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愛知工大名電高がプロ監督制をスタート 「幸せになる子どもや指導者が増えていくことが目標」北川祐介監督はGM、藤巻陸が新監督に

  • 高校生
  • 2026.05.22

これまで高校男子バレー界で先進的な取り組みをしてきた愛知工大名電高(愛知)が、今春から「プロ監督制」に舵を切った。北川祐介監督がGM (ゼネラルマネージャー)となり、新監督は2025-26シーズンまでレーヴィス栃木でプレーしたOBの藤巻陸が務める。北川GMに、新たなチャレンジへの思いに迫った

 

 

3月に行われた全国私立高等学校男女選手権大会(さくらVOLLEY)で、息子でありゲームキャプテンを務める祐真(右)と言葉を交わす北川祐介監督(現GM)

 

 

「普通ではない」

教員指導者たちの業務量



 ここ数年、高校バレー界に新たなスタンダードが生まれつつある。非公式試合などでは、活動に賛同する企業名が入った、いわゆるスポンサーTシャツでプレーするチームが増え、試合結果や日々の活動内容はSNSで発信。男子を中心に始まったその動きに、先陣を切って取り組んできたチームの一つが、愛知工大名電高だ。

 それらの取り組みに加え、2023年には部活と勉強の両立、そして保護者による費用負担の軽減を目指し、企業を対象とした「活動支援募金」をスタート。「教育研究支援募金」として母体である名古屋電気学園への寄付を呼びかけるこの活動は、「GM兼監督」として北川監督が推し進めてきた。同学園や20の企業・団体の支援を受けた昨年度は、遠征費、ウェア費用、ユニフォーム代のいずれも0円を実現したという。

 さらに、選手が主にスポーツコースから特進・選抜コースまたは普通コースに所属するようになった2021年度からは、本格的に文武両道へと方針をシフト。北川監督は「バレーと勉強を両立して全国に行けるのかという疑問を、自分を含めてみんなが持っていたと思います」と明かすが、昨年度は3年ぶりに春高の出場権をつかんだ。2回戦で鎮西高(熊本)に敗れたものの、競技力だけを追い求めてきたこれまでとは違った価値を、夢舞台でかみしめた。

 これらの取り組みの根底にあるのは、選手たち、そして高校バレー界の未来への願い。そして311日、Instagramでまた新たなチャレンジを表明した。
「名電バレー部 プロ監督制スタート」

 16年間母校の指揮を執った北川監督がGMになるが、チーム運営、スカウト活動や進路支援などのサポートはこれまでと変わらず行う。その一方で、学園から雇用されたプロ監督がプレーの指導を担うように。Vリーグ(現SVリーグ)でプレーしたのち、指導者に転身した北川GM。現場への未練を問われると、「一切ないです」と笑った。それ以上に大きかったのが、高校バレー界が抱える問題への危機感だった。

 

 

昨年度は3年ぶりに春高出場。文武両道を掲げて初めてオレンジコートにたどり着いた

 


 部活動の指導だけでなく、授業や会議など教員としての業務に加え、試合会場への運転や会計。校務が重なって練習を見られない日もあり、蓄積した疲労が与える影響も少なくはない。長年指導者たちの情熱で成り立ってきたが、次の世代にもそれを求めることはできない。
「勝てば勝つほど仕事が増えて、だからといってそれで給料が増えるわけでもない。これまでは自分一人でやってきましたが、正直、教員監督、教員コーチの生活は普通ではありません。苦しんでいる学校も多くて、名電でも過去に業務過多で退職してしまった人もいました」

 そこで、かねてから温めていたプランがプロ監督制だった。教員とは違ったライフスタイルで指導にあたるため、常に練習に携わり、練習内容や戦術面についてよりフレッシュな状態で考えられる。高校バレーの指導者になる間口も広がり、トップ選手たちのセカンドキャリアの拡大も見据える。

 昨秋の春高県予選のあたりから学園側と交渉を進めるなかで、北川GMは現場の状況を訴えた。
「若い子は週7日勤務をできない。新しいやり方しか道はないです」
「同じことの繰り返しになってしまうので、同じ形態では後釜を呼ぶことはできません」

 そして今年1月。学園がプロ監督と契約するというかたちで、舵を切る決断を下した。

藤巻新監督の

合流に備えて


 その大役を任されたのが、愛知工大名電高3年生時にはキャプテンを務め、今季までレーヴィス栃木でセッターとしてプレーした藤巻陸。プロ監督制の交渉を進めるタイミングで、北川GMが藤巻からセカンドキャリアについての相談を受けたことがきっかけになった。「彼も選手としての目標があったので、悩んでいたところはありました」と振り返るが、北川GMの「バレー界を変えたい」という熱い思いに賛同し、新たな道を切り開いた。

 

 

2025-26シーズンまでR栃木でプレーした#2藤巻


 今年の3年生には1年生時からコートに立つ選手が多く、集大成ともいえる1年。その中で迎えた突然の転換だった。北川GMの息子で、ゲームキャプテンを務める祐真は、「最後の1年を北川先生と乗り越えたかった。たぶん、自分がいちばん不満を持っていたと思います」と胸の内を明かす。ただ、父の多忙さは誰よりも知っていた。
「小さいころから、夜遅くだったり、ストレスをためて帰ってくる姿も見ていたので。自分もそういう立場だったら、北川先生のような判断を早くしたいと思います。だから、いちばん共感しています」
 そのうえで、「昨年度は監督と息子として春高に行ったので、今度は GM と息子として春高に行きたい」と新たな夢を描く。

 現役生活を終えて就任する藤巻新監督の合流に備えて、チームは準備を進めてきた。324日〜27日に行われた全国私立高等学校男女選手権大会(さくらVOLLEY)。ともに優勝した2月の県新人大会、そして321日〜22日に行われた東海新人大会とは違い、選手だけで指示を出し合った。藤巻監督と選手でゲームプランを組み立てるようになる新たなシーズンを見据えたが、まとめ役になった祐真はその難しさを痛感した。
「できていないことをなかなか見つけられなくて。(タイムアウトで)集まったときも静かな感じで雰囲気は上がらず、全然対策も取れませんでした。今まで自分たちが北川先生に頼りすぎていた部分をあらためて感じました」
 
 グループ戦敗退にそう唇をかんだが、選手たちどうしで試合中に戦術を変更する場面も。北川GMは「昨日(25日)はあまり考えられていませんでしたが、今日はある程度できていました。ちょっとずつ成長しているな、バレーリテラシーが上がってきているな、と感じました」と目を細めた。

 

 

ゲームキャプテンの#12植木結生、チームキャプテンの#1北川が中心となってチームを引っ張る

 


 516日のインターハイ県予選では藤巻監督が初采配。まずは、23日から行われる準々決勝に駒を進めた。3月のさくらVOLLEYでは星城高、大同大大同高、名古屋たちばな高がベスト8入りし、ハイレベルな予感が漂う今年の愛知県予選で、まずは本戦の切符獲得へ。今後、この取り組みが広がっていくためにも、結果を残すことは一つの判断材料になる。
「プロ監督で成功していけば、ほかにもそういう学校が増えてくると思います。でも逆に、プロ監督にして学校生活がおろそかになっていたら、『プロ監督ってダメじゃん』となってしまう。そうならないように、僕が学校生活をしっかり見ないといけません。
 この新しい取り組みを成功させることが次の仕事。全国に普及して、幸せになる子どもや指導者が増えていくことが目標です」(北川GM

 バレーボール界、そして高校スポーツの新たなモデルを目指して。愛知工大名電高のチャレンジは続く。

 

 

下級生時から得点源を担ってきた#6福島諒。4年ぶりにインターハイの切符をつかめるか

 

文/田中風太(編集部)

写真/石塚康隆(NBP)、中川和泉

 

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