若き選手たちの挑戦 U19+U21女子紅白戦を通じた成長と未来への展望【前編】
- アンダーエイジ
- 2025.04.25
観客が見守るなか、ふだんは味わえない雰囲気で試合を行った【写真/中川和泉】
U19、U21女子日本代表は2025年3月に佐賀で行われた合同合宿後、3月15日、16日にSAGAアリーナ(佐賀)で行われたSVリーグ公式戦の前座試合として、初の試みとなるアンダーエイジカテゴリー日本代表の紅白戦に出場した。若い選手たちにとって貴重な経験の場となった試合後のコメントとインタビューを2回に分けて紹介する
短期間の合宿と試合を通じた手応え
U16、U19、U21の合同合宿は今年2月にも実施され、今回の合宿でも特に下のカテゴリーの選手たちは先輩の経験をリアルに感じながら、自らの課題を克服する機会を得た。昨年度U17やU18を率いた三枝大地監督は「練習の質が下がる可能性もあるが、合同合宿のメリットは大きい」と話し、年齢の垣根を超えた取り組みに期待をかける。U21などを指導する山口祐之監督は「国際大会に近い環境で試合を経験できる機会はこれまで少なかった。短期間で仕上げるべき課題が多く、連係や組織づくりを重点的に取り組んできた」と振り返るように、試合の結果よりも、合宿で取り組んだことがどれだけ発揮できるかが重要だと考えられている。
カテゴリーにはこだわらず、メンバーは各年代が交じり合っての構成だった【写真/中川和泉】
選手育成と環境づくり
2024年の女子U20アジア選手権では熊谷仁依奈(筑波大3年/所属・学年は新年度、以下同)がキャプテンを務めた。今後の成長が期待される選手の一人だ。チームはまだ選考段階であり、選手たちは互いに切磋琢磨しながらレベルアップを図っている。特にアンダーエイジカテゴリーでは、15歳の選手がU21に入ることも可能であり、年齢を超えたプレー環境を当たり前にすることが目標となっている。監督陣は選手に主体性を求め、キャプテンも自らの意思で選出する方式を採用。「自分たちでチームをつくる」という意識を持たせることで、リーダーシップや責任感を養っている。
個々の成長とチームの連携
選手の成長にはフィジカル・メンタルの両面が重要だ。例えばU19の若松真央(鹿屋体大1年)は本来アタッカーだが、この合宿ではリベロとして起用され、新たなスキルを習得する機会を得た。成長のためにポジションを変えて挑戦することも、アンダーエイジカテゴリーならではの取り組みだ。
選手たちはシニアの代表を目指しながら、それぞれの課題と向き合っている。熊谷は「日本代表の監督が代わり、高さや攻撃力のあるセッターが求められる可能性がある。その中で自分だけの武器を持ちたい」と語る。リベロの井上凜香(筑波大2年)はレシーブの違いや世界基準の守備技術を身につけることの重要性を実感しており、チームの目標達成と同時に、個人でのさらなる成長も誓っていた。
合宿の成果を発揮した熱戦の様子【写真/中川和泉】
今後の展望と国内への影響
今回のエキシビションマッチのような環境での試合は、日本国内ではほぼ初めての試みだった。これを機に、アンダーエイジカテゴリーの選手たちの活躍をより多くの人に知ってもらい、将来的に日本代表を支える選手たちの成長を促す環境も整っていくはずだ。両監督は「この環境をつくってくれたことに感謝している。選手たちの選択肢が広がる貴重な機会となった」と話す。紅白戦を終えた選手たちは自身の成長を実感しながら、今後の課題に向き合っている。「世界一」を目指すチームづくりの中で、一人一人が自らの役割を果たし、さらなる高みを目指す姿が印象的だった。
3月15日、スタート時のメンバー【写真/中川和泉】
[トーク]選手育成と環境づくり
山口祐之監督×三枝大地監督
山口 エキシビションマッチの話は以前からいただいていました。国際大会に近い環境で試合を経験する場はこれまであまりなかったため、非常に貴重な機会となりました。短期間で仕上げるべきことが多く、気持ちの面、連係、組織づくりに重点を置いて取り組んできました。まだ準備段階であり、合宿で取り組んできたことがどれだけ発揮できるかが大切です。見てくださる方々に、バレーボールを通じて何を届けられるかを常に考えています。ただ勝つ、世界一を目指すだけでなく、“なぜバレーボールをするのか”という意味を考えながら、あらゆる面で世界一を目指すチームをつくりたいです。
三枝 2月にもU16、U19、U21の合同合宿を行いました。練習の質が下がることもあるかもしれませんが、先輩の経験を後輩がリアルに感じたり、直接対決を通じて課題を克服したりできる点にメリットを感じています。アンダーエイジの選手たちも国際大会で結果を残しています。15歳でもU21に入ることが可能であり、早い時期に年齢の垣根を取り払うことが重要です。日本代表に入れば、10歳以上年齢の離れた選手とプレーすることもあります。年齢に関係なくプレーできる環境を当たり前にしたいですね。
フィジカル面やメンタル面を含め、将来シニアで活躍するためにどのようなマインドが必要かを考えています。アンダーエイジでは勝ち負け以上に、長期的な成長を見据えた取り組みを重視しています。試合ではチーム全体で戦うと同時に、個々が“一日一つでも成長する”ことを意識するよう促しており、お互いのプレーを観察し、相手チームの選手にも積極的に声をかけることで、全体のレベルアップを図っています。
山口 アンダーエイジカテゴリーの選手たちも頑張っているということを、多くの人に知ってもらいたいです。今回のエキシビションマッチのような環境で試合ができたのは、国内では初めての試みでした。この貴重な経験を生かし、今後の日々の練習に取り組んでほしいです。
三枝 このような環境をつくっていただいたことに感謝しています。選手たちの選択肢が広がる貴重な機会となりました。この年代の代表の練習や試合を見に来てもらい、そのプレーを通じて「将来、この選手たちが日本代表を引っ張っていくのだ」と感じてもらいたいです。
文/泊 亜希子
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