームをはじめ、男女ブラジル代表、男子アルゼンチン代表、男子ベネズエラ代表、SVリーグのチームと、毎年のようにトップレベルのチームが合宿を行っている。鹿児島のバレーボール少年少女たちは、少子化にあってもその競技人口は増えているという。あこがれの選手たちを間近に見て、ときに一緒にプレーした経験と無関係ではあるまい。小さな地方都市であってもバレーボールを通して、広い世界をのぞくことができるのだ。

 

 表敬訪問でも南部本部長より宮司さんへの感謝の言葉が述べられていた。公開練習時には、ティリ監督が席に出向き、ご家族と言葉を交わす様子も見られた。宮司さんを支えたご家族は、バレーボール協会への感謝とともに「家族よりもバレー、な人でした。こうしていろんな方に労いの言葉をいただいて。誰にもまねのできないことをやったんだなあと思います」と、故人への思いを語った。

 

取材/泊 亜希子

参照:特定非営利活動法人薩摩川内市スポーツ協会

https://sports-satsumasendai.jp/

 

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